真白に輝く月が妙に近い。
手の甲に垂れたアイスクリームをぺろりと舐めて、
高梨 彩葉は月を見遣る。
月だけに照らし出される自分の水着姿がなんだかくすぐったくてくすりと笑う。
夏が逝きつつある夜に、ひっそりと解放されたは桜台の外れにある小さな洋館の小さな屋上プール。
ランプに照らし出されたプールサイドには猫たちも遊んでいる。隠れ家的な温室ナイトプールに浮き輪でぷかりと浮かび、彩葉は漆黒の夜空を彩る満月を眺める。
(うん、たまにはこういうのもいいかも……?)
蔓薔薇に彩られた門扉が開く。
仰ぐ視界を埋めるは、白銀の満月に蒼く照らし出される白亜の城。
「よく来たわね」
自動人形の如きぎこちない動きで飛び回る蝙蝠たちをお供に、迷い込んだ人間を迎え入れるは漆黒のドレスを纏った銀髪の女。
「これを持って行くといいわ」
魔女のような悪魔のような女から
御巫 時子が手渡されたのは、星のかたちをしたランプ。
「此処は、……これは……?」
「此処は、――そうね、あなたの夢の中。渡したそれは夢の灯火。城の迷宮に囚われた愛しいひとを見つけ出して、その灯火で姿を照らし出しながら伝えたかった言葉を伝えるといいわ。現には、貴女の愛しいひとは夢の中の貴女を覚えていないかもしれないけれど」
出来るなら、と女悪魔は小さく笑う。
「私に貴女の愛を見せて頂戴」
月の白銀が刃に滑る。蒼く、青く碧く。
「……よう」
月の光宿した刃を下段に構え、
御剣 刀は小さく笑んだ。
「……おう」
短く応じ、
如月 庚は額の傷跡を指でなぞる。身に宿る神魂の力を右腕に宿らせれば、その拳は夜陰を満たす月光よりも青い光を炎に似て纏った。
瞬きひとつのうちに月影のもと対峙したときより気づいている。
闘わなければ、この月影の檻より出ることは叶わない。
「また神魂か」
「厄介なこった」
月の下、男ふたりはいっそ莞爾として笑う。
月の光の降る海に、そっと爪先を触れさせる。
秋を思わせるひんやりと冷たい波に、思わずくすくす、小さな笑みが零れて落ちた。
月の海の砂浜には、思い思いの場所に陣取りお月見と洒落込む人々の姿がある。
亜麻色の髪を涼しい潮風に躍らせ、
夢宮 瑠奈は小さくステップを踏む。月の光宿した波の滴とともに舞う。
(ね、こんな素敵な夜だもの)
煌々たる月の光を浴び、少女は歌を口ずさむ。
(あなたも一緒にたのしみましょう?)
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今回はお月見のお誘いに参りました。
らっかみ!タイムでは二度目となるお月見のお誘いです。お月見、大好きなのです。今回も張り切って参りますようー!
月には怖いものが封印されていたりもしますが、今回はそれの影響はほぼなさそうです。怖いことは起こりません。
どうぞみなさまお気軽にご参加頂きまして、平和なお月見を満喫していただけましたら幸いです。
今回のガイドには、高梨彩葉さん、御巫時子さん、御剣刀さん、如月庚さん、夢宮瑠奈さんにご登場いただきました。ありがとうございますー!
もしご参加いただけますときは、ガイドに関係なくどうぞご自由にアクションをお書きください。
中秋の名月、まん丸なお月さまが浮かぶ夜のみなさまのそれぞれのひとときを描かせてください。
いくつか舞台をご用意いたしましたが、別の場所で別のお月見の物語を紡いで頂きましても大丈夫です。
ご参加頂けます場合は、〈キャラクターの行動・手段〉の欄に【1】~【5】の番号をひとつかふたつ選択して書き込んでください。
【1】 桜台のナイトプール
桜台の一角にある小さな洋館風施設の屋上温室ナイトプールです。
角灯に照らし出され、観葉植物や鉢植えハーブに囲まれたプールでお月見を楽しむことができます。
プールサイドには人懐こい猫たちがにゃごにゃごと遊んでいます。
プールサイドの端に控えるウェイターやウェイトレスに頼めば、簡単な飲食も(もちろんアイスクリームも!)可能です。
【2】 月の夜の夢
自分のベッドで眠りについたはずが、気づけば見知らぬお城の前に立っています。黒ドレスの女から『夢の灯火』なる星型のランプを手渡されたあなたは、お城に踏み込み、幽霊さえ出そうな不気味なお城のどこかに幽閉された『あなたが大切に想うひと』に『あなたの想い』を伝えなくてはなりません。そうしなければ、夢からの脱出は叶わないようです。
夢の中なので、『あなたが大切に想うひと』は、もうこの世にいなかったり、遠く離れていて現実には会うことがなかなかかなわないひとであったりもするかもしれません。
こちらはGAを組み、『助ける側』と『助けられる側』に別れることも可能です。
NPCは『助けられる側』でのみの登場が可能です。
想いを伝えられたひとは、(概ねNPCは)夢の中での出来事を覚えていたりいなかったりするようです。
【追記】7月15日
こちらにXキャラクターを登場させることも可能です。
Xキャラクターをご指定の場合は、【Xキャラの名前】【一人称】【口調】【PCとの関係】などを記して頂けますと助かります。
【3】 月下の決闘
気が付けばあなたは誰かと対峙しています。
手には武器を持っていたりいなかったり。勝敗は関係なさそうではありますが、どうやら何かしらの方法で決闘する以外にその場から逃れることは出来ないようです。
決闘とはいえ、拳や刃を交わすことのみが決闘ではありません。
たとえば大食い。
たとえば歌合戦。
『決闘』の道具は神魂によりわりと何でも用意されます。食べものとか飲み物とか舞台とか観客とか。
GAを組んでお相手と闘うこと、NPCやXキャラクターと拳を交えることも可能です。
あとは自分と全く同じ姿をした『自分』とも。
Xキャラクターもしくは『自分』をご指定の場合は、【Xキャラの名前】【一人称】【口調】【PCとの関係性】【性格】などを記して頂けますと助かります。
【4】 寝子ヶ浜海岸大宴会場
寝子ヶ浜海岸のあちらこちらでのお月見です。
一角には町の有志連によってブルーシートが敷かれ、去年のようにお月見大宴会が開かれてもいます。ススキにお月見団子、誰かのお手製重箱弁当に七輪サンマ、色んな食べ物飲み物が雑多と置かれた来るもの拒まず去るもの追わずな自由な月の宴です。
もちろんそこには関わらず、喧噪を避けて波打ち際でひっそりお月見、というのも楽しそうです。
【5】 その他
ご自宅やどこかのお店、秘密の場所等でのお月見もできます。
お月見に関連することでしたらご自由にどうぞ!
※特定のマスターが担当しておらず、その場にいることが不自然ではない登録NPCであれば、登場させることは可能です。
それでは、みなさまのお月見をこっそり拝見するべく、夜陰に紛れてお待ちしておりますー!