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葡萄色したシャツの胸に銀の指輪が澄んだ色を放っていた。深い蒼で彫り込まれた十字のラインを深爪気味の指先になぞる。
(……神魂だな)
月光に白く浮かび上がる城を一目見て、
神嶋 征一郎
は苦々し気に溜息を吐いた。
ヴァイオリンを奏でるための道具としての爪をケアし、就寝したはずだった。それなのに気づけば見知らぬ城の前に佇んでいたとあれば、これがいつもの神魂の仕業でなくて何だというのだろう。
銀の指輪を通したチェーンネックレスを見下ろす。葡萄色のシャツの胸には深海を思わせる深い蒼のグラデーションのネクタイが締められている。深海を泳ぐ銀の魚のネクタイピンの光を見止め、征一郎は群青の瞳を細めた。
蔓薔薇の絡む黒い門の前には、黒いドレスの女がひとり。案内役であるのかそもそもの原因であるのか、女悪魔は淡々と城の概要を語り星型の角灯を手渡す。
「自分が言うのか」
目を瞠り渋い顔をする征一郎に行ってらっしゃいと手を振る。
石畳の路を渡り、黒い扉の前に立つ。如何にも良からぬナニカが出そうな城の雰囲気に、征一郎の顔から血の気が失せる。
扉の奥から聞こえて来る忙しないナニカの足音に肩が震える。足が竦む。
(幽霊……)
胸に零れて毒のように広がる恐れを歯を食いしばることで噛み殺す。
(流石にねぇだろ)
『大切に想うひと』──女悪魔からそう聞いた途端、胸に浮かんだ面差しがあった。
銀の魚のネクタイピンに触れる。ぐ、と固く握りしめれば、夢の灯火を持つ手にも力が籠った。意を決し、扉を開く。大股に踏み入り、ナニカから逃げる足取りで足早に暗闇を進む。
(次に逢った時に告げると決めてはいたが)
──貴方の愛を見せて頂戴
女悪魔に告げられた言葉を思い出せば、知らず瞳が歪んだ。まさか夢の中での邂逅になるとは思ってもみなかった。
(アイツはいつも)
暗闇を進む勇気のもととするのは、彼女が己に向けてくれたまっすぐな笑顔。惜しみなく与えてくれた素直な気持ちや、色んな『好き』。
彼女から貰った想いを、きちんと返したい。けれど此処はまだ夢の中。伝えたとしても彼女が覚えていられるかどうかは確定事項ではない。
(いずれまた、)
深海の瞳に決意を湛え、広大な城をひとり探索する。鉄格子の廊下を進み、暗闇のわだかまる部屋を角灯で照らす。魔物のレリーフで飾られた回廊を巡り、瘴気の漂う地下牢を彷徨う。
彼女が何処にいるのか、まるで心当たりが無かった。
(……何も知らねぇ、な)
片端から扉を開けながら、その度に空っぽの部屋に望みの光を潰されながら、征一郎は自嘲気味に笑う。
(自業自得だ)
知ろうとしなかった。彼女はいつだって笑いかけてくれていたのに。
ただひとつ知っているのは、ふたりの共通点であるのは、
(音楽)
こんなところにそれがあるのかは分からない。それでも、
(探してみる価値はあるか)
ともすれば背後から闇がひたひたと追って来る気配を感じる。振り返ってしまえば恐怖に呑まれそうにも感じて足が竦む。
震えそうになる膝を拳で殴り、背筋を伸ばす。彼女が誕生日プレゼントに贈ってくれたネクタイピンに触れる。
(それでも、)
せねばならぬことは恐ろしい闇の先にある。
──去年のネコフェスで私、変われたんだよ
彼女の笑顔が瞼の裏にある。それは彼女に去年渡した可能性──音楽という可能性の欠片。その欠片を小さな掌の中で大切に育ててくれた彼女が、この暗い城に囚われているのであれば、
(救う以外に、何がある……!)
瞼を開く。何もかもの輪郭を滲ませる暗闇の中に見えたのは、部屋の真ん中に据えられたグランドピアノ。
窓のない部屋の中、
結城 日和
は琥珀色の瞳を幾度も瞬かせる。見知らぬ部屋に視線を迷わせれば、ケースに入れられたままのトランペットやヴァイオリン、チェロやビオラ、棚や壁に置かれたたくさんの楽器が目についた。
(自分の部屋で寝てた、……よね?)
寝間着を着ていたはずの身は、闇に同化してしまいそうな黒いドレスを纏っている。裳裾じみて床に引き摺るスカートの裾を両手で少したくし上げる。高いヒールの靴をぽいぽいと脱ぎ捨て、楽器に囲まれた部屋を歩き回る。
薄暗い部屋を一巡りして、重厚そうな扉を見つけた。開こうとしても開かない扉を拳で叩く。
(出られない……)
扉に背を預けてしゃがみこむ。どうすればいいのか考える。混乱して身も世もなく嘆かずに済むのは、大好きな楽器に囲まれて少しだけ落ち着けるからだ。でも、
(やっぱり、不安だよ)
ひとりきりで見知らぬ場所に訳も分からず閉じ込められているこの状況は、どうしようもなく心臓をどきどきさせる。身の竦むような恐怖に包まれてしまう。
ともすれば怖さに息を忘れてしまいそうになって、日和はぎゅっと瞼を閉ざした。どこからか聞こえて来そうなナニカの声に思わず耳を塞ごうとして、指先に優しい石が触れた。
見なくともそれが誕生日に征一郎から貰ったアネモネのイヤリングであると気づいて、日和は僅かに口元を緩める。
彼が助けに来てくれる、たしかな予感がした。
(でも)
胸をふわりと温かくする希望を潰そうとするのは、周囲を満たすお化けでも出て来そうな気配。幽霊嫌いな彼が最も苦手とする雰囲気。
(それでも、……)
希望を繋ぎたくて、日和は立ち上がる。大量に転がる楽器の中から古びたヴァイオリンケースを手にする。ケースの中から現れたのは何故だか自分が愛用しているヴァイオリンで、
(もしかしたら)
これは夢なのかもしれないと、日和は小さく思った。
音楽が聞こえた。
思い切り陽気で屈託がなくて、暗闇の重圧さえ吹き飛ばす太陽のような旋律。晴れ渡る空を舞い歌うカナリアのような音。
征一郎は足を止める。一瞬の後、音楽を辿って一目散に駆ける。
「っ……」
ヴァイオリンの音が聞こえる扉の前で、足を止める。息を整え、扉を開ける。
「……!」
突然大きく開いた扉に、雪崩れ込んできた眩しい光に、日和は小さな声をあげた。
「神嶋くん来てくれたんだね!」
光の向こうに征一郎の姿を見、日和は顔中で笑う。奏でていたヴァイオリンをケースに仕舞い、長いスカートの裾につんのめりそうになりながら征一郎のもとへと駆け寄る。
「お前も来ていたんだな」
ずっと彼女を想っていたことも、彼女を見た途端に深く安堵を覚えたことも決して表には出さず、征一郎は小さく笑ってみせた。
「ありがとう」
「何がだ」
「見つけてくれて、嬉しいな」
ふうわりと笑う少女の白い耳に己が贈った耳飾りを見つけた。
縋るように、けれど遠慮がちに、日和がジャケットの袖を摘まむ。覚えていただろう恐怖を隠そうとしながらも抑えきれない様子から、思わず視線を逸らす。言葉を失くす。
「……っ」
夢の灯火で彼女を照らし出す。
「ネコフェスの際にお前に言いたい事があると言ったな」
「えっ」
「言ったな」
「うん、言ってたよ」
一度しか言わねぇ、と征一郎は袖を掴む日和の手を掴む。大きな瞳を瞬かせる少女を真直ぐに見つめる。
囚われの彼女を助けるためには想いを伝える必要があった。けれど、伝えるのは救いたいが為ではない。ただ純粋に、
「自分は、お前に恋をしている」
彼女が好きであるからこそ、想いを伝えたかった。
「お前が、……」
言葉が胸に詰まる。気持ちを伝えることはこんなにも難しい。けれど、──だからこそ、伝えたい。
「……愛おしい」
低く低く胸の内を告げながら、どうしようもなく胸が高鳴った。これだけの苦しさを彼女は味わっていたのかと思えば、胸が痛んだ。
「待たせた」
小さく詫びる。彼女の気持ちを受け止めるまでに、己の気持ちを確かめ言葉にするまでに、随分と時間が掛かってしまった。ゆえに確信している。
(僕の望みはもう既に叶っている)
ずっと前から。彼女が己に気持ちを手渡してくれたときからずっと、彼女は己を見つめ続けてくれた。己を受け止め続けてくれた。
「本当に、てめぇも物好きな奴だ」
己を恋に落とした少女に、征一郎はほんの少し負け惜しみじみて呟く。この先は彼女に恋の苦しさを覚えさせまいと、瞳の琥珀に誓う。
日和の瞳が宝石より煌いた。琥珀の瞳に見る間に膨らみ頬に零れる涙に、征一郎は息を詰まらせる。
「……泣くんじゃねぇ」
「あ、違うのこれ、は嬉しくてだから」
えへへ、と笑う日和に苦笑し、ジャケットのポケットにハンカチを探ろうとして止める。手を伸ばし、親指で頬を伝う雫を拭う。
「私の気持ち受け取ってくれて、私のこと好きになってくれてありがとう」
掌に頬を押し付けるようにして笑う少女の額に顔を寄せる。緩く波打つ亜麻色の髪に軽くキスをして、征一郎は不器用に照れた。
「さっさと来い、帰る」
小さな手を引き、暗闇を夢の灯火で押しのける。
「嬉しいなぁ、……でも、これはきっといつもみたいな不思議な夢なんだろうね」
夢見心地で呟き、日和は寂しく笑う。
「夢だから、忘れちゃうのかな」
「自分は忘れない」
征一郎は日和の手をぎゅっと握りしめる。
「てめぇが忘れても、何度だって告白してやる」
次は、出来れば泣かせないようにもっと上手くこの心を伝えてみせよう。
──……うん、待ってるね!
耳朶をくすぐった彼女の嬉しそうな声がまだ残っている。
夢から覚めて初めに見たのは、窓の外に白く輝く丸い月。
(……月が、綺麗だ)
征一郎は息を吐き出す。
月に想うは、彼女の瞳。
もしも彼女が同じように目覚めて、けれど夢の出来事を覚えていなくとも、せめてとても幸せな気分で目覚めていてくれればいいと、征一郎は月に祈った。
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
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