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──月夜の大宴会
アスファルトの地面に延びる己の影さえ重たく感じて、
深林 真瞭
は黒い瞳に睫毛の陰を落とした。
寝子島滞在の拠点にしているマンションは星ヶ丘にあるのに、星ヶ丘駅ではなくシーサイドタウン駅で下車したのは、海が見たかったからだ。もっと言えば、今は普段から住まいにしている都内のイルミネーションなどではなく、寝子島に帰って来たい気分だった。
(疲れた)
胃の腑に重石が捻じ込まれているかのよう。身体が鉄で出来ているかのよう。意志の力で引き摺るにも重過ぎる身体を、それでもどうにか動かす。肩に提げた鞄よりも重く感じるヴァイオリンケースを胸に抱き、シーサイドタウン駅の賑わいから逃れ、海に足を向ける。
(……もう限界なのよ)
頭の中に居座っているのは、そのことばかり。
今日、所属楽団に退団届を提出してきた。
長年、世話になってきた。
第一ヴァイオリンとコンサートマスターの地位も得ていた。
(もう、限界なのよ)
楽団事務所のある東京から島に帰って来るまで幾度となく繰り返した言葉をまた繰り返す。退団届を提出してきたことを幾度心に言い聞かせても、心は未だ晴れて来なかった。
もうあの楽団内の諍いに煩わされることはない。いつまでも終わらぬ仲間同士の罵り合いに気を揉むことはない。
(もうこれ以上はどうにもならない)
己の先の展望は何も見えてはいないけれど、あの楽団の未来は知れている。彼らと一緒に沈んでやる気は微塵もない。だから、己の今日の決断はきっと正しい。
海への道をとぼとぼと辿りながら、何度も自分に言い聞かせる。
(先の、展望……)
国内外の複数の楽団からだけでなく、ウィーン留学時代の恩師が所属している楽団からもオファーがきている。所属楽団と決別した今、いずれ近いうちに返事をせねばならない。が、今はとてもそんな気にはなれなかった。
地面を見下ろす。地面に落ちる影の濃さに今更気づいた。街灯のものとは違う冴え冴えとした光源を探して空を仰ぐ。
(満月なのね)
人間の懊悩など素知らぬ顔で静かに浮かぶ月をしばらく眺めて、鞄からスマートフォンを取り出す。アドレスから呼び出す番号は、己の今の状況を知ってくれている学生時代からの親友のもの。
楽団を辞めた話をしようかと通話ボタンに指先を触れかけて、やめる。どうして話す気になれないのかも分からないままスマホを鞄に仕舞う。再度海へと向かいかけて、その足が止まった。
(……はて?)
夏であるのならともかく、九月ともなった今の時期は静けさを取り戻しているはずの寝子ヶ浜海岸が何故だか賑々しい雰囲気を湛えている。
砂に差して立てた支柱にズラリ掲げられるは赤い提灯、月夜の砂浜には庶民感溢れるブルーシート。その上に並ぶは大量の一升瓶にビールケースにクーラーボックス入りのペットボトル飲料、段ボール箱には大袋入りのお菓子に駄菓子、重箱やプラスチック容器入りの誰かのお手製お弁当。
シートの真ん中に申し訳程度に飾られたススキとお団子を囲んでの、お月見会とは名ばかりの大宴会。
月夜の下で和気藹々とお酒を酌み交わすご老人、お菓子片手にキャアキャアとはしゃぐ子供と、それを肴にする大人。素朴な賑やかさにつられて近づいてみれば、あれよあれよという間にコップ酒にスルメ、シートの端の七輪で焼いたばかりの焼き鳥まで押し付けられてしまった。
「え、あの、……」
いいのいいの、と割烹着姿の婦人が大らかに笑う。その上、これも食べなさいあれも食べなさいと和菓子やお煎餅まで手渡され、真瞭は目を白黒させながら宴会の隅にぺたりと座り込んだ。
(どうしよう)
とは思うも、もらったものは仕方がない。カップ酒の蓋を開け、焼き鳥やスルメをおつまみに宴会の雰囲気に浸ることにする。
(……今くらいは、いいよね)
いずれは現実と相対せねばならないのは理解している。けれど今は忘れていたかった。
月夜の下を歩くうちに乾いていた喉にカップ酒を流し込む。日本酒の甘さと辛さに思わず細める瞳に映るのは、浴衣に身を包んだ年若い姉妹。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!」
浅葱の地に泳ぐ金魚と朝顔を配した浴衣の袖をぱたぱた跳ねさせ、
仙藤 蒼
は隣を歩く姉の
仙藤 紫
の肘に抱きつく。姉の浴衣は白地に藤色の紫陽花柄。繊細で淑やかな浴衣に彩られた姉は、とっても大人っぽくて上品だ。
「浴衣似合ってるー!」
今日何度目かの妹からの賛辞に、紫は結い上げた黒髪のほつれ毛を直しながら淡く笑んだ。
「蒼もね」
「ほんと?」
「本当よ」
大好きな姉の笑みに、蒼はますます嬉しくなる。
去年、寝子ヶ浜海岸の毎年恒例なお月見大宴会に参加したときは普段着だったけれど、今年は姉妹揃っての浴衣。
蒼は堪えきれない笑みを零す。どこかの温泉へ行くことがなければきっと今年はこれが最後の浴衣になるからと、姉にわがままを言って着てもらったのは大正解だった。
だって、
「今年の夏も終わりね」
いつもよりは穏やかな浜風を白い頬に受けて、ちょっとだけ寂しそうに呟く浴衣姿の姉は最高に美人だ。綺麗だ。
(お姉ちゃんの艶姿を見られないのは残念だよね)
ふと思うのは、例年であれば一緒に来ているはずの両親のこと。父親は仕事で、母親は親類関係の用事で、今年のお月見会には参加出来ていない。
(ふたりの分まで私がお姉ちゃんと楽しんじゃう!)
海岸に来るのは夏の終わりの風物詩なビーチスターズコンテスト以来だけれど、中秋の名月の夜ともなれば、あの夏の日の暑さが嘘のよう。
浴衣の襟に寄せる夜気の涼しさが心地よかった。吹き付けてくる浜風も夏の熱気は帯びていない。
(でも、)
今のこのちょうどいい感じも、あと少しもすれば肌寒さを感じるようになる。身を切るような寒さとなる。
「お、仙藤さんちの。よく来たよく来た」
ブルーシートの一角に座していたご近所さんたちに手招きされて近づいた途端、中学生な蒼にはペットボトルのお茶とお月見団子、それから駄菓子にお弁当に唐揚げに、両手いっぱいの食べ物が手渡された。
「紫ちゃんはお酒もういける?」
「いえ、まだ未成年なので……」
首をそっと横に振る紫の手にも清涼飲料のペットボトルと和菓子が握らされる。あれも食えこれも食えと勧めて来るご近所さんに囲まれ、ふたりはブルーシートの一角に腰を下ろした。
「こんなに全部食べられない」
「手伝うわ」
ぺたりと座り込んだ膝から溢れる食べ物を前に困った顔をする蒼を宥め、紫は蒼が爪楊枝で差し出してきた月見団子を受け取ろうとする。
「ちがーう」
む、と唇を尖らせる蒼に微かに苦笑し、大人しく口を開く。姉にあーんが出来てとっても満足気な笑顔を見せながら、蒼は貰った食べ物を美味しそうに食べ始めた。
「太っちゃうよ」
なんて言いつつも、蒼の手は止まらない。ちゃっかりぺろりと平らげてしまう勢いの女子中学生の食欲に、紫は思わずまた苦笑した。
「紫ちゃん、大学生になってまた一段と大人っぽくなったよねえ」
「そうそう、年々綺麗になって」
ご近所さんたちから話しかけられ、紫は淑やかに微笑んだ。
「ありがとうございます」
「今日はふたり?」
「ええ、父と母は一緒に来られなくて」
姉とご近所さんの世間話に聞き耳を立てながら、大人たちから与えられたお菓子をもぐもぐと食べながら、蒼は内心鼻高々だ。
(でっしょー? お姉ちゃん美人でしょー?)
ニコニコご機嫌な蒼の前に、ご近所のおばあちゃんがまた新しいお菓子を置いてくれた。
「蒼ちゃんも可愛らしくなったねえ」
「可憐な浴衣姿だねえ」
方々からえらいえらいと頭を撫でられ、蒼は思わず満面の笑み。
「いやあ、もう照れるじゃない」
率直に褒められ真正面から恥ずかしがる。照れまくる蒼の耳に届いたのは、月の光に流れ始めるヴァイオリンの音色。
視線を向けると、長い黒髪の女性がほろ酔い顔でヴァイオリンを弾いている。時ならぬ奏者の乱入に、宴会場のあちこちからやんやの喝采が巻き起こった。
ふわりと赤い頬で笑い、真瞭はぺこりと一礼する。
「よろしければ、ご一緒に」
一言告げて奏でるは、蒼もよく知る月を謳った歌謡曲。
「あっ、はいはーいっ!」
浴衣の裾を元気いっぱい翻し、蒼は真瞭の隣に並び立つ。よろしくお願いします、と人懐っこい笑みを真瞭に向け、周囲の人々に向け、屈託ない歌声を月の海へ響かせる。
「ほらほら、うたおー!」
曲の合間には周りの小さな子供たちに声を掛け、一緒になって飛び跳ねる。子ども達の楽し気な雰囲気に合わせて真瞭が子供向けなアニメ曲を奏でれば、蒼はますます目を輝かせた。子どもたちと一緒になって、子ども達よりはしゃいだ声で歌う。ついでに踊る。
「はーい、それじゃー、だるまさんがころんだー! お姉さんがオニね!」
唐突に即興的なゲームまで始めてしまう、楚々とした浴衣姿の印象に反して元気いっぱいな女子中学生のペースに巻き込まれ、真瞭は酔いも手伝って声をあげて笑った。
「いいわよ」
ヴァイオリンを使って『だーるまさんがこーろんだ』と緩急つけて奏でてみせる。蒼も子ども達も目を丸くして力いっぱい拍手する。
「相変わらず元気いっぱいでいいねえ」
「ええ、羨ましいくらい」
どこにいても楽しむことを忘れない妹の自由闊達さに紫は微笑む。周りを巻き込んで賑やかに笑える妹が、姉としては誇らしくもあり、羨ましくもあった。あの屈託のなさと人懐っこい笑顔は、彼女がこの先生きて行く上できっといい助けになってくれる。
(ああ、でも、……)
遊びに夢中になるあまり、浴衣の裾が際どく翻る。白い脛が覗いても全く構わず子どもたちと一緒に転げ回ってしまうのはいかがなものか。
ついつい止めに向かいたくなる気持ちを何とか止め、お姉ちゃんはそっと溜息を吐く。せめてもうちょっと、もうちょっとだけ、
(蒼、浴衣を着ているときくらいはお淑やかに、……)
出来そうもないのは、姉の紫がきっといちばんに理解しているのだけれど。
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3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
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