寝子島八百万大宴会｜リアクション

寝子島八百万大宴会

●大胆行動はまだ続く

（な、何たる破廉恥な……！）
　生徒の下着姿もだが、ナイスバディ美女のトップレスは桐島先生には刺激が強いようで……。
　着ているシャツを脱ぎ、それを急いで真境名アリサに着せたいが宮祀智瑜が寄りかかって気持ち良さそうに眠っているので動こうにも動けない。
（騒がしい、酒臭い、トップレス美女……これは何かの罰ゲームか……？）
　酔っぱらいながらも、早くこの宴会が終わって欲しいと願う桐島先生だった。

　それから数分後。
　寝子ヶ浜海岸に辿り着いた小山内海は、バッシャーン！　と一気に海に飛び込ぶ。スケッチブックといった持ち物を放り出してから。
（冷たくて気持ちいい）
　橘千歳と御剣刀に手を振り、早くおいでよと呼ぶ。
「あ、海ちゃんが海の中に。海ちゃんだけに海の中に、あははは！」
　面白過ぎて、刀の肩をバンバン叩く千歳。
「海ちゃんが手を振ってる。よぉし、私も突撃だ！」
　服を着たまま、千歳も海に飛び込む。
「冷たい！　そして気持ちいい！」
「そうだな～、水浴びれば涼しくなるか～！」
　ふたりに続けー！　と刀も海に飛び込む。
　海と千歳の方を見ると、ふたりとも着ている服が濡れて透けている。
　海は薄い服なので、透け具合がすごく目立つ。
「うみ～、俺の前でそういう姿をさらしちゃうのは食べられても良いって意志表示だぞ～」
　正面から海をガバッ！　と抱き締める。
（透けてる？　何が？　ああ、服ね。海に入っているから当然だけど）

「うみ～、好きだ～、結婚しよう！」
　わー、刀君に抱き着かれたー、と心の中で言う海。
　その様子を見ていた千歳は、何で刀君が微妙そうな顔をしているの？　と思った。
　酔っぱらい親父のごとく抱き着いているが、どことなく微妙に見えるのは千歳の気のせいだろうか。
「もっと楽しそうにしましょうよ。せっかく3人で海に来たんだし。あ、もしかして飽きたか、飽きたのか？」
「俺が秋田？　飽きた！？　いや、飽きるわけないだろう！」
「海ちゃん、酷いよ。刀君、私たちに飽きたって」
　言ってないって！　と弁解するが、千歳の耳には入っていない。
「男は皆、そう言うのよね。俺はやってない！　言ってない！　って。そういう男にはお仕置きよ！」
　とりあえず……と千歳は刀を後ろから抱き着き、チョークスリーパーを。
「容疑者確保！　あははは！」
「痛い痛い！　千歳、痛いよ！　ぐおー、チョークスリーパーがキツイ！」
　その様子をスケッチブックに描こうとした海だったが、飛び込んだ拍子にどこかに行ってしまったようだ。
（いいぞー、やれやれー）
　痛い思いの中、千歳の気持ちいい感触といい匂いが。これはこれで良い。でも痛い。
「ちとせも好きだ～、結婚しよう！」
　チョークスリーパーをかけられたまま、刀は大声で叫ぶ。
　何かすごいことを言っているような気がするが、気にしないように。なお、これは彼の本心である。
「いい加減にしなさーい！」
　千歳はチョークスリーパーを解くと、バックドロップの要領で刀を思いっきり吹っ飛ばした。
「投げられて吹っ飛んだ！？　マジかー！」
　吹っ飛ばされても陽気な刀が落下したのは、寝子ヶ浜海岸の砂浜。
　砂まみれになりながらも、何かをやり遂げたような満足な笑みを浮かべる刀だった。

『ちとせ、やりすぎ』
　砂浜に落ちていたスケッチブックを拾い上げ、海はその一言を書いた。
「いいのよ。刀君、楽しそうだったし。ね？」
　吹っ飛ばされた刀は、陸に打ち上げられた魚のようにピクピクしつつ「俺は満足だ～……」と呟いていた。