寝子島八百万大宴会｜リアクション

寝子島八百万大宴会

●顔が赤いのは暑さのせい？

　８月も終わりに近づきつつあるというのに、今年の酷暑は一向に去る気配がない。
　八百万の神様が寝子ヶ浜海岸で宴会を催している影響で、寝子島島民はどんな飲み物を飲んでも酔っぱらう。
　老若男女、関係なく。
　そのため、今日の寝子島は酔っ払いだらけなうえ、更に暑くなっている。

「暑いから海だー！」
　御剣刀の提案に乗った小山内海と橘千歳は、海岸線を散歩している。
　暑ければ涼しい場所に行けばいい、という考えが刀にあった。
『きょうもあつい』
　海は薄手の服を着ているとはいえ、海岸なので日差しがきついので額に汗が滲み出ている。
「あつーい！　けど風は気持ちいいー！」
　結構日差しが強いな……と刀は心の中でぼやく。

　暑いとすぐ喉が渇くので、海は何か飲み物を買ってくることに。
　幸いなことに歩いている海岸線の近くに自動販売機が。
『ふたりとも、なにかのむ？　いっしょにかってくるけど？』
　自分だけ買うのも何なので、刀と千歳の分も買うことにした。
「俺はスポーツドリンク！　千歳は？」
「そうね……私もそれで」
　待ってて、と海は頼まれた飲み物を買いに行く。

『おまたせ。ちとせ、かたな、これでよかった？』
　刀と千歳にスポーツドリンクを手渡す。
「サンキュー、海」
「ありがとう。さすが、気が利くな」
　海から飲み物を受け取った２人は、キャップを開けてゴクゴク飲み始めた。
「うーん、やっぱり冷たいと美味しいな。常温の方が本来の美味しさを楽しめるっていう話だけど、こう暑いとそうは言ってられないわよね」
　冷たい飲み物で涼しく……と思いきや、なんだか体の中から暑くって来たような気分に。
（暑くなってきたけど……なんかすごく楽しくなって気分になってきたから別にいいかな？）

「美味い！　暑い時に飲む冷たいスポーツドリンクは美味いな～」
　一気飲みした刀は、美味いな～と連呼する。涼しくなってきたからか、千歳同様、気分が良くなってきた。
「まだ少し暑いな。もう一本飲むか」
　これから暑くなるからと、海が気を利かせてたくさん飲み物を買ってきてくれた。
「海がたくさん買ってきてくれたんだ。ガンガン飲むぞ～」
　ガンガン飲めば涼しくなるはず……なのだが、飲んでも飲んでも暑くなる。
（気持ちは良くなってきてるけど……何だこれ？）
　酒が飲めない未成年の刀には、これが酔った時の気持ちよさだということがわからない。

『それじゃ、わたしも』
　ペットボトルのキャップを開け、海も飲み始める。
『ふぅ、つめたくておいしい』
　冷たくて気持ちいはずなのに、なんだか体が熱くなってきた。
　もっと飲めば涼しくなるかも、と海はペットボトルを手にするとキャップを開け一気に飲み干す。
（水分が足りてないから暑いんだよ、きっと。飲み物はたくさん買ってきたから大丈夫だよ）
　刀も千歳も、もっと飲もう。
　そう筆談用のスケッチブックに書こうとしたが、２人とも既に顔が赤く、上機嫌だった。
「海、顔が赤いぞ？」
　そういう刀も顔が赤い。
『かお、あかいー？　それはきっと、あついからー。もっとのめば、きっとおさまるー』
　筆談だが、上機嫌な言葉使いに。
「ふふふ、海ちゃん、なんか顔赤いよ。トマトみたいで可愛い♪　いや、ピーチかな？　ビーチだけにピーチ、あははは♪」
　海に絡む千歳も、トマトみたいに顔が赤くなっている。
「まだ暑いぞ～！　水浴びれば涼しくなる～！　海に行くぞ～！」
　暑い時は海で泳ぐに限る！　と言わんばかりに、刀は寝子ヶ浜海岸に走っていった。
「刀君、待って～！」
　置いてかないで～、と千歳と海は刀の後を追いかける。

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