夏の終わりに｜リアクション

夏の終わりに

●陸上部の朝練

　寝子高に着いた頃には、椎井莉鳥は汗をかいていた。
　涼しいとはいえ、走って学校まで来たのだから多少の汗はかく。
　急いで更衣室に入ると、バッグから汗拭き用タオルを取り出して額に滲む汗を拭く。
　タオル、水分補給用のスポーツドリンクといった必要なものを取り出し、着替えといった必要なもの以外はロッカーに入れてグラウンドへ。

　グラウンドには、陸上部員が顧問の浅井幸太先生が部員達を囲むようにして集合していた。
「浅井先生、おはようございます」
「おはよう、椎井。ミーティング始めるぞ。早く来い」
「はい」
　朝練参加の部員が全員揃ったのを確認した浅井先生から注意事項などを聞いた後、部員達はストレッチや走り込みなどを行う。

　走り込みを終えた莉鳥は、走り高跳びの練習を。
　助走はリズムよく、リラックスして。
　斜めに助走を取り、膝を曲げずに真っ直ぐにして高く跳ぼう意識してジャンプ。
　練習中、莉鳥は後輩にすごい、と言われるほど、とても綺麗なフォームで何度も空を翔んでいた。
（空が青いわね……）
　着地後、何度もマットの上から空を見ていた。
　何度も何度も助走の仕方、踏み込みの位置を確認したり、タイミングを計ったりしながら何度か飛ぶが、妙に気に入らない点が。
「そういう時は、一旦やめるのも練習のうちね」
　自分の練習を一旦やめ、後輩の面倒も見ることに。
「その前に水分補給をしてください、先輩」
　そう言って後輩がドリンクを出しだす。
「ありがとう」
　早朝練習は午前中や昼間に比べると若干涼しいが、まめに水分補給をしないと熱中症になることもある。

　後輩にも水分を取って熱中症にならないように、と注意し、少し休憩してから練習再開。
　そしてまた、莉鳥は宙を舞う。
「だいぶ上達したようだな、椎井」
　マットから降りようとする莉鳥に浅井先生はそう言うが、納得がいく跳び方ではなかった。
「上達、したと思っていいんですか？」
「ああ、上達した。練習の賜物だな。練習するのはいいが、あまり根を詰めるなよ」
　そう言うと、浅井先生は他の部員の練習を見に行った。

　朝練の時間が終わったので、部員たちはハードルや走り高跳びのバーといった用具の後片付けを。
　それらが終わると、更衣室で着替え、学校を後にした。
「今日は珍しく涼しかったから、練習に集中することができたわ」
　明日の練習には納得いくような跳び方をするわ、と意気込む莉鳥だった。

　帰りは別のＴシャツとショートパンツに着替え、寝子高に来た時同様、走って帰っていった。

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