【体育祭2nd】学科対抗リレー～あなたはどうしてロミオなの～｜リアクション

【体育祭2nd】学科対抗リレー～あなたはどうしてロミオなの～

　　体育祭準備中　　

　寝子島高等学校に、体育祭の季節がやってきた。
　ようやっと残暑が身を潜め、空が鮮やかな青から柔らかな青に変わる時、その心地よさとは裏腹に校舎には阿鼻叫喚が響き渡る。
「リレーって聞いたからエントリーしたのに！」
「おい！　こっちはエントリーすらしてないぞ!?」
　……少し、ちょっとした、まあ何らかの手違いで学科対抗リレーに参加することになった人たちの声が大きいようだが、深く気にしてはいけない。
　体育祭とは、そういうお祭りなのだ――――きっと。

「この間少し話したが――今年は普通科、芸術科、体育科と学科別に２チームずつ。合計６チームで行う競技がある」
　ある日のＨＲ。１年６組では担任、泉竜次からの改まった連絡事項に、教室はざわりと沸き立った。
「芸術科を代表して、うちのクラスからは愛猫が学科対抗リレーに出場することになった」
　紹介を受けた愛猫萌々子は、クラス中の拍手を受けて慌てて立ち上がり、一礼する。
「ペンを握り続けるにも、歌うにも舞台に立つにも体力がいる。インドアな学科だと甘く見られないためにも、応援はしっかりするように」
　念を押すような竜次の声に、「はい！」と返事をする生徒たちは、もう体育祭が目前なのだと、お祭り気分で盛り上がってきていた。

　学科対抗リレーと聞いて油断できないのは、一度でも寝子高の体育祭を経験したことのある生徒だ。
　体育科の代表として出場する卵城秘月と吉住志桜里は、競技の詳細プリントを確認して顔を見合わせている。
「対抗リレーというかこれ障害物競走……まぁとにかく、やるからには全力だね」
　秘月はおかしいと思っていたのだ。
　志桜里がエントリーをしてきたものの、リレーの出場希望者はペアで募集しているというのだから。
　そして、ただの障害物競走で終わってくれるような寝子高ではない。プリントの表題には、こう記されている。

　――学科対抗リレー　～おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの～――

　リレーと書かれていなければ、文化祭の出し物かと見紛うことだろう。
「ロミオ役は目隠しをして、ジュリエット役を抱っこ……または、おんぶや肩車でトラックを１周、か。大きな障害物は３つのようだけど、二人とも運動神経は悪くないし……ロミオは私がいこうか？」
　ロミオ役に名乗りを上げたのは、秘月だ。
　瞬発力が必要であれば、格闘技で磨かれた志桜里の脚にかけるところだが、今回は持久戦。普段からバスケ部で鍛えられた脚は、その自信があるのかもしれない。
「抱えられたジュリエットは、バトンを持ってロミオに指示ね。なら私は、学校にいる時には出さないハスキーな声で指示を出せば、他との混乱を避けられるかしら」
　抱えて走るだけならきっと秘月に任せて問題ないが、目隠しともなれば指示者の手腕も問われるところ。歓声にも、他のジュリエットの声にも混ざらず彼女に指示を届けるには、きっとその声が一番だ。
「カッコ良すぎて、腰砕けにならないでよ？」
「毎日聞いてる声を、そう自慢気に言われてもね……」
　呆れたように言ってみせるが、その表情はどこか楽しそうだ。
　互いを信頼し合った軽口に笑いあい、二人は作戦を練り始めた。

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