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今宵の月も
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サイドチェストの上に放り出されたままの賃貸契約書にふと目が留まったのは、
──……彼が、あなたの『誰か』さん?
真夏の海のパラソルの下でこちらを揶揄するように笑む女の黒い瞳を思い出したからだ。
寝子ヶ浜海岸沿いのワンルームマンションの賃貸契約書に記されている名は、
──片篠藍人
あの女が口にした通りの名。杳として行方の知れぬ、さゆるが『愛した』男の名。
薄っぺらい紙に記された彼の名を指先になぞる。どうしようなく暗い息を吐き出し、
朝鳥 さゆる
は長く放置していた契約書をチェストの引出し深くに仕舞い込んだ。
(……あの女)
──マリーって呼んで
Maliceと名乗り、そう言って妖艶に微笑んで見せた女。
さゆるが藍人の隠れ家だったワンルームマンションに住み着いたとき、この部屋にはほとんど何もなかった。それなのに。
今は、部屋のそこここにあの女に私物が転がっている。夏休みの間、連日押しかけてきた挙句、最後のあたりにはほぼ住み着いていたあの女。夜となく昼となく、貪るように身体を求めてきた女。どれだけ邪険にしても無視しても、それ自体が面白く感じているかのように揶揄ってきたり、悪意に満ちた言を投げかけて来たりしてきた女。
正直、傍に居られるのはとても面倒だった。
閉ざされたカーテンの向こうに視線を向ける。
夏休みが終わると、高校三年生であるあの女は元の住まいである桜花寮へ戻って行った。そうしてから、気が付いた。あの女がいる間は、常飲していた睡眠薬を口にせずとも眠ることが出来ていた。たとえそれが爛れるような行為の果てであったとしても。
視線を巡らせる。ここのところ毎日のように胃に流し込む睡眠薬のシートが散乱している。
薬の効果で重みを増す身体をベッドに倒す。
(……あの、女……)
確か、もとの名を
葉利沢 倫理子
と言った。Maliceというのは、彼女の身を奪い取った別人格が持つ名であるらしい。
今頃は葉利沢倫理子として恙なく学生生活をしているのだろうか。
それとも夏休み中のこちらでの生活が忘れられずにいたりするのだろうか。
意識に暗い紗が掛かり始める。睡眠薬による泥のような眠りに引きずり込まれるまま、さゆるは僅かに唇を歪めた。
(これで、ひとりでいられる)
夢を見た気がする。
いつの間にか作っていた合鍵を使って、あの女が部屋に入って来る夢。
軽い足取りで部屋を横切り、固く閉ざしていたカーテンを勢いよく開けば、窓の外には眩いばかりの満月が輝いていた。
泥の眠りに沈むさゆるの身体の上に圧し掛かり、女は纏っていた服を鬱陶し気に全て脱ぎ去る。どこか楽し気にくすくすと笑いながら、夢うつつに彷徨うさゆるの服をも脱がせる。
離れていた十数日分を埋めるかの如く、女はさゆるの身を貪婪に食らい始めた。
喰らう。
女の行為は、それに近いように思う。
肌をこじ開け、血の色をした快楽にその身を強引に捻じ込む。己とさゆるとが別の人間であることを拒絶するかのように、拒絶されることを拒否するかのように、己とさゆるとを無理やりにひとつにしようとする。
女との行為は、だから快楽であり苦痛だ。互いによる互いの自傷行為だ。
月明りに瞼を刺され、さゆるは瞬いた。うつ伏せになっていた身体を起こす。月の光に照らし出される裸身のあちこち、痣のようにも傷跡のようにも残る行為の痕を見る。
夢が夢でなかったことを溜息のうちに認め、傍らを見遣る。隣には、白い裸身を突っ伏させて眠るMaliceの姿があった。
泥のようにまとわりつく睡魔を振り払うようにベッドから這い出す。窓辺に近づき、煌々と輝く月を眺める。
一糸纏わぬ肌に、女の体温を感じた。
視線だけを流す。隣に薄布一枚羽織らぬMaliceが立っていた。
冷たく冴えた月の光を宿らせた女の黒い瞳には、揶揄うような、どこか悪意を含んだ微笑みが浮かんでいた。
純粋なまでの悪意を孕んだ眼差しにも、さゆるの心は僅かも動かない。
(どうでも良い)
女のどんな眼差しも言動も、さゆるの心には刺さらない。
(……そうね)
内心に、さゆるはいつかのMaliceの言葉を認める。
──あなたの瞳は誰かさんしか見てないのね
(あたしには、片篠藍人しか見えていない)
表情を微塵も動かさず、さゆるは月ばかりを見つめる。月の揺蕩う海ばかりを見つめる。
「ねえ、」
さゆるから何の反応もないことに焦れたのか、Maliceが口を開いた。
「さゆるは月夜が好き?」
さゆるの唇は動かない。
「私は好きよ」
月に白く輝く彫像の如く動かぬさゆるには構わず、Maliceは続ける。
「この子が十四歳の時に、この子の体内に私が宿されたから」
裸の胸に掌を押し当てる。『葉利沢倫理子』の身を引き裂くような経験の最中、倫理子の心の深奥に『Malice』は宿った。あの時も、月が輝いていた。
「実際に生まれ落ちたのはこの子が十七歳の冬だけどね」
無関心な沈黙にも構わず、Maliceはひとり喋り続ける。
初めて倫理子の身体を奪い取ったときにも、月の光が空に満ちていた。
「月夜は私にとって誕生日なのよ」
己の誕生を語るMaliceに一抹の視線も興味も向けず、さゆるは低く呟く。
「……月の光なんて嫌いよ」
誕生を否定するかのようなさゆるの言葉に、Maliceは唇を歪めた。
さゆるの瞳に映るのは、いつまで経っても、どれほどその裸身に己を刻み込んでも、己にはなり得ない。あの男ばかりが占めている。
月夜にふたりきりでいても、月の下で身体を重ねた後でも、さゆるが想うのは決して己ではない。
「片篠藍人のことを思い出させるんだ」
その名を口にすれば、憎悪と悪意が胸に渦巻いた。己の存在意義であり己の髄でもある悪意を、Maliceは身体中から溢れださせる。
「そうでしょ? さゆる」
悪意しかない瞳でさゆるを覗き込む。さゆるがこちらを見ずとも、何も口にせずとも、Maliceは理解する。図星なのだと。
悪意が吹きあがる。嘲笑が唇を彩る。
さゆるに消えない傷をつけたかった。
「彼がいなくなってからどれぐらい経つ? 半年? 一年?」
目の前の女に見つめられたかった。
そこに嫌悪しかなくとも構わなかった。報復に傷つけられても構わなかった。だってそれは、さゆるをこの手で傷つけ得たという証拠になる。
「……もう死んでるかもね。それとも……あなたのことなんて忘れて他の女と一緒かも?」
「……だから何?」
それなのに、どれだけ悪意をぶつけたところでさゆるの瞳は揺らがない。こちらを見もしない。
「鬱陶しい女……」
風に流されてまとわりつくゴミ屑を払いのける無造作さで、さゆるは吐き捨てた。その瞳に映るのは、白い月ばかり。片篠藍人ばかり。
それきり、さゆるは黙した。
月の光に裸身を晒してしばらく、闇夜の如き沈黙を掻き分けるようにしてMaliceは突然さゆるに両腕を伸ばした。氷じみて冷たい身体をかき抱く。
僅かに高い位置にあるさゆるの瞳は、無感情にMaliceを見下ろしている。
「さゆる……」
すぐに他所を向こうとするその眼差しを繋ぎ止めたくて、Maliceは抱き締めた女の名を囁いた。己の声が己の声でないほどに切なげに聞こえて、さゆるの瞳に映り込む己が恐ろしく真剣な表情をして見えて、けれどMaliceは呻くように泣き出しそうに続ける。
「今だけ、……今だけは、私だけを見て……」
さゆるの細いうなじに両腕を回す。縋りつくようにキスをする。
「藍人のことなんか忘れて……」
今だけは、と繰り返す。息を奪うように唇を重ねる。さゆるは一言も発しない。
機械的に、脊椎反射のように返されるさゆるからのキスに、何の感情も籠らぬ唇に、Maliceの瞳から涙が零れて落ちた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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