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寝子島高校
今宵の月も
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高校から桜花寮へ帰ったあとは、風呂に入ってさっぱりしてから夕食をとる。高校に入って半年近く、
水上 桜
の放課後は多少の振れ幅はあってもそんなに変わらない。
(お月見団子……)
食堂の夕食メニューにお月見団子が混ざっていたのも、その振れ幅のうちには違いない。折角だからと自室に持ち帰り、窓からまん丸なお月さまを眺めながら食べるあたりまでは。
涼しい風を頬に受けながら、どこからか聞こえる虫の声を聞きながら、ぼんやり思い出すのは去年の中秋の名月。
(家族そろって寝子ヶ浜海岸のお月見宴会にいったっけ)
両親と四歳年下の弟は、大手都銀に勤める父のニューヨーク支店への栄転により今年の春から渡米している。
寝子島高校への入学が決まっていた自分だけが、この島に残った。高校入学と共に桜花寮へ入寮した。
ひとりきりでもそもそとお団子を食べているうちに何となく外へ出てみたくなったのは、もしかしたら少しだけ寂しくなってしまったからなのかもしれない。
(……毎日同じだと詰まらないし)
言い訳のように呟きつつTシャツの上にパーカーを着る。ジーンズに履き替えてから、ちらりと唇を尖らせる。
(って言っても、『フツウ』はほんと勘弁して欲しいんだけど)
代わり映えのしない日常から一歩踏み出すくらいが楽しいのだ。摩訶不思議満載な『フツウ』は普通の女の子な自分の手に余る。
寮の外に出る。満月のお陰でいつもより明るい地面に伸びる自分の影を踏んで、門の外に出る。さあどこへ行こうかと思えば、ほんの少し胸が弾んだ。
空を仰げば、まあるいお月さまが見守ってくれている。
どこに行くかも決めず、何となくお月さまの浮かぶ方向に足を向ける。
夏の間はともすれば暗くなってもどこかの樹から聞こえていた蝉の声も、気づけば途絶えている。その代わりに聞こえるのは、涼し気な虫の声。
賑やかにも寂しげにも聞こえる虫の音と月の光をお供に秋の道を辿る。どこかの家の塀の上から顔を覗かせる桔梗や終わりがけの向日葵、空き地に青く茂るススキとその間に紅く咲く彼岸花。
趣味にしているアクセサリー作りのアイデアになるものはないかとのんびり秋の草を眺めて歩いていて、だから少し先の道の角から誰かが俯きがちに出てきたときにぶつかりそうになってしまった。
「わ、ごめんなさいっ」
「あ、……ううん、私こそごめんなさい」
咄嗟にふたりで謝り合って、桜と
森篠 琳子
は顔を見合わせる。今晩は、と何気なく挨拶して別れようとして、踏み出した方向は一緒だった。
気まずいようなぎこちない笑みを交わし、ふたりは同じ道を辿る。
(中秋の名月、だっけ)
清かな光を振りまく月を見上げ、琳子は黒い瞳を眩しさに細めた。
ファミレスでのバイトを終えての帰り道、身体は相応に疲れている。家に帰って風呂に入って、数日後に迫った就職試験の勉強をしなければならないのに、
(……そんな気になれない)
進学の道は自分で断った。
二年前に父が急死して以来、母とまだ幼い妹と三人で今まで何とか暮らしては来たが、保険外交員の母の収入では家計は苦しい。奨学金を受けての進学を勧められもしたけれど、これ以上母の脛を齧る訳にはいかないのだ。
月に照らされた道は明るいのに、先には暗闇が待ち受けている気がした。闇から逃れるように歩いて歩いて、その先、
(何か、騒がしい……?)
ふつりと道が絶たれたように見えてその実遠くまで広がる海岸が見えた。海岸の先には、月の光を湛えた海が見えた。
「あ……」
海岸の一角、赤い提灯でぐるりと囲まれたブルーシートの上で賑やかに繰り広げられる酒宴を目にして、琳子はぱちぱちと瞬く。
「宴会やってるんだ……」
「そうそう、寝子ヶ浜のお月見大宴会。最近は恒例のようにやってるの」
狐につままれたような顔で呟く琳子を覗き込み、桜が笑った。ほら、と指し示す桜の指の先には、堤防の間から海岸へ降りる階段と、その階段の前に置かれた『寝子ヶ浜海岸大宴会場 →』の案内板。段ボールに紙を貼り、マジックで書いただけの手作り感溢れる案内板を前に、琳子は瞳を伏せる。
階段の下からは大勢の人達の楽しそうな笑い声が聞こえている。
何となく迷い込んだだけの自分は場から浮いてしまいそうな気がした。
「それじゃあ、私は、……」
宴真っ最中な海岸とは別の方向へ歩き出そうとして、
「えっ?」
隣に立っていた桜のきょとんと見開いた目と目が合った。
「えっ、て……え?」
「行かないの?」
きょとんと見つめ合うふたりの間を、ビールケースを担いだ熊じみた大男が通り過ぎて行く。
「あら、あらあら、いらっしゃい」
大男の影から顔を覗かせた割烹着姿の婦人に人懐っこい声を掛けられ、少女ふたりはまた顔を見合わせる。
「いいお月さまよね、こんな日は宴会に限るわよね。さあさあ、遠慮せずにどうぞどうぞ」
華やいだ声で婦人は笑い、割烹着のポケットから魔法のようにお菓子や飴玉を取り出した。
「あの、でも、私っ……」
断ろうとする琳子の両手にも、誘われるまま海岸へ踏み出す桜の両手にも、婦人は山盛りのお菓子を持たせる。途方に暮れる凛子に、ビールケースを担いでいた大男が控えめに笑いかけた。
「良かったらどうぞ。端の方で静かにお月見されていても構いませんし」
ビールいりますか、と瓶ビールを差し出してくるのは丁重にお断りし、琳子は断る口実を失って皆の後に続いた。宴の輪に近づいた途端、獲物を見つけたかの如く、ほろ酔いでご機嫌な大人たちがこれをどうぞあれもどうぞとまたぞろふたりに食べるものを押し付けては去る。
巨大ブルーシートの端、持ちきれないほどの食べ物を両手に立ち尽くして戸惑うばかりの琳子の耳に届いたのは、
「琳子?」
自分の名を呼ぶ聞き慣れた声。月と提灯の灯りを頼りに視線を伸ばせば、そこには母と妹が、近所の人たちと一緒に座っていた。皆に誘ってもらったの、と妹の奏子はご機嫌にお菓子を食べている。かと思えば、唐突に始まったヴァイオリン演奏での『だるまさんがころんだ』へ参加するため元気いっぱい駆けて行く。
いつも通りな妹の屈託のなさにちょっと笑い、琳子は母の隣に腰を下ろした。言葉少なに月を眺め、貰い物のお菓子を口にする。
和やかな笑い声の中で見仰ぐ月は、周囲の闇を払いのけるくらいに明るく見えた。
(騒がしいのは苦手だけど、)
小さく小さく、琳子は微笑む。
(たまにはいいかもね)
人々の輪には加わらずとも、それでも十分に場の雰囲気を楽しむ琳子の鼻を焼き鳥のいい匂いがくすぐった。何気なく視線を向けてみると、ここまでの道を一緒に歩いて来た黒髪の女の子が興味津々に七輪を見つめている。
もくもくといい匂いの煙を上げる七輪の前には、先ほどの熊じみた大男と割烹着の婦人。
「ビール、は、……だめですね」
「うん、遠慮します」
七輪で焼き鳥を焙りながら、大男は桜にビールをうっかり勧め掛けて慌てて止める。
(そういえば去年も、ここで焼き鳥食べたけど)
とてもおいしかったな、と桜は網の下で真っ赤に焼ける炭を眺めてぼんやり思う。お父さんがいつも行く焼き鳥屋なのだと言って笑っていた。
(……なんて言ったっけ? 『ハナ』?)
記憶を掘り起こそうと捻る首の前、焼き上がったばかりの焼き鳥の串が差し出される。ありがとう、と受け取って熱々を口にした途端に気が付いた。
(あ、これってもしかして……)
口いっぱいに広がるタレの甘辛さも、焼き加減の絶妙なジューシーさも、去年口にしたものとそっくり同じ。
(そうそう、これこれ!)
去年家族と一緒に食べたものと同じおいしい焼き鳥を久しぶりに食べて、桜の胸に沈んでいた微かな寂しさは吹き飛んだ。
串の端っこに残ったカリカリに焦げた脂まできちんと味わってしまえば、もうこれで言うことなし。
「美味しかった!」
満面の笑みを浮かべる少女に、参道商店街に店を構える焼き鳥屋『ハナ』のふたりは嬉しそうに笑い返した。
(そうだ)
思いついてパーカーのポケットからスマートフォンを取り出す。傍の『ハナ』のふたりにも許可をもらい、インカメラ状態にしたカメラアプリを掲げる。
宴会で賑わう海岸にいる自分を自撮りして、メッセージアプリでニューヨークの家族に写真を送る。添えるメッセージはこんな感じにしよう。
『今年も寝子ヶ浜でお月見大宴会! 私は元気にやってるよ』
腰掛けた岩場の下、波が小さく打ち寄せる。
遠く近く、耳朶をくすぐる潮騒に微笑み、
夢宮 瑠奈
は手にしたタピオカミルクティーのストローに唇をつけた。
(あたしは)
本来、こんな風にのんびりした時間の中の住人だった気がする。
波の音と秋の風に混ざって、少し離れた海岸から人々の喧騒が聞こえて来る。清らかな月の光にあって、今はそれさえもどこか遠い世界のさざめきに感じた。
ミルクティーのプラカップを傍らの岩の上に置き、どこまでも深く蒼い空に真っ白く浮かぶ月を仰ぐ。欠けるところのないお月さまは、その光を浴びた人間の身に魔力を満たす──そんな気持ちにもさせてくれる。
「月の魔法は優しき愛、なんて」
月の光に導かれるまま心に浮かんだフレーズを呟いて、ひとり笑みを零してみる。気持ちの赴くまま、岩場に立ち膝した格好で鼻歌を歌ってみる。
「……歌はいいねぇ、」
映画かナニカに見た一場面の真似をしてみてから、瑠奈は月の光の琥珀を宿した瞳を斜め下の砂浜へと向ける。海風に鎖骨のあたりまで伸びた黒髪を揺らして歩いて来ていた
水上 桜
が、初めて気づいたような顔を上げた。
「なんて。……知ってる?」
月の光を浴び、自分とひとつふたつほど年下らしい少女に微笑みかける。ちょっと謎な話し掛け過ぎたかなと思いすれど反省はせず、瑠奈は桜に手を伸ばす。
「あ、大丈夫。あたしは謎の登場人物じゃないから」
明るい笑顔で自分自身にフォローを入れる瑠奈を、桜は僅かに警戒するまなざしで見上げる。まさかとは思うけれど、
(手を取ったらまたナニカのフツウに巻き込まれたりしない?)
寝子島の『フツウ』を不本意ながらよく知ってしまっている桜はそんな風に考えてしまう。岩場に立て膝で座るふんわりとした印象の女の子は、そう思わせるくらいにはひとを惹きつけるような不思議な雰囲気を持っていた。
「こっち、お月さまがよく見えるよ」
亜麻色の髪に月の光を跳ねさせて、女の子は屈託なく笑う。
(ええい!)
賑やかなお月見宴会から抜け出してひとり散歩していて出会ったのも何かの縁。迷っていては物語も進まない。桜は思い切って不思議な女の子の手を取る。
戸惑った顔をしながらも手を取って隣に座ってくれた桜に、瑠奈は顔中で笑った。並んで座って月を仰ぐ。隣で月を見上げる桜の横顔をちらりと見る。
(あなたは月に何を思うかな?)
そうして、
(あたしは月に何を望んでいるだろう?)
月を見つめていると、清浄な光に吸い込まれて空の果てまで飛んで行ってしまうそうな気がした。どこまでもひとりきりで空に舞ってしまう気がした。
(ただそばにいてくれるだけで、いいのかな?)
月の光を身体に満たしながら、つらつらと思う。ちょっぴりしんみりしてみたり、その美しさにただただ心を奪われたり。
月に照らされる波のように心のかたちをゆらゆらと変えてゆく。
凛と空に輝き、誰も彼もの傍らに寄り添えるお月さま。
(きっとあたしは、)
そんな存在を求めている。
そんな存在にあこがれている。
(だからあたしは、)
アイドルとしてデビューしたときに『未明せれね』を名乗った。
セレネはギリシア神話に謂う月の女神の名。
未明の空に浮かぶ、あたたかな月の女神の名を選んだ少女は、少しでもそんな存在に近づくべく、月夜の海岸に行き会った少女に柔らかく微笑みかける。
名も知らない『誰か』に、ずっと近づきたかった。ずっと見守りたかった。
「お月さま、綺麗ね」
だからこそ、いろいろ話しがしたかった。
もちろんそれは、相手が望めばの話。拒むのであれば無理はしない。距離も詰めず、ただ彼女がもういいよと言うまで傍にいるだけにしよう。
(あたしの立ち位置は、まだ不安定なんだろうな)
誰かの傍で変わらずずっと輝いていられるほどの魅力は未だ持たない。
お月さまのように安定して輝き続けることは出来ない。
(やっぱりお月様はすごいんだろうか)
問いかけても答えなど教えてくれないことを知っていて、空に問いを投げる。
(ねえ、お月様)
応じてくれたのは空の月ではなく、
「そうね、とても綺麗」
隣の女の子。
黒い瞳に月を映し、桜はパーカーのポケットからスマホを取り出した。カメラアプリを起ち上げまん丸お月様を一枚撮影し、
「これはスマホの壁紙に」
小さく笑って、インカメラに切り替える。月に並べるように白い手を高く掲げ、画面の中に自分と瑠奈とを入れてシャッターを切る。
ぱしゃりと瞬く月光より眩しいフラッシュのあと、桜は鮮やかに笑った。
「これは今日の記念に、……いい?」
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日常
SF・ファンタジー
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50人
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50人
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シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
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