秋の涼やかな風に包まれる頃。
寝子島高等学校では、体育祭が目前に迫って――いたのだが。
「学科対抗リレーは、やっぱ注目度ナンバーワンな競技にしたいじゃん?」
例年、白猫組と黒猫組に分かれて競い合う、体育祭。
学科対抗リレーには、手始めの余興的な導入を期待していた体育祭実行委員たちの前で、
野菜原 ユウは突然渋い顔で発言する。
「な~んか、今のままだと物足りなくね? どう?」
「初めから、飛ばしすぎの競技もどうかと思うけど、確かに掴みは必要かもな……例えば、仮装とか」
ぽそり、と実行委員の誰かが呟き、ユウは嬉々として指をパチンッ☆とならした。
「よぉっし、それだ! スーパーミラクルなリレーのために、この委員長が一肌脱いでやろーじゃん!」
まだタイムテーブルの会議中だと言うのに、教室を飛び出したユウの顔は生き生きとしているが、彼の異名を聞いたことのある者は、青い顔で頭を抱える。
そう、「移動するトラブル」の異名は、今まさに本領発揮しようとしていた。
手始めにユウが訪れたのは、二年八組の教室だ。
「フジコちゃーん、いるー?」
「あら、こんな忙しい時期にどうしたの? 体育祭実行委員長さん」
出迎えた
富士山 権蔵の声に合わせ、パタリと手早くノートを閉じたのは
響 タルト。
放課後も授業の質問にくるだなんて熱心だなぁとユウは感心しているが、熱心にノートにしたためていたのは、とあるご婦人方に向けての華やかな一筆であることなど、知る由もない。
「学科対抗リレーを盛り上げるために、ちょ~っと相談があって!」
「迷える子うさぎちゃんの相談は、順番に聞いてあげるわよ」
「いやいやフジコちゃん! 体育祭の相談なんだもん、僕は待ってるよ」
ニコニコとノートを抱えて数歩下がるタルトは、黙って念を飛ばしていた。
(さっき話してたことが現実になれ~! みんなでコスプレ~!)
「じゃあお先に! 学科対抗リレーを盛り上げるのに、フジコちゃんの演出的なの使えたらなーって」
(うんうん……!)
「せっかくのロミジュリだし、もっとこー、派手に、バーンって感じで」
(うんうんうん……!)
「演劇部とか、街のレンタル衣装とかで、走者の衣装って用意できたり――」
「凄くいい案だと思うっ!!」
我慢できずに、目を輝かせて会話に割り込んだタルトは、パラパラとノートを捲りながら熱弁を始める。
獣耳の素晴らしさ、星のようにきらめくドレスの憧れの高さ、そんな意外な姿を見て熱に浮かさ……ではなく、熱く湧く会場。仮装がどれほどまでに体育祭に、この学科対抗リレーにふさわしいかを語った。
「野菜原ちゃん……教師はね、生徒のやる気の手伝いをするのが仕事なの。できるかどうかは、不安がらなくていいわ」
「おおー! んじゃっ、衣装の件はフジコちゃんの保証が出たって、浅井センセに連絡してくる! みんなで盛り上げよーじゃん☆」
「次の企画があるから!」と急いで教室から飛び出すユウを、何食わぬ顔で見送っていたタルトと権蔵だが――足音が遠くなる頃に、二人はは固く握手を交わしていた。
こうして、学科対抗リレーが障害物競走から仮装&障害物競走に変わってしまった。
……これだけで済んでいたなら、まだ心穏やかでいられたかもしれない。
最早、この仮装を皮切りに、実行委員も現実的ではないかもしれないと我慢していた案を出しあった。目につく物、面白いと閃いた物はあれやこれやと提案し、その度に担当の
浅井 幸太も「青春に相応しいぞ!」と二つ返事でOKを出す。
実行委員は障害物の手配に追われ、コースの見直しが行われ――それは、当日の朝まで目まぐるしく続いたが、どんな学校でもやったことのないような、寝子高らしい競技に仕上がり充足感をえられた。
体育祭当日。グラウンドに設置された数々の障害物に参加者は絶句する。
更衣室のテント、立ち並ぶドラム缶、ぶら下がったパン、田んぼのような泥プール……
このトラックを誰が走るのだと、半ば他人事のように見つめるのは、
志波 武道にエントリーされていた
志波 拓郎だ。
「たー坊、ごっめーん☆ まさか、ここまでとは思わなくってさぁ」
「………………」
「いや、あの、本当にスミマセン」
ズサァっと土煙が舞う勢いで、平に平にと謝る武道は言うに言い出せなかったのだ。
これが、普通の障害物競走でないと、エントリーの時には気づいていたのだから。
「勝手じゃなければ、まだ……体育科のためだし、別に……」
「そうだよなっ! たー坊なら、そう言ってくれると思ってたぜ☆」
「ロミジュリ、か……兄弟で……」
はあ、と呆れたようにコースを見つめる拓郎は、すでにどう攻略すべきかを思案し始めている。
頼まれたら断れない、けれどもやると決めたら全力で。そんな姿を武道が想定してなのか、はたまた兄弟で参加する最後になるだろう運動会を楽しむためだったのかは、わからない。
「変わり種の種目だけど、体育科の意地を見せてやろーぜっ!」
「うん……どんな勝負であれ……負けない」
意欲を見せる体育科と打って変わって、動揺の色が隠せないのは普通科の
椎井 莉鳥と
北里 雅樹だ。
両者共にエントリーした覚えもなく、待機場所へ集合をかけられ、ルール説明に頭を抱えている。
所々から、「相手から勝手にエントリーを受けてた」と小さなバトルが始まっているのが聞こえ、真っ先に疑われてしまったのは、雅樹のほうだ。
「本当に、雅樹じゃないのね?」
「莉鳥に怒られるのがわかってて、エントリーする意味なんてないじゃないか……」
よく知る仲だからこそ、嘘をついても仕方がない。
空気がピリピリしはじめるかどうか、というタイミングで、チームごとに整列させていた実行委員が、何やら不穏なことを口にした。
「仲良しに見える人とか仮装を見たい人とか、他の人からの推薦リストは混ざってないよな?」
「野菜原がトラブルの原因になりそうだから、責任もって捨てとくって言ってたけど」
「あいつか……まざってそうだなぁ」
原因はコレか。
わかった二人は溜息を吐くが、雅樹はどことなく嬉しそうだ。
「高校最後の体育祭だし、目くじら立てるより思い出にしたいかな」
「そうか、雅樹は最後なのね。……まあいいわ、今回くらい目をつぶってあげる」
芸術科の一部が目を輝かせていたり、初々しい恋人たちがいたり、この競技を機にもっと仲良くなろうと意気込んでいたり――レース以外のところで熱くなっている人もいるようだ。
でも、それがこの『学科対抗リレー』の醍醐味。
野生動物の如くしなやかな身のこなしでひたすら障害物競走に専念するもよし、ルールですからと普段は素っ気ないあの人と接触するもよし。
白猫組も黒猫組も関係ない、余興的な競技だからこそ、楽しみ方は人それぞれ!
さあ、学科対抗リレー、まもなくスタートです!
『学科対抗リレー ~おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの~』です。
まさかリレーの名前がシナリオの名前の文字数制限を超えてしまうとは……!
というわけで、今までありそうでなかった学科対抗イベント、楽しみましょう!
出場枠が埋まるまで、飛び入り参加も歓迎です。お待ちしております☆
レースについて
普通科、芸術科、体育科という3つの学科で2チームずつ、合計6チームです。
※黒猫組と白猫組にわかれて競い合う体育祭ですが、この競技は白と黒は関係ありません。
出場者は、ペアを組みます。男女ペアが一般的ですが、男男でも女女でもOK!
ロミオ役は目隠しをして、ジュリエット役を抱っこします。(おんぶでも肩車でも何でもOK)
ジュリエットはバトンを手に、走る方向をロミオに指示します。
それぞれ、ロミオっぽい衣装、ジュリエットっぽい衣装を着用します。
事前に自分たちで用意したり、実行委員が用意したものをムリヤリ着させられたりします。
委員長のミスなどでロミジュリっぽくない衣装になってしまうペアもいるようです。(ご自由にどうぞ!)
トラックを1ペアにつき1周します。
コースの途中、イベントが3つあります。
【1.ジュリエットを救え!】
各走者は、まず目隠ししたロミオが1人でスタート。
ジュリエットは20メートル先の檻の中に囚われています。
コースには、ドラム缶が乱立しています。
ジュリエットの声を頼りに、ドラム缶を避けて、自分のジュリエットを見つけるべし!
たくさんのジュリエットが喋って、手を伸ばしてるから、間違えないように♪
【2.ジュリエットにお食事を!】
たくさんパンがぶら下がっています。
ジュリエットが手を使わずに口でとって、そのまま食べます。
アタリだと、クリームやあんが入ってますが、
ハズレだと、わさびが多めに入ってます。
なお、ハズレを引いたことが審査員にバレるとスタート地点からやり直し!
ハズレを引いても我慢我慢ですよ~。
【3.ジュリエットの美を守れ!】
すっかり疲れ果てた頃に現れるのは、足場の悪い泥んこ沼です。
膝の高さくらいまで泥んこに埋もれて、歩くのもやっと。
何故か妙にぬるぬるしてるので、まあまず転ぶことでしょう。
泥んこ沼をやっと出ると、そこには審査員が立っています。
ジュリエットにかかった泥んこの分量に応じて、重りのプレゼント!
なんとしてもジュリエットだけは汚れないようにがんばろう~!
といった障害を途中に乗りこえつつ、
なんとか1周したら、次のペアにバトンタッチ!
以上を繰り返して、最終走者(第5走者)が1番速くゴールに着いたチーム(学科)の勝利です!
◇
各チームのペアと走順は以下の通り。(芸術科と体育科のアニマルチームはNPCのみのため省略)
「募集中」の出場枠は、参加者がいなければNPCが入ります。
▼普通科 星チーム
1.ロミオ:桐島 義弘 /ジュリエット:宮祀 智瑜
2.ロミオ:八神 修 /ジュリエット:七夜 あおい
3.募集中!
「普通科の生徒2人」または「普通科の生徒と寝子高生以外」または「寝子高生以外2人」
4.ロミオ:恵御納 夏朝/ジュリエット:犬杜 初
5.ロミオ:七夜 あおい/ジュリエット:鴻上 彰尋
▼普通科 アニマルチーム
1.ロミオ:佐藤 英二 /ジュリエット:野々 ののこ
2.募集中!
「普通科の生徒2人」または「普通科の生徒と寝子高生以外」または「寝子高生以外2人」
3.ロミオ:五十嵐 尚輝/ジュリエット:御巫 時子
4.ロミオ:神野 美野梨/ジュリエット:ブリジット・アーチャー
5.ロミオ:北里 雅樹 /ジュリエット:椎井 莉鳥
▼芸術科 星チーム
1.ロミオ:泉 竜次 /ジュリエット:愛猫 萌々子
2.募集中!
「芸術科の生徒2人」または「芸術科の生徒と寝子高生以外」または「寝子高生以外2人」
3.ロミオ:富士山 権蔵/ジュリエット:響 タルト
4.ロミオ:鷹取 洋二 /ジュリエット:滝原 レオン
5.ロミオ:初瀬川 理緒/ジュリエット:佐和崎 紗月
▼体育科 星チーム
1.ロミオ:穂村 敦 /ジュリエット:相原 まゆ
2.ロミオ:羽生 碧南 /ジュリエット:浅井 幸太
3.募集中!
「体育科の生徒2人」または「体育科の生徒と寝子高生以外」または「寝子高生以外2人」
4.ロミオ:志波 拓郎 /ジュリエット:志波 武道
5.ロミオ:卵城 秘月 /ジュリエット:吉住 志桜里
アクションについて
基本的にはレースの場面が描かれますが、次のアクションを1つ(または2つ)書くこともできます。
・体育祭前日までの様子。ペアが決まった瞬間や練習風景など
・学科対抗リレー直前の様子。衣装を着たり、緊張したり。
・学科対抗リレー後の様子。勝ったらどう反応するか、負けてたらどうか、などなど
レース中の場面は、次のようなことを意識して書いてみてください。
もちろん他にも自由に思いつくことを書いて楽しんでもらえればと思います。
・抱っこの仕方。お姫様抱っこ? おんぶ? 肩車? 途中で変える?
・ジュリエットは、指示の出し方。どんな言葉で、どんな口調で?
・パン食いや泥んこを乗りこえるための工夫。
・ペアでの会話などなど
他の出場者への妨害は失格となりますが、笑って許せる範囲であればアクションとしては可能です。
敵チームがくわえる寸前にパンをツンツンしたり、泥をジュリエットにかけたり。
ろっこんはそれなりに発動します。コメディエアーが吹いてるようなので、大丈夫。
では、ご参加お待ちしてまーす!