シエスタ・フェスタ！｜リアクション

シエスタ・フェスタ！

　その頃ブラインドゲームを終えたピクニック組は、再びのんびりと日陰でおやつタイムである。
　ふたつのグループは合体して、みんなでお菓子を交換して――ちょっとした遠足気分だった。
　そして話題はやはり野々ののこのチョコバナナに。
「ぶっは、こんなクソ暑いのにチョコバナナとかさすが野々だな！」
「ちょっと六月一日宮くん、あんまり笑ったら可哀相だよ。
　えっと野々さん、クッキー食べる？」
「うう、望春君ありがとう……」
「……チョコバナナ、悪くないよ」
「神無ちゃん、わーい！」
　六月一日宮檸檬がののこをからかい、望月神無が彼女を（というよりはチョコレート）なぐさめている。
　微笑ましい、姿なのだろう。
　八神修は懸命にののこに視線を向けた。
「この凍ったプリン、かなりイケますね！」
「そうだよな。この暑さに効く」
　御陵春哉が修のプリンを気に入ったらしく、同じくプリンを食べている干車止と盛り上がっていた。
「甘いものばかりだったので、サンドイッチが嬉しいですね」
「そうですね。おにぎりまで……私には贅沢過ぎます」
　綾辻綾花と森蓮は口直し（？）に炭水化物を取る。冷やすものをそれぞれがしっかり用意していたおかげで、今でも傷んだ様子はない。
　まだまだ食物が残る中修が手を伸ばすのは、やはり七夜あおいの作ったクッキー。
「ん、おいしいな」
「……ありがとう」
　あおいも自分が作ったクッキーを頬張りながら小さく頭を動かした。　
「あ、ちょっといいかい？」
「え、う、うん」
　その仕草がとてもかわいらしく見えて。
　修はデジカメを構えた。
　ファインダー越しでようやくあおいを直視する。
　首筋を伝う玉になった汗に大きく心臓が鼓動する。　
「!?」
「どうですどうですひんやりでしょう！」
　その隣で、望春に春哉が悪戯を仕掛けた。首筋に、保冷剤を巻いたタオルを当てたのだ。
「み、御陵さん……！」
　望春は恥ずかしそうに首を押さえる。
「This is ラブコメ」
　そのふたりを指さして神無が無表情に言い放った。
「相変わらず妬けるぜっとひゅーひゅー」
　対して全力で騒ぎ立てる檸檬。
　仲がいいのか悪いのか。絶妙な緩急のついたツッコミに等の本人たちは慌てふためくことしかできない。
「ちょ、からかうのはやめてよ望月さん。六月一日宮君まで」
「あっ何ですお二人ともからかわないでくださいー！」
　その様を微笑ましく思いながら、改めて修はファインダーを覗いた。
　が、彼ら四人は騒ぎすぎてしまったようだ。
　神魂は無情にも静寂を求め、まず最初に春哉が転んだ。
　春哉が転べば、目の前に居る望春に抱きつくことになる。
　望春は突然抱きつかれて、慌てて手を激しくばたつかせる。
　ばたつかせた手は檸檬の腕を掴み、檸檬は神無に手を伸ばし――。
　けれど努力むなしくそのまま崩れていった四人の先にはあおいが居る。
　修は助けようにも、彼の反射神経ではどうすることもできず、五人は見事ドミノ倒し状態になるのであった。
「大丈夫か？」
　急いであおいの元に駆け寄ると、あろうことかあおいのシャツの肩部分が滑り落ちて、白い素肌が覗いている。
　そしてその奥には下着がチラリ。
「な、」
　こうしてシャッターを切る前に、修の視界がフラッシュアウトした。