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【紅椿の咲く頃に】
ああ、なんて。なんて。
けだるいままにカーテンを開くと、視界はまばゆく星明かりを受け、銀に染まっておりました。
刹那に呑まれます。あたかも季節が正しい手順を取り違え、冬の妖精が気の早い歓喜の踊りを舞っているかのよう。
雪はことさら高唱することもなく、常と変わらず静かな歩みで訪れたというのに。
ああ。ああ、なんて。
「……綺麗だ」
暁闇も間もなく晴れるでしょう。
たゆたう世は、深海に没するがごとく。
重い海水に手足を取られたままでは身じろぎするのがやっとで、息をするのもままなりません。小さな肺が抱え込める酸素はごくわずかで、呼吸にあえぎながら必死に空気の泡を追いかけねばなりませんでした。
なぜ、自分はイルカでないのだろう。周りの誰もが自在に泳ぎ回り、日々を謳歌しているというのに。
泳ぎの下手な魚なんて、海の中を生きるには辛すぎます。
なぜ、自分は違うのだろう。
絡みつく海水の重しに難儀しながら
弥逢 遊琳
は、いつものようにエレベーターに乗り込みます。かすかに感じる重力は心地よく、陽光きらめく海上へ遊琳を運んでくれるかのようです。八階へたどりつけば、息苦しさも薄らぐ気がしました。
通い慣れた801号室。インターホンは鳴らしません。どうせ返事はないでしょう。入るのも、やめておきました。
取り出した封筒を、郵便受けへ滑り込ませます。彼が拾い上げ中身を確かめたなら、きっと全て悟るでしょう。
言わば海上にぽっかりと浮かぶ、小さな島です。訪れるたび、海の重さと冷たさを遊琳に忘れさせてくれました。
そうして与えられた全てを返す時。それが、今この瞬間。目の前で手ひどく投げ捨てるような心ない行為と彼は受け取るのかもしれません。けれどもう、後戻りするつもりもありません。
残すのは伝わらない言葉ひとつ。
「ありがとう。……ごめんね」
泡と解けて消えるだけ。
寒々とした冷気をはらむ空気が、遊琳の小さな肺を満たします。部屋の前で感じたほのかな残り香は、外気へ追いやられて霧消していきました。
待っていたのです。ああ。待っていました。
街が白く覆い尽くされ、道程の全てを隠してくれるこの時を。
氷晶きらめかせて吹き込む風が、紡いできた言の葉を洗いざらいに運び去ってくれるこの時を。
白み始めた空の下を歩き、白い道を折れると、見慣れた店の看板が視界に入ります。うっすらと白い冠をいただくのは、画材店です。
例えば……ふと、寄っていくこともできるでしょう。まだ閉じている扉を少し強めにノックするのです。それだけできっと、遊琳はいくらか救われるでしょう。受け入れられるはずです。暗い深海から明るい海の上へと、簡単に引っ張り上げてくれるかもしれません。
そんな未来を望む権利は、遊琳にだってあるはずです。ありふれた幸福を享受する資格があるはずです。
けれど、遊琳は遠回りをすることにしました。
「あの大型犬。嗅覚は鋭いからね」
下手に店の前など通り過ぎれば、慌てて飛び出してくるかもしれません。すぐにも察することでしょう。あの大きな手で肩をつかまれたなら。もう一度、とらわれてしまったなら。
それも悪くはないけれど。
「もう……遅いよ」
それこそがきっと、正しく廉直であることでしょう。
けれど憂いもなく、ただ真っすぐに前を向いて進むには、遊琳はあまりに疲弊していました。あの巨大なまばゆさに受け止められたなら、遊琳の身は溶けてしまうでしょう。
深海でいい。深く、深くもぐればいい。やがて底へ行き着くでしょう。たどりつけばなにがあるのか、遊琳は痛いほどに知っています。
もはや足取りは止まることなく薄い雪を踏み、駅へ。島外へ向かう車列へ乗り込もうとした……その時に。
ひらり、はらと、足元へ。
「……紅椿……?」
9月で、朝でした。夢に見た赤にはいささかにふさわしくない時節です。
けだるいままにカーテンを開くと、視界はまぶしく日の光を受け、真っ白に染まりました。
しばしまぶたを伏せ、オレンジの熱に身を委ね。
見回せば、星ヶ丘寮の自室にはまだまだ、物が雑多に残っています。
「少しずつでも、進めないとね……」
そう、少しずつ。さもなくば鋭く見咎められ、全てが元どおりです。
ああ。ああ、なんて。
「つまらない」
全て片付けたなら、泡と消えよう。深く深く潜り、誰の声も聞こえないところへ行こう。そうして静かに、眠りにつこう。
紅椿が咲く頃に。
赤い花びらは、住む者の無くなった小島をことごとくに埋め尽くすでしょう。
起き抜けにも疲労にさらされ、やわらかなシーツの海へ倒れ込みます。
枕元にきらめくチャームを、そっと握り締めて。
「……そうだね。いいよ。お前だけは、傍にいて」
泡と消えよう。深い深い底の底で。
紅椿が咲く頃に。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月02日
参加申し込みの期限
2019年07月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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