【体育祭2nd】学科対抗リレー～あなたはどうしてロミオなの～｜リアクション

【体育祭2nd】学科対抗リレー～あなたはどうしてロミオなの～

　　体育祭当日　　

　走者は、走る前に衣装へ着替えなければならない。
　もちろん、リレーのタイトルどおり『ロミオとジュリエット』のような衣装であることが前提だ。
「……おかしいよな？　いや、おかしいよな!?」
　彼女がいるというのに、どうして全校生徒の前で兄とロミジュリをしなければならないのか。
　衣装が入った沢山の麻袋を前に、体育科の志波拓郎は未だ現状を受け入れられないのか同じ言葉を繰り返す。
　拓郎は、このなんとも変哲なリレーで、兄の志波武道とペアを組むことになってしまったのだ。
　勝負事は勝ちを狙いたいし、そういう意味では不服のあるペアではない。なぜ普通にリレーや障害物競走ではなく、ロミジュリなのか。武道に勝手にエントリーされたのか。色々とツッコミどころが多すぎて、拓郎のツッコミは追いつかない。
「……やるからには、負けたく……ない、けど……おかしいよな？」
「言葉もゴザイマセン」
　武道のスライディング土下座を冷ややかな目で見やり、そろそろツッコむことにも飽きてきたのか、拓郎は麻袋をいくつか持ち上げ、これという袋を選んだ。
「サイズがどうしても合わない以外の交換は受け付けられません。走りきるまで着用をお願いします」
　体育祭実行委員が、念をおした確認をする。
　嫌だと言った所で、そうそうこの二人が着られるペアの衣装があるわけもない。何が来ても広い心で対応しなければ……そう思って、拓郎が袋から取り出したのは白衣だった。
「眼鏡まで……誰だ、いれたの」
　この衣装と対になるなんてまさか。ギギギッと音が鳴りそうな速度で首を捻れば、やはりというか、武道が手にしていたのは――。
「見てみてたーぁ坊☆俺の衣装さぁ……」
「……おかしいよな？」
「いや、さすがの俺も困惑してるって」
　武道が手にしているのは、ナース服だった。それも、メンズでも着られそうな肩幅の、膝上丈の淡いピンク色のワンピース。最近では看護師の制服はセパレートになっていて、パンツスタイルも定着してきたかに思えていたが、そんな優しさは用意されていなかった。
　しかし、この衣装の山――医者とナースのシンプルコンビが、１番マシなのかもしれない。
「……着ろよ。肩が、パッツパツになっても……絶対、着ろよ」
　他にどんな衣装が潜んでいるかと思うと、自分が着る衣装だけで見れば、確実にマシだ。
　拓郎はナース服の兄を担ぎ上げる恥よりも、己が恥ずかしい衣装に身を包むことを避けるべく、武道を睨んだ。
「ハイ……ああもう、たー坊のくじ運、ある意味美味しいな！？」
　そもそも、ロミジュリとは何だったか。
　どうやら、実行委員長の手配ミスでロミジュリっぽくない衣装も混ざってしまっているようだが、最早男女ペアであれば何でもござれ、といった具合なのだろう。
　拓郎は他にどんなアクセサリーが潜んでいるのかと思いながら、更衣室で袋をひっくり返し――その芸の細かさにまた「おかしいだろ!?」と叫んだ。