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夢の終わりの夢を見る
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【シンテシス】
祈りも、願いも、雲の上の太陽を求むようなもの。
手の届かない何者かがたわむれに弄ぶ時の流れに、巨大な白壁を金槌ひとつで突破せよと突きつけられるような、途方もない無力。
いくら息を切らし駆けたところでどうにもならないというのに。
鵙海 甫
の足は自身の意思に反して回るのを止めず、さりとて一向に前へ進まず、焦燥はまるで熱されたアスファルトにぐずぐずと足元から溶かされてゆくかのよう。
「信じない」
受け入れがたい事実を封じて蓋を閉じ、一時見ないふりをします。そうしなければ進めないから。すくんでうずくまってしまうから。
「俺は、信じない……!」
石か花樹めいて動かない足を叱咤し、甫は病院へと飛び込みました。
信じたく、なかったのに。
「……ウソ、だよ……」
いささか乱暴なまでに病室の扉を押し開くと、
千堂 結
を出迎えたのは、物言わず横たわる彼。
「甫……君」
抑揚のない無機質な連絡のとおり、彼は一見いつもと変わらない、陶器のようにすべやかで白い肌をさらしています。
いつもと違うのは、ぴくりとも動かず、明るい栗色の瞳を開いて結を見据え、微笑んでくれないことくらい。
天地が入れ替わるような目まい。鼓動の音はバスドラム。速くなってゆく呼吸。幻想の地響きに結の膝は折れ、甫の胸へと覆いかぶさります。
「やだ……いやだよ、こんなの……こんなの!」
彼女はもう戻らないのだといくら聞かされても、甫の思考はそれを現実へ結びつけてはくれません。
まだ少しやわらかい胸のふくらみに頬を乗せ、甫は彼女を呼びました。
「結。おきて、結」
何度も。
「結。結。なあ……結。おきてくれ。結。笑ってくれよ、いつものように、ほら。結」
何度も。何度も。
「はじ、め……く……」
鼻の奥がつんと熱くなり、目の前が滲み、言葉が喉に詰まっても、心のなかで何度も、何度も。
祈りも、願いも、届きはしないと半ば理解しながら、かすかな希望を捨てきれず。
つい昨日に見せてくれた、いたずらな猫のような笑顔。瞳に灯る琥珀色の光。優しく頬に触れてくれた手のひらのぬくもり。木漏れ日のように控え目な優しさ。
それらが全て、全て、全て、なにもかも失われてしまったのだと、今さらながらに深く理解して。
結はぽつり、つぶやきます。
「これから、私……甫君がいない世界で生きていくの? 甫君がいない世界に、価値なんてある?」
貝殻からこぼれた真珠のように、雫は結の頬を伝います。
「結のいない世界……? もう、想像すら。俺は……」
夜空に暗雲が覆い、隠されてゆく月。地の底へ転げ落ち、もはや目にすることかなわない陽の光。どんなに手を伸ばしても。伸ばしても。
もう、彼女のいない世界。
「そんな世界に、意味なんて……あるのか?」
「ううん。ないよ、そんなの」
失われた世界に早々と見切りをつけ、結は立ち上がります。
濡れた瞳で最後の彼の表情を焼き付け、無理に口角を上げ微笑みました。そうすることで、少しは前を向いて歩き出せるのだと錯覚することができました。
「会いに行くね。すぐに」
「だから、待っててくれ」
病室を出ると、色のない陰鬱な病棟には、顔を持たない怪物たちがひしめき合っています。
甫は今や自分を支配する絶望に抗わず身を委ね、思います。今まで自分は、こんな世界に暮らしていたのか。まるで疑問とさえ思わず、当たり前のように。
いや。変わったのか、世界が。全てが。
どちらにしても、結が向かう先に変わりはありません。
どこへ行けばいいのか、迷うこともなく理解できるというのは、今もかすかに残った希望と思えました。
エレベーターに乗り、乗り合わせた怪物の醜悪に顔をしかめるのも隠さず、扉が開くなり飛び出します。
階段を登り、扉を開けば、
暗澹たる空に包まれた夜がそこには広がっています。
ちょうどいい。都合がいい。ここが陰鬱であればあるほど、行く先は虹色に輝いて見えるから。
甫は淀みなく歩み屋上を突っ切ると、
柵を乗り越え、ビル風の吹く縁へと立ちます。
下を覗いたりはしません。彼がいるのなら、きっとあの雲の向こうに決まっているから。
「ああ」
迷いも躊躇もなく。結は、
「今、いくよ」
甫は、
空へ。
「……んはっ!?」
「ふえっ!?」
魚のように跳ねた肩がぶつかり、ふたりは寝ぼけ顔を見合わせました。
周りを見回せば、見慣れた甫の部屋。遊びに来た結とソファに腰かけてだべっていたら、いつの間にやら揃って寝入ってしまったようです。
はあ、と結はため息。多分に安堵の色が混じります。
「イヤな夢見ちゃった。私、あんなこと……まだ、心臓がバクバクしてる」
「結もか? 俺も……すげーヤな夢」
「ほんと? 甫君も? どんな夢?」
「そりゃ……」
なんとなく、伝えるのは躊躇われました。
結とてそうでしょう。
夢は得てして不条理なもの、とはいえなにかを暗示しているような。やがて訪れる未来を示唆しているような。そんな気持ちにもなってしまうというものです。
同時に、想いの強さを再確認したとも言えるかも。
「……もう、忘れちまった」
「ひゃあ!?」
悪夢にどん底へ落とされた後は、思いきり引き絞った弓が弦を弾くように、抗い難い高揚に支配されるまま、甫は結をソファへ横たえ覆いかぶさります。
「ちょ、え、甫君……!?」
「悪い。なんか、抑えられなくて」
ぎゅうと思い切り抱きすくめ、短く唇を寄せて、それだけで、結はふにゃふにゃとされるがまま。
間近に覗き込む栗色の瞳が、
「イヤか?」
「ヤじゃ、ない。けど……ちょっとあのほらそのあれ、ビックリしちゃって! だから」
もう一度、短いキス。潤み惑う瞳は、ファンシーイエローダイヤモンド。
抗う必要もなし。躊躇う理由もありません。
結は。
「私、ね。怖い夢を見たよ」
「うん」
「甫君が……」
「うん。分かってる」
「だから、ね」
「うん」
白絹で包み込むように、彼の背へ腕を回し。首をもたげ、自分を組み伏せる彼のやけに艶めいて見える唇へ、自ら唇を触れました。
「目が覚めて、すっごく安心しちゃった。ふにゃ~って……私がぜーんぶ、抜けきっちゃうくらい。ほっとしたの」
微笑みに、微笑みを。
「だから……甫君と、こうしていられるの。すっごい、幸せ」
「俺も」
額へ。鼻先へ、頬へ。喉元へ。浴びせるように唇を。
抱き寄せ、赤みを帯びた栗色の波を指先ですくい、さらり、さら、と。
今さら、言葉にするまでもないけれど。
「大好きだよ。結」
「私も……あ、ンッ」
彼女の返事を口で塞いだのは、待ちきれないから。あるいは、照れくさかったのかもしれません。
溶け合うように、長く。深く。しっとりと。夢は繋がり解け、現へと縒り合されてゆきます。
睦むふたつの影を、窓の向こうに翻るオーロラだけが、まどろむように見守っておりました……いつまでも、ずうっと。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『夢の終わりの夢』のリアクションをお届けいたします。
今回は、プレゼントシナリオということで。あらためまして、千歳飴 楓子さん、おめでとうございました! 担当させていただきまして、とっても光栄でした。
誰しもイヤな夢、悪夢を見ることはありますよね。夢は夢として、分かっていても気分が落ち込んでしまったり。自分で思っている以上に、後に引いてしまったり。
墨谷はヒジョーにメンタルが弱い性分なもので、昔のイヤな思い出なんかを夢に見て、起きてからまた昔を思い出して、ダブルパンチでダメージを受けることがあったりします。
なるべくなら、そんなもなぁ見ないほうがよろしいわけですけれど。
とはいえ夢って、けっこうな力がありますものね。
夢に見た映像を実際に形にしちゃう映画監督もおりますし、夏目漱石の夢十夜を初めて読んだ時のインパクトたるやハンパないわけです。(漱石が実際に見た夢かどうかは分かりませんけれど)
今回はそんな夢、ことに悪夢を通じて、なんらかの転機となるような描写を、いくつかのエピソードでさせていただきました。
悪夢に停滞することもあれば、悪夢の反動が事を推し進めることもあると思います。
もちろん、それを活かすか現状を維持するかは、皆さま次第というところです。
どちらにしても、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです!
それでは、今回もご参加いただきましてありがとうございました。
次のシナリオでもお目にかかれますことを、心待ちにしております~。
お疲れさまでしたー!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月02日
参加申し込みの期限
2019年07月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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