夏の終わりに｜リアクション

夏の終わりに

●描かれた夏の思い出

（夏休みももう終わり。宿題、終わらせないと）
　毎日コツコツやっていたこともあり、小山内海の夏休みの宿題は残りあと少しだ。
（よし、がんばるぞー）
　机に向かい、宿題を早く済まそうと机に向かいガリガリと。
（でももう、学校が始まるんだね）
　カレンダーを見ると、夏休みは残り少なくなっていることを実感してしまう。
（夏休み、残り少なくなってきた）
　そう思うと憂鬱なような、楽しみのようなといった感情が。
　学校が始まり、いつものように授業はちょっと憂鬱、というかめんどくさいな。
　……と思うが、また皆と会えると思うとワクワクする。
（休み明けは何があるんだろうなぁ）
　いろいろ考えたりするが、宿題をする手は休めない。

（よし、これで終わりっと！）
　いろいろ考えながらだったが、一生懸命頑張った甲斐あり宿題を予定通り終わらせることができた。
　清々しい達成感達に、気分爽快な海だった。
　思ったより早く終わったので、これから何をしようと考える。
（……スケッチブックの整理でもしようかな）
　スケッチブックを取り出し、整理ついでに描かれているものを見返しながら、この夏の出来事を思い返す。

　最初に見た絵はネコフェスに行って移動遊園地の観覧車に乗った時のもの。
（あの観覧車、見つめ合わないと出られないって言われてちょっと恥ずかしかったなぁ）
　メイン会場の寝子ヶ浜海岸の一角にある移動遊園地に友達と行ったはいいが、ハイレグ衣装に仮面にシルクハットなマジシャンじみた格好の女主人にそう言われた時はドキドキした。
　あの時の恥じらいは、今でも覚えている。思い出すと気恥ずかしくなった。

　次は季節外れの夜桜を見に行った時のスケッチ。
（あの風景はすごかったなぁ。咲く季節が全然違う花が満開ですごく幻想的だった）
　これでもかと言うほどに存在感を感じる満開の巨大な桜の木は、この世のものとは思えない程だった。
　あまりにも衝撃的だったので、桜の木を見なくてもスケッチブックに描くことができた。
　桜だけでなく、様々な花が咲いていたっけ、とあの夜の出来事を思い出す。
　スケッチブックには、時季外れの桜が細部まで描かれていた。
（こっちはいつもの秘密の場所で描いたスケッチ、こっちは星幽塔で依頼を受けた時のもの）
　手提げ鞄に筆談用スケッチブックと鉛筆を入れ持ち歩いているので思い出に残るような風景、建物をスケッチすることも。
　そうしているうちに、残りのページがわずかになることも。
　
　こうしてみると、海の今年の夏もいろいろとあったようだ。
（来年の夏も、いっぱい思い出ができるといいな）
　広げたスケッチブックをパタンと閉じ、海はそれらを片づけた。

このページにイラストを設定する