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今宵の月も
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無慈悲な色して輝く満月が、闇の中に純白の城を浮き上がらせている。暗闇とじゃれ合うように無軌道に舞うは無機物じみた蝙蝠の群。
城からゆらゆらと流れ来る瘴気の如き重苦しい気配に、
弥逢 遊琳
は蜜色の瞳を繊細にしかめた。
(何だか)
城の放つ特有の気配に蝕まれてしまいそうな感覚さえ覚えて、遊琳は女悪魔から与えられた夢の灯火を高く掲げる。御守代わりにしているリップバームを塗り、首に皮紐で提げたキーチャームをそっと握る。
(これが手元にあってよかった)
キーチャームにつけている後輩のマンションの合鍵に触れる。
女悪魔の言っていた、『大切に想う誰か』には心当たりがあった。その誰かはきっと、遊琳が遊琳なりに愛してきた友のうちの誰かではきっとあるまい。
夜色の髪を揺らし、漆黒の扉の前に立つ。魔物を象ったドアノッカーには触れず、扉をそっと押し開ける。
(居るのはお前でしょ)
何となくではあるけれど、城に囚われ助けを待っている誰かは分かっていた。であれば、するべきことはただひとつ。
(探すよ)
星型の角灯を手に闇の中を惑うことなく歩き始める。どこからともなく聞こえるナニカの哄笑にも、光の届かぬ深い闇にうずくまるナニカにも、怖じることのない、むしろ柔らかな慈愛さえ含んだまなざしを投げかける。
夢の灯火がゆらゆらと揺蕩う。
(……会えたら悪魔を裏切ろうか)
愛を見せて頂戴、とどこか懇願に似て口にしていた喪服にも似たドレスを纏う女悪魔をふと思う。
ゆらゆらと、光が震える。
(僕はずっと此処に居てもいい)
そうすれば、囚われたひとに胸の内を明かさずに済む。なによりずっと一緒に居られる。
光を宿した蜜色の瞳に睫毛の陰が落ちる。首に提げたキーチャームと合鍵が掌に食い込むのも構わずきつく握りしめる。
何もかもを暗く黒く呑み込むが如き闇に、闇より重たい吐息が落ちた。
「……それでも」
彼を探す足は止まらない。迷路のように絡み合う廊下を迷うこともなく進む己を不思議に思いながら、遊琳は城の奥へ奥へと踏み込んで行く。行く手を遮る扉を恐れることもなく開いて進む。
(……それでも、)
己が願いを如何ほど曲げようとも。
半ば悲壮に翳る想いに視線が石床へと落ちる。光の輪の中を惑い惑うた末に瞳を上げて、──
見たのは、月の王様が如く夜色の天鵞絨を広げた玉座に足を組んで頬杖をついた男の姿。助けを待っている囚われ人には決して見えない彼の傍には、女悪魔の手下らしい球体関節人形が盆に乗せたカップを捧げ持っていたり、幾冊もの本を抱えていたり。
悠々自適を絵に描いたような彼──
加瀬 礼二
の姿に、遊琳は思わずその場にうずくまってしまいそうになる。
「……知ってた。何か知ってた」
暗闇の通路を懊悩と共に進みながら、幾許かは想像していた。もしかしたらと思っていた通りに大凡楽し気な探し人の姿に、遊琳は肩を落として呻く。
(……色々返してほしい)
悲痛な決意も、闇を進む勇気も、己が心を曲げる悲愴も。ここに至るまで抱え込んできた重荷を全て奪って捨て去るが如く、玉座の月の王様は蒼い瞳を楽し気に細めた。
(本当にこの子が好きなんだっけ僕)
「お前ほんとばか……」
自問する胸の内に反して、唇から零れて落ちた声は笑みさえ孕んで甘かった。だからこそ、遊琳は嘆息じみて改めて自覚する。
(嗚呼、好きは好きか)
囚われ人の囚われ人らしからぬ様子を見つめる。何処に居ようとも、何をされようとも揺らがぬ彼。それは己が何をしようとも変わらない。だからこそ、己は彼を魔除けのように『青いお月さま』と呼んだ。後輩と知りながら頼っていた。
今も、彼の眼差しは微塵も変わっていない。こんなところに閉ざされていてさえ、いつも通りの『青いお月さま』だ。
助けに来たのかどうかも分からなくなって彷徨う視線の先には、やはりどうあっても変わらぬ礼二の瞳がある。同時に、先の煩悶が脳裏に蘇る。
「大切な人に想いを……」
そうすることで、彼も己もこの夢の城から解き放たれる。
月の王様の如く悪魔の手下をかしずかせる彼を見る。この光景は、彼の意思の故。もしかすると彼も此処にいることを好しとするかもしれない。そうであるなら、ふたりでずっと此処に閉ざされていられるかもしれない。
(だけど)
唇を噛めば、まじないの力が籠ったリップバームの甘い蜜の香が胸を満たした。その香に、遊琳は瞬きを繰り返す。
(もし僕が黙ればそれはもう僕のエゴの形)
己の願いで彼のかたちを歪めてしまえば、己は永劫に己を許せなくなる。
(でも)
「言うの……?」
想いを伝えてしまえば、そうしてしまうことで万が一にでも彼の心のかたちを変えてしまうかもしれない。夢とは言え、記憶が残る可能性だってある。
(言っていいの……?)
謁見の間じみた広間の端に光と共に立ったまま身動ぎもしない迎えの人間の煩悶を、礼二は頬杖をついて面白そうに眺め続ける。蜜色の瞳が俯いたり仰いだりする度にその唇から零れる言葉を繋ぎ合わせ、遊琳が悪魔から受けた難問にあたりを付ける。
(大切な人に想いを伝えなければいけない、といったところでしょうねぇ)
ちらりと肩をすくめる。
遊琳が己に向ける感情の内容と、己が相手に抱く感情が異なることは重々承知している。けれど遊琳の感情に対しても、それに対する己の感情に対しても、嫌悪感や拒否反応は持ち合わせていない。複雑な心情は一抹もない。
(だって、ねぇ)
お互いがお互いに都合の良い存在であることを知っている。
「センパイ」
後輩として遊琳に声を掛ける。まなざしをもたげる遊琳は、悲愴感と戸惑いをないまぜにした表情をしていた。
「その……愛を見せてほしい、って……」
「それなら別に特別なこと言わなくたって良いじゃないですか」
月の王様は玉座から下りる。迷子のように角灯ひとつを手に立ち尽くす迎えのもとへ悠然と向かう。
「伝えなければいけない想いは別に特別なものでなければならないなんていってないんですから」
己にとって都合の良い『センパイ』でいてくれるのであれば、告げられる想いにも事もなげに応じてみせよう。そう定められるのは、遊琳がそう望むからだ。己から感情を向けられることを望んでおらず、ただ受け止めるだけで良いと思っているからだ。それ以上を求めていないと認識しているが故に、望むままに応じることが出来る。
「愛にも色々ありますし、それを語る言葉もたくさんあるじゃないですか」
遊琳が手にした星型の角灯の光の輪の一歩外で足を止める。光を仄かに頬に感じながら、玉座を離れた月の王様は端正に微笑んだ。
「なんでしたっけ、あの和訳……そう、月が綺麗ですね、でしたっけ」
俺は、とちょっと意地悪な笑顔を遊琳に浴びせる。
「あの手の詩的表現、苦手なんですよねぇ」
無駄に良い顔で微笑みながらからかっているのか助け舟をだしているのか解らない言葉をかけてくる、悪魔より悪魔らしい月の王様を遊琳は見つめる。
自分にしかわからないような言葉で伝えれば良いのでは、と彼は言っているのだ、と気づくまでにさほど時間はかからなかった。
(嗚呼)
嘆くように、想う。
(混迷に沈む僕に一条の光を差すのはいつもこの声で、)
この声が聞こえると、馬鹿みたいに鵜呑みにしてしまう。
「……僕がかぐや姫なら迷わずお前に還れたのに」
零れた言葉は、まるで歌人の切ない恨み言のよう。
掲げた星灯が青いお月さまの瞳を照らす。一歩踏み出し、闇に潜む月の王様を星の光で照らし出す。途端、彼の魔法に掛けられた唇は堰を切った。
「いつも守ってくれて有難う」
『大切に想うひと』とまっすぐ向きあい、遊琳は言葉を紡ぐ。
「傍に居る時間が本当に幸せで、手を引けなくてごめんね」
恥じらいが頬に熱を上らせる。
「ずっと一緒に居たいとか思う」
でもね、と己が矜持を口にすれば、瞳が熱く潤んだ。
「何の為にも変わらないお前が好きだよ」
だって知っている。月は誰のものでもないから美しく愛しいのだと。
遊琳が信じる通りに、青いお月さまは優しく意地悪に微笑む。そうして、甘い毒を吐く。
「ありがとうございます、センパイ」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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