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今宵の月も
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背中が痛い。
固くて粗末なベッドの上に身を起こして、
佐和崎 紗月
は黒い瞳を瞠る。
(……私、)
自分の部屋で眠っていたはずだった。
なのに瞼を開ければ、圧し掛かって来そうに重い石の天井が視界を塞いでいた。じとりと湿った石壁に囲まれていた。
「っ……」
鼻を突く黴臭さに眉をひそめる。
(地下牢……?)
見覚えのない場所に突如としてひとりきりで放り込まれたことに思い至ると同時、心臓が痛いほどにどきどきと喚き始めた。
身体を押し包む暗闇に身が竦む。手足の感覚がなくなるほどに身体が体温を失う。
今にも泣き出してしまいそうになる瞳をぎゅっと閉ざす。
瞼を開いてしまえば、壁をすり抜けて来る幽霊さえ見える気がした。
生来の己の気の弱さを叱咤しようとして出来なかった。せめて今にも折れてしまいそうな心を支えるように自分で自分の両肩を抱きすくめる。
震える胸に涙の滴がぽたぽたと落ちる。藁を詰めたような粗末なベッドに背中を丸めて座り込む。涙に濡れた唇で誰かの名を呼ぼうとする。こんなときに必ず助けに来てくれるはずの誰か。怖くなんかないわよと闇夜のお月さまより明るく笑って手を取ってくれるはずの誰か。自分にとってヒーローよりも頼もしい誰か。大好きな、誰か。
最愛の人の名前が、出てこない。
「どうして……?」
涙で熱い瞼をもたげ、紗月は呻いた。
名前も思い出せないけれど、自分には好きなひとがいる。なによりも確かに、その人は居る。だってその人のことを想うと、胸があったかくなる。
離れたくない。
これからもずっと一緒にいたい。
そんな気持ちがどうしようもなく募ってくる。
ほんの少しでも会えないと、世界が色褪せて見える気さえする。
(……いえ)
紗月は黒曜石の瞳を瞬かせる。この心に映る世界は、既にもう色褪せてしまっている。
(こんな世界なんて、いらない)
傷つけられ追い詰められた子どものように思って、もう一度大好きなひとの名前を囁こうとして、やはりできなかった。心の中にその大切な人の存在は間違いなくあるのに、その人の顔も、名前も覚えていない。
世界よりも大切なひとの、だからこそ大切な名前。
決して忘れてはならない人の名前。
「なぜ覚えていないの?」
自身に低く囁き掛ければ、心は際限なく落ち込んだ。身体を包む地下牢の暗闇よりもなお深い深淵に沈んで呑み込まれてしまう気がした。
見知らぬ周囲に怯えて零れたのとは違う、深い哀しみの涙が溢れる。
(いけない)
頬を伝う涙を手の甲で拭う。拭っても拭っても止まらぬ悲しみをどうにかして胸のうちに納めようとする。だって、
(多分、私が泣く姿なんて見たくない……はず、だから)
見たくないよ、と泣き出しそうな顔で笑う気がする。そうしてから、おどけた仕草でどうにかして笑わせようとしてくれる気がする。
たとえば、王子さまのようにロマンチックなお辞儀をしてダンスに誘ってくれたり。
ひらりと優雅にひらめくドレスの裾を見た気がして、紗月はぱちぱちと瞬いた。そうしてから、そっと微笑む。
きっとその人が迎えに来てくれる。
名前も覚えていないひとを心の底から信じれば、悲しい涙は溢れて来なくなった。
(……今は心を強く持とう)
この心は決して強いわけではないけれど、それでも。
大切なその人が助けに来てくれたそのときに、笑っていられるように。
(もしも笑えなくても)
せめて、穏やかに迎え入れられるように。
暗闇に閉ざされた地下牢で、少女は凛と背筋を伸ばす。
見仰いだ月が現実のものとは決して思えず、
初瀬川 理緒
は夜色の瞳を不審に細めた。
(明日は朝早くから撮影だし)
明日はグラビアアイドルとしての仕事が入っている。水着の仕事ではなく、普段着に近い通常ファッションの仕事で、理緒としては自分のファッションセンスを問われるこちらの仕事の方が気が抜けない。
お月見イベントがあちらこちらで開催される噂も耳にしていたけれど、グラビアアイドルであり受験生でもある毎日は忙しい。それに、夜更かしは仕事でもない限りしない主義。だから受験勉強も早めに切り上げてベッドに入って、
(寝たはず、……だよね?)
たとえば耽美系ホラー映画にでも出て来そうな古城を前に、理緒は瞼を擦る。爪先に地面を確かめる。
漂う薔薇の香に視線を巡らせれば、艶やかな蔓の間に間に紅い華を咲かせる蔓薔薇の絡む黒い門があった。
こんばんは、と微笑むのは、これまた耽美系ホラーにでも出て来そうな黒いドレスの女。
「こんばんは……?」
挨拶を返しながら首を捻る理緒の指に、女は星型の角灯を握らせる。
『大切に想うひと』が城内に囚われていると聞かされ、理緒は瞳を剣呑に煌かせた。脳裏を過るのは、ただひとり。
(紗月……!)
今にも駆けだしそうな理緒に、女悪魔は艶やかに微笑んでみせる。
「私に貴女の愛を見せて頂戴」
静かな言葉を、理緒は挑発と取った。唇を引き結んで頷く理緒をじっと眺めて後、女は今度こそ挑むように笑った。
「そうね、もう少しだけ楽しませてもらおうかしら」
悪戯をする悪魔の笑みで、女は指先で何かしらの呪い文字を宙に描く。女の髪と同じ銀色に光り闇に溶ける呪い文字に満足気に頷き、女は理緒に告げた。
「この夢の中で、貴女の愛しいひとは貴女のことを覚えていない」
「なに、それ……」
さあ、と女は城を指し示す。
「行ってらっしゃい」
手を振ったかと思えば、女の姿は闇にかき消えた。
「……わかったわよ」
星型の角灯の取っ手に握りしめ、理緒は頬に力を籠める。茨の巻き付く黒い門を過ぎ、大股に石畳を渡る。頭上を音もなく、どこかぎこちない動きで飛び回る大蝙蝠たちを睨み、黒い扉の前に立つ。魔物を象ったドアノッカーに触れもせず、無造作に扉を開け放つ。
闇に支配された城の中へ踏み込む。
光に照らし出される城の広さに唇を噛む。ともかくも虱潰しに探して行くしかないと定め、迷宮じみた城内をひたすらに歩き回る。
扉があれば扉を開き、廊下があれば突き当たるまで歩く。魔物のレリーフで飾られた階段を恐れず歩き、息を切らして次の階に紗月の姿を探して彷徨う。
「っ……」
歩き回って、駆けずり回って、息が乱れるのも足が棒になるのも構わずとにかく歩を進める。
勉強は嫌いだ。理詰めで考えることも苦手だ。だから今の自分に出来ることは、一途に前に進むことだけ。紗月を探して右往左往することだけ。
闇の中を迷いながら思い出すのは、先の記憶喪失騒動。突如として記憶を失ってしまった自分に、紗月は献身的に尽くしてくれた。不安に苛まれてしまう自分を支えようと気丈に振る舞ってくれた。
(でも、……)
きっと、あれは繊細な彼女をひどく悲しませた。傷つけ、苦しませた。
だからあの時、誓った。
紗月のことは絶対に手放さない。
紗月を二度と苦しめたり傷つけたりしない。
そう誓って、けれどその後にもすれ違いはあった。それでも、そのたびにふたりで距離を縮めた。心の結びつきも、深く強くなっていった。紗月だって、きっと同じように思ってくれているはず。
(そのはずなんだ……!)
幾度となく階段を上って、幾度となく下りた。どれだけの扉を開けたのかも分からなくなる頃になって、理緒が辿り着いたのは月の光も差し込まぬ地下通路。じめじめと黴臭い通路を光で照らし出す。もしこんなところに紗月が囚われていたらと眉をひそめた瞬間、小さな小さな息遣いを耳に捕えた。
「紗月!」
息遣いひとつで気づく。ここに、彼女が囚われている。
「紗月っ!」
必死に叫び、夢の灯火を掲げる。いくつかある地下牢を照らし出し覗き込み、
「紗月っ……」
冷たい鉄格子の向こう、粗末なベッドに腰をかけて凛と背を伸ばす大切なひとの姿を見つけた。何度も名を呼ぶ。鉄錆で指先が傷つくのも構わず格子扉に手を掛ける。開かないはずの扉は、けれど角灯の光に触れた途端に軋みながら開いた。
紗月の膝に縋るようにしがみつく。何もかもを忘れてしまったかのように、けれど穏やかに静かに微笑む紗月の顔を理緒は見つめる。
「……あたしはガサツで無神経で、紗月みたいに繊細なところなんてないし、頭だって良くないし、」
自分で口にしながら不思議になってくる。こんな自分を、紗月はどうして好きになってくれたんだろう。
「でも、」
もしもあの女のせいで紗月が自分のことを忘れてしまっていたとしても、何度だって言おう。この胸の内を伝えよう。
「……あたし、紗月が好き! 本当に好きなんだ!」
紗月が黒い睫毛をゆっくりと瞬かせる。膝の上に揃えていた細くて綺麗な指を伸ばし、愛しいものに触れるように理緒の頬に触れる。
「理緒ちゃん」
最愛のひとの名をたった今思い出したように、紗月は囁いた。涙の溢れそうな瞼を掌で擦り、ふわり、理緒の大好きな笑顔を浮かべる。
「……私も、理緒ちゃんが好き」
ピシリ、夢に亀裂が走る。夢の灯火に照らし出された世界が、まるで蕾が開くように解けてゆく。
「紗月」
「理緒ちゃん」
ふたりは両手を固く絡ませ合う。互いの額が合わさるほどに近く視線を重ね合う。
夢から醒めて、別々の場所で瞼を開くまで、それまでずっと、離れずにいよう──
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シルバーシナリオ(150)
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3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
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