【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で｜リアクション

【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で

　個人サークルとして愛猫萌々子はネコミケに初めて参加した。制服姿で頭部には被り物をしている。今回の商品となる二冊の同人誌の主人公、野音のんこのコスプレであった。
　萌々子は陽気な鼻歌で商品を並べていく。他のサークルに倣って見本も用意した。
　――このようなディスプレイで良いと思います。二冊の同人誌の出来には自信があります。のんこの魅力を十分に伝えられていると思うので。
「楽しみだね！」
　やや震える声で自身に活を入れる。折り畳まれていた椅子を開いて座った。不自然に身体が揺れる。頭を四方に動かした。
　――他のサークルの方々を見ると、売り物は同人誌だけではないのですね。クッションや小物も色々とあるようです。のんこのアクリルキーホルダーを作製してもよかったかもしれません。
　萌々子は急に立ち上がった。両腕を左右に振って身体を捩じる。その場で足踏みを始めた。

　両腕を広げた状態で走り出す。ぶーん、と無邪気に口にした。
　次第に動きが軽くなってきた。そこに怒涛の流れが押し寄せる。先頭の人々は思い思いの方向に別れた。
　萌々子の本に興味を覚えた者達が立ち止まる。誰かを探すように頻りに顔を動かした。
　――私のところにも人が！？
　内心で驚きつつ、元気に走り込む。
「ぱっしょーん！　のんこのコスしてます、作者のあぃびぃでーす！　どちらの見本も、のんこちゃんが大活躍するよ！　気に入ったら購入よろしくね！」
　弾ける声で初めての接客に臨んだ。