【体育祭2nd】アニマル☆スター、熱く翔る！｜リアクション

【体育祭2nd】アニマル☆スター、熱く翔る！

　椎井莉鳥は陸上の競技会に臨むような姿でグラウンドに現れた。自分の出番まで時間があることを知ると隅の方に移動した。
　単独で柔軟体操を行なう。身体が程々に温まったところで本番を想定した走り込みを開始した。百メートルという短い距離もあってスタートに力を入れる。
　――走高跳とは、また違った身体の軽さを感じるわ。陸上を始めた当初は短距離走だったから、昔の感覚を思い出しているのかもね。
　体育祭に備えて朝晩の走り込みの効果もあるのかも。一週間、長いようで短かったわ。
「出番のようね」
　短い髪を両手で掻き上げて軽く頭を振った。さっぱりとした表情で所定の位置に向かう。
　誰も欠けることなく、全員がスタートラインに立った。
　放送部のテントにいた鴻上彰尋はマイクに向かって声を強める。
「熱い組み合わせとなりました！　陸上部やバスケットボール部の選手が含まれているので混戦は必至！　瞬き厳禁でお願いします！」
　観客は惜しみない拍手と声援を送る。
「白猫組、ゴー、ゴー、ファイッ！」
　同じ組の雨崎楓香は左右の脚を高々と上げた。両手に持ったポンポンをリズミカルに振って応援に励んだ。
　スターターが構える。個々が発砲音に備えた。
　莉鳥は脳裏に焼き付けるかのようにゴールを見詰めた。間もなく利き足を軽く後ろに下げる。上体を斜めにして目を伏せた。スタンディングスタートの姿勢で一瞬の時を待つ。
　用意を促す声に続き、発砲音が鳴った。
　利き足が地面を蹴った。身体を一気に前へと押し出す。莉鳥は低い姿勢を維持して飛び出した。
　脇目を振らず、一心に走る。徐々に上体を起こして半ばに到達。腕の振りが大きくなり、更に加速を始めた。
　暴風に晒されたかのように髪が激しく煽られる。全力の走りを見せた。
　ゴールが急速に迫ってくる。再び、上体を倒して頭から突っ込んでいった。
　勢いに押される形で数歩を経て立ち止まる。顔を上げて周囲を見ると歓声が上がった。
　楓香は笑顔で飛び跳ねる。ポンポンをグルグルと回して両腕を斜めに上げる。
「白猫組、ビクトリーじゃん！」
「ショートのお姉ちゃん、速かったよ！」
「よく頑張った！」
「頭の差で勝利だよ！」
　方々から飛び交う観客の声に莉鳥は、ああ、と声を漏らした。
「……一位なのね」
　だらりと両腕を下げた。青い空に微かな笑みを向けた。