生き残るのは誰だ！　アンチ納涼がまん大会！｜リアクション

生き残るのは誰だ！　アンチ納涼がまん大会！

「ルールは簡単、最後まで生き残った者が勝者！　補足として、部屋を出たら負け！　目の前にある冷たぁ～い水を飲んだら負け！　出されたものは食べること！　突発イベントはクリアすること！　部屋の温度はどんどん上がるから覚悟しろ！　三十分に一回の脱衣タイムに脱いだ者は熱湯入浴をしてもらう！　以上だぁ！」

「ちょっとちょっと！　れんちゃんは極楽部屋!?　望月くんも水着一枚でそれってルール違反……え？　司会!?　救護係!?　参加しろよー！　うわぁん！」
　高梨煉と宇佐見望月、二人の親友の姿は戦場になく、たった一人の戦いを強いられた志波武道の叫びがこだまする。
「武道ちゃん、今日は脱いだら負けだからな？　脱ぐなよ～？　いや、負けたいならいいけどな」
望月は軽く武道を煽ってみる。それに武道はにたりと不敵に笑って返した。
「俺だっていつも脱いでる……わけだけど、ガマンできるときはできるんだぜーい！」
これを決め台詞と受け取ったのか、理事長はじめとする極楽部屋の面々が、武道に手を振り、拍手を送る。その中にはもちろん、涼しい顔で笑顔を見せる煉の姿もあった。女性ばかりの極楽部屋で、長身の煉の姿はひときわ目立つ。武道は半ばやけ気味に、遠く離れた親友にぶんぶんと手を振った。
「理事長も楽しいこと考えるよなァ。キライジャナイゼ！」
今はまだ、この戦いがどういう結果を迎えるのか彼はまだ知らない。

　さて、先ほど登場した霧生深雪と八神修の出場経緯を語ろう。
　まったく、こいつにはかなわない、と、どてらにくるまれたまま修は隣の白い顔の親友を見る。深雪はつつも事件で肩を打たれ、他にもけがを負っている。痛みと腫れがひびいて、まだ物を持つのも不自由なはずだ。何かあったら手助けはしてやらなければと、このひとつ年上で意地っ張りの親友を見て修は思った。
そもそもは、修は理事長の豪邸を見るいい機会だと、極楽部屋の観戦者としてここに来るはずだったのだ。

「は？　がまん大会？　なんだそりゃ、意味わかんねぇ。参加するのはよほどの暇人だな」
そのつもりであることを話すと、深雪はばっさりと切って捨てるような返答をよこした。そのように言われると何か悔しくて、修はつい言い返す。
「そんなこと言って、自信がないんだろう。暑さは意外に堪えるからな」
「なんだと。シュウこそ五分でひっくり返って終わりだろ」
「いいんだぜ、無理しなくても。ミユには戦わずして勝ったわけだ。お大事に、な」
修は傷ついた深雪の方をそっと叩き、ふふんと笑う。それが深雪の負けん気に油をなみなみと注いだ上に、火を投げ込んだ。
「よく言った。けががあっても俺のが体力あるからな！」
「ふふん。少しずつ鍛えてるし、簡単には負けないぞ。首から下は役立たずなんて言われはしない」
二人は身を乗り出し、視線を激突させる。
「負けた奴は、買った奴の言うこと一日聞く！　これでどうだ！」
「受けて立つ！」

　ああこれこそが青春かな、意地の張り合いから後には引けなくなった深雪と修、二人の少年はどちらも出るつもりはなかったはずのがまん大会で、結果こうして張り合って汗を流しているのである。
「ああおもしろい。かわいいわね、どうせ意地の張り合いかなんかで来ちゃったんでしょうねえ」
あずさはそんな二人を見てころころと笑っている。片や色白で線の細い芸術科の少年、片や体を動かすよりはいかにも勉強の方が得意そうな優等生、どう考えたってがまん大会に立候補しそうなタイプではない。あずさの読みはどんぴしゃだった。