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桜台にそれがあると知ったのは、寝子島駅構内に設置された地元観光案内広告の並ぶマガジンラックの一角だった。東京での雑誌モデル撮影仕事のために本土へ渡る電車を待っている途中、何気なく手に取った寝子島観光案内無料冊子をパラパラとめくっていて見つけた『隠れ家風ナイトプール』の文字。
(へえ)
城山 水樹
は黒い瞳を縁取る長い睫毛を瞬かせる。
(桜台にナイトプールがあったなんて)
寝子島の旧市街で育ち、寝子高に通っていた頃は桜台のあたりもうろうろしてよく知っているつもりだったけれど。
(そういえばこんな洋館もあったわね)
桜台の一角にひっそりと建つ煉瓦造りの洋館は、記憶を辿れば確かに存在していた気がする。でも、まさか屋上に温室やプールがあるとは思ってもみなかった。
紹介記事に大きく示された屋上温室の写真を眺める。温かなランプの光に照らし出されているのは、何十何百もの様々な観葉植物に囲まれた円型の白いプール。森の中の泉のようにも、夜に憩う満月のようにも見える温水プールに、水樹は瞳を細める。昼間であれば、温室を形作る硝子窓から流れ込む太陽の光に、緑の色が宝石のように映えるのだろう。
(あ、最近オープンしたのね)
冊子に記された開店日時を指でなぞりつつ、水樹はバッグからスマートフォンを取り出す。電話しようとして思いとどまる。朝早いこの時間、たぶん起きてはいるだろうけれど、仕事の準備に追われているかもしれない彼氏を思ってメールを送るに留める。
『おはよう』
メール送信画面に文字を打ち込んで、ふと照れた。恋人にメールを送ることなんて今までに何十回もあった。今まで付き合ってきた恋人たちにメールを送ったときにはこんなときなんとも思わなかった。当然のように文面を作り、当然のように送信ボタンを押した。
(どうしてかしらね)
それなのに、今付き合っているひとにはメールを送ることさえいちいち照れてしまう。
『ヒュー』
ヒュー・ヒューバート
。名前を打ち込んだだけで、字面を目にしただけでドキリと鼓動が高くなる。
(中学生の初恋でもあるまいし)
そう自分を笑ってみるけれど、彼を想う度に高鳴る胸は、これはこれで案外心地がいい。
ふわりと熱を帯びる頬を指先で撫でる。頬の熱を宿した指先で、次のデートは桜台のナイトプールにしないかとの旨を文面にする。
(次にふたりの休みが重なるのは、……)
駅の壁に貼られたカレンダーを目で追って、水樹は小さく微笑んだ。
(中秋の名月、お月見の日ね)
一階は雑貨屋を兼ねたカフェ、二階は個室更衣室。水着に着替えてフロア端の螺旋階段を登れば、その先には花の浮彫が施された木造扉。
空調の効いた扉の前、水着姿のふたりは手をつないで視線を交わす。身長百七十五センチ同士のふたりの目線はどうしても同じ高さで瞳と瞳が重なる。ただそれだけで、ふたりの頬はほとんど同時に薄紅に染まる。はにかんだ笑みを交わし合い、ほとんど同時に瞳を伏せる。
まだ始まったばかりの恋に戸惑う風のふたりのつきあいは、そろそろ半年以上が過ぎようとしても微塵も変わっていない。手を繋いでは互いの指先の体温に頬を染め、どちらかがどちらかの横顔に見惚れては切ない吐息を零す。傍から見れば、もしかしたらちょっと変に見えるかもしれないけれど、ふたりにとってはこれが自然体。
見ようによっては年上の美女に見える水樹からそっと視線を外し、ヒューはうるさいくらいに鳴る胸を掌で抑える。いつもの、決まりきった反応をしてしまうことにちょっと照れつつ、繋いだ水樹の手の柔らかさに重ねて照れる。こんな風に照れてしまうからこそ水樹が年上の彼女に、自分が高校生の彼氏に見られてしまうことは理解している。
(僕の方が二歳上なのに)
せめてもと背筋を正して、
「行こう、ヒュー」
恋するひとから顔を覗き込まれ、ヒューはまた頬を染めた。こくりと頷いてから、幼い仕草をしたかなとちょっぴり恥じる。
磨きこまれた金色の取っ手に手をかける。開いた途端、緑の香を帯びた熱帯の空気が頬を撫でた。視界いっぱいに濃い緑の彩が覆い被さってきた。
「素敵ね、ヒュー」
「そうだね」
緑の向こうに透けて見えるプールの水の青とランプの光の橙にふたり揃って瞳を細める。どこからか流れて来る温かい風に微かに揺れる椰子の下を潜り、人工芝の通路に伸びた羊歯の葉に脛をくすぐられながら並んで行けば、にゃあにゃあみゃあ、観葉植物の影から人懐こい猫たちがまろび出てきた。互いにじゃれあいながら水樹とヒューの行く手を塞いだかと思えば、ふと動きを止める。遊ぶ? とばかりに楽し気に声を掛けられ、ふたりは顔を見合わせて笑った。
通路の端に寄り、水を恐れずついてきた猫たちの艶やかな背中を撫でる。ご機嫌にぴんと立った尻尾の根元を撫でる。膝に乗ってきた猫を抱き上げたり、ざらざらの舌で掌を舐められて笑いあったり、じゃれ合う猫たちを眺めて微笑みあったり。しばらく遊んでもらっり可愛がってもらったりした猫たちが満足してその場に横になって、水樹は猫たちのふわふわした毛並みの感覚が残る掌でヒューの腕にそっと触れた。
「そろそろ水の中へ入りましょう」
誘うような眼差しに促され、ヒューは笑みを返す。
プールサイドにしゃがみ、爪先を水に触れさせる。温かくも冷たくもないプールの温度に安心し、水樹よりも先に水に身体を浸す。
「水樹」
水辺に揺れる花のような風情でプールサイドに膝をついた水樹に両手を差し伸べれば、水樹は花咲くように微笑んだ。両手を取り合う。するりと滑り込んできて水中で体重を失くす水樹の身体を抱き止める。
ほんの少しの間だけ互いの体温を感じ合ってから、ふたりは悪戯っぽい笑みを同時に浮かべる。
「よーい」
「どん」
くすくすと笑い合いながらプールの真ん中まで泳いで競争してみたり、周りにひとの居ないタイミングを見計らって水の掛け合いをしてみたり。
「ヒュー、見て」
ふたりの間でゆらゆらと揺れる満月に水樹は手を差し入れる。恋人の優しい眼差しを感じながら、水樹は掌に満月をすくい上げた。水と一緒に零れて消えそうになる月を空中に跳ね上げる。両腕を広げ、ぱしゃぱしゃと降って来る月の光を帯びた水を歓声をあげて受け止める。
「水樹」
月の光を浴びて子どものように笑う水樹がともすれば月の光とともに消えそうに思えて、ヒューは恋人の名を呼ぶ。
「ん、なあに?」
覚えた不安は、水の滴をきらきらと纏いながら朗らかに笑う水樹を見た途端に霧散したけれど、
「少し、冷えたかな」
ヒューは水樹の冷たい手を取る。恋人の手を引いてプールサイドに辿り着く。次はどうしようかと周囲を見回したところで、プールサイドの一角に立ち並ぶ無料貸し出しのフロートが目に留まった。動物のかたちをした一人用のものから二人用の浮き輪まで、複数あるフロートの中からふたりが選んだのは二人乗りのフロートベッド。
あおい水にふわふわ弾むベッドを浮かべ、ふたり並んで仰向けに横たわる。たぷたぷと寄せる水の音を耳元に聞きながら手を繋ぎ、夜空を仰ぐ。
どこまでも深い蒼の色した夜空には、白銀にまばゆく輝くお月さま。
水の音の真ん中、水樹は月へと手を伸ばす。
「あんなに綺麗で、手が届きそうなお月様なのに」
硝子越しの月の光を掌に透かせる。黒い瞳に月を捕らえる。緩く指先を曲げてみても、指先に触れるものはなにもない。
「いざ手を伸ばしたら絶対に届かない……」
「cry for the moon、か」
得られない美しいものを欲してしまうのはもしかすると人の性ではあるのかもしれない。でも、とヒューは傍らを見る。月の光を全身に浴びる恋人を見る。
「僕はお月様より美しい人に手が届く」
至極真面目に囁けば、恋人は夜の色した瞳をぱちりと瞬かせた。
「それ、誰のことかしら?」
瞳に月を輝かせて素知らぬ顔をする恋人が、やっぱり月よりも眩しく美しく見えて、ヒューは甘く微笑んだ。
水上でのお月見のあとは、タオルに身体を包んで温かな猫たちと遊ぶ。裸の胸に当たる猫のふわふわした毛並みのくすぐったさに笑い合った次は、椰子の屋根の屋台でアイスクリームを求める。梨に葡萄に栗、秋の味覚をミルクとあわせた甘くて冷たいお菓子を手に、ふたりは生い茂る観葉植物の葉陰に腰を下ろす。温かな風が緩やかに流れる場所で互いのスプーンを互いの口に運び合う。
「ん、美味し」
アイスクリームの冷たさと甘さの残る水樹の唇に、ヒューは同じく甘い唇をそっと寄せる。緑の葉陰でこっそりとキスをして、
「そうだね」
小さく、悪戯っぽく恋人たちは笑い合う。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
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