夏の終わりに｜リアクション

夏の終わりに

●寝子電に乗って散策を

　寝子電で移動しながら、夏夜は窓から見える風景を眺めたり。
　各地域の駅で降りては、散策と称し、いろいろなところを巡り歩く。
　星ヶ丘を、シーサイドタウンを、旧市街を夏夜用のデジカメを手に、時に写真撮影をしたり、時に巡ったり。
　そんな出来事を、夏夜は夏朝に伝えるべく手帳にメモとして残す。
（こうしておけば……夏朝が誰かと話をするときに困らないからね）

　星ヶ丘を散策中、七夜あおいと待ち合わせをしている八神修に出会った。
「八神君、大きな荷物だね……どこかに出かけるの？」
「ああ、あおいと天宵川に行くんだ。そろそろ来る頃だと思うけど」
　お邪魔しちゃ悪いね……とその場を離れようとした時、荷物を持ったあおいが修の元に駆け寄った。
「修君、待った？」
「俺も今、着いたところだから。じゃあ、行こうか」
「気を付けてね……」
　そう言って、夏夜は修達と別れた。
　２人の姿が見えなくなるとメモに『八神君が七夜さんと星ヶ丘で待ち合わせて天宵川におでかけ』と記す。
「この話題……出るかもしれないからメモしておこう」

　シーサイドタウンを散策中、慌てて移動中の女の人とぶつかった。
「大丈夫……？」
　ぶつかった衝撃で尻餅をついたのは、アルバイトをしているファミレスに急いで向かっていた森篠琳子。
「大丈夫よ」
　夏朝に手を貸してもらい立ち上がった琳子は服についた汚れを払うと「急いでいるから」と走ってその場を去った。
（間に合うかしら……）
　時間を気にしつつ、琳子は走ってアルバイト先へ。

　その他にも、キャットロードで珍しいものを見つけた。シーサイドタウンで美味しいものを食べた。
　などといった出来事をメモに記す。
　些細な出来事でも、夏朝は夏夜が表に出ていることを思い出せない。
（後で交換日記には書くつもりだけど……僕自身も、忘れないように……）
　メモ帳は夏夜が体験したことを記す貴重なアイテムだ。
　星ヶ丘でウィンドウショッピングを、寝子ヶ浜海岸を歩いたり、旧市街のレトロな雰囲気を楽しんだり。
　夏朝と一緒だったら、もっと楽しいだろうなと思いつつ、夏夜は散策を続ける。

　寝子電であちこち巡り歩き終えたのは、お昼頃だった。
「次は九夜山を登ってみようかな……」
　そう思い立ったので、ロープウェイで登るか、自分の足で登るか。どっちにしようか考える。
　考えた結果、時間がかかっても自分の足で九夜山を登ることに決めた。
「自力で登ってこその登山だからね……頑張ろう」