寝子島八百万大宴会｜リアクション

寝子島八百万大宴会

●おつまみ作ろう

　信心深いほうではないが、大宴会をしている八百万の神様の実在を知ったからには感謝の気持ちを伝えたい。
　そんな思いで、八神修はタブレットでレシピを検索しながら七夜あおいと力を合わせて頑張って肴を作る。
「いろんな神さまがいるんだな」
　天之丸尾猫神、巨大な龍の神の他に空をたゆたうマンボウ姿の神がいたり、麦穂毛玉の神の集団がいたり。
　白さが眩しい蕪姿の神、と選り取り見取りだ。
（八百万の神さまをおもてなしする、というアニメ映画を観に行ったことがあったな）
　今の状況はまさにそれだ、と大宴会の様子を見ながら、修は肴を作っていく。

　しばらくして、その様子が気になるのかマンボウ姿の神が彼のもとへ。
「味見がしたいのか？」
　水飲み鳥のように斜めに体を動かしているので、うなづいているのだろう。
「じゃあ、一緒に味見をしよう」
　塩コショウで味付けしたざく切りキャベツをつまみ、マンボウ神の口の中に入れてから自分も味見。
　一口食べたマンボウ神は、スイスイと空中を泳ぐ。
「喜んでいただけだようで何より。それ、あおいが作ったんだ。美味しいだろう？」
　マンボウ神は同じ場所をグルグル回って泳いでいるので、美味しい、と表現しているのだろう。
「修君が簡単に作れるって教えてくれたからだよ。もう少し塩コショウをきかせたほうがいいかな？」
「いや、これでいいよ。神さまが喜んでいるんだし」
　味見に満足したのか、マンボウ神は宴会場のように泳いでいった。
「あおい、他にも、お酒の美味さを引き出す肴を作ろうか」
「神さま達に、どんなおつまみを食べたいか聞くのもいいんじゃない？」
　何かリクエストがあるかもしれないし、というあおいの意見に「それもそうだな」と修は調理の手を止める。
「それじゃあ、行こうか」

　恵御納夏朝は炊飯器でお米炊けるよう準備、セットをしてから、おつまみや料理や材料を買いに。
　酔っぱらっているので足元がフラフラしているが、頑張って買い出しに。
「いろいろ作って、振る舞うにゃー……」
　酔った状態での買い出しは、何とか無事に終わった。行く先々のお店の店員達も酔っぱらっていたが。
　作るおつまみは和・洋・中、の方面で。
「まずは……キュウリの塩漬けにゃー……」
　キュウリを一口大の輪切りにし、味がすぐしみ込むように切れ込みを入れる。
　それが終わると塩とキュウリをフリーザーパックに入れ、空気を抜いてから優しく揉む。
　塩漬けをしばらく置く間、卵焼きを作る。
　卵を割り、菜箸で混ぜてから卵焼き用のフライパンで焦げ付かないよう、丁寧に焼き上げる。
「上手くできたにゃー……」
　綺麗な仕上がりに満足気味。
　２品作り終えた間に、ご飯が炊きあがったのでおにぎりを作ることに。
　ご飯に塩を混ぜたら、サランラップに包んで丁寧に握る。
　炊きたてだからご飯は熱かったが、食べてくれる神さまを思い浮かべながら三角に握る。
　握り終えた三角おにぎりに海苔をつければ完成。
「神さま達……喜んでくれるといいにゃー……」
　できあがったおつまみをお盆に載せ、夏朝は宴会場へ歩いていく。

「お待たせにゃー……おつまみだにゃー……」
　待ってました！　と宴会で盛り上がっている神さま達は大喜び。
「キュウリの塩漬け……卵焼き……おにぎりだにゃー……」
「おお、これはうまそうでござるな！　どれ……」
　器用に箸を持った天之丸尾猫神が、卵焼きをつまむと口の中にいれモグモグと食べ始めた。
「美味いでござる！　おぬし、料理上手でござるな」
「ありがとうだにゃー……」
　侍な猫神さまに褒められたので、夏朝は嬉しくなった。