シエスタ・フェスタ！｜リアクション

シエスタ・フェスタ！

●旧市街の片隅は

　ネタはないのだ、ネタは！？
　後木真央は目を皿のようにして……というよりはどちらかというと猫のように細めてあちこちを見て回る。
　今日はお猫様も見当たらないし、これといったネタもない。
　ショボンと肩を落として、耳に入ってきたのは、
「うなー……スイカメロンソーダアイスバーで口直しなのよー…」
　という言葉。
　それっていったいどんな味なのだ？
　それになんだか聞き覚えのある声なのだ！
　面白いネタを見つけた時さながらの動きで、真央は声のする方に向かっていった。
「あのリア充は潰していいかい？」
　次にも聞き覚えの――逆巻天野だ。
　ということは隣に居るのはやはり真辺伸幸であった。プールでチャプチャプ気持ちよさそうである。
　そして天野が苛立っているのは、この馬鹿みたいに暑い中、手を繋いで「ヤダ、そんな見られちゃうよ……」とか「何言ってんだよ、見たい奴は見とけばいいのさ」とか言っているあの生き物に対してなのだろう。
「それにしても君は変なものが好きだね、」
「変じゃ無いのよ美味しいのよー？」
　と、そんなバカップルはどうでもいいのである。
　真央が気になるのは、あのアイスクリームの味なのだから。
「天野ちゃん伸幸ちゃんこんにちはなのだ！　そのアイスクリームの味を教えて欲しいのだ！」
「ぬぬ、後木さんこんにちはー」
「後木か、アイスが気になるの？」
「そうなのだ！　初めて見る味できになるのだ。どんな味なのだ？」
　ついでにわさび味なるものの感想も教えてもらって、真央は満足気にお礼を述べた。
「そういえばそろそろスイカの時期なのだ。お手伝いしたら食べてもいいのだ？」
　彼らが住む猫鳴館は自給自足に近い生活を送っている。当然畑もあるわけで、だったらスイカが食べたいな、ということである。
「手伝ってくれるなら、いいんじゃない？」
「お手伝いするのだ！」
　約束だけ取り付けて立ち去ろうとしたのだが、天野が思い出したように伸幸に話しかけるので、真央も、もうすこし駄菓子屋で涼むことに。
「そういえば君の言うリア充ってたとえばどんなの？」
「リア充？ぬー……毎日がハッピー！みたいな感じかねぇ
　あ、後木さんみたいな感じかなー」
「おお！　真央ちゃんもリア充の仲間入りなのだ！！」
　わーいと真央は手を伸ばす。
「そしてリア充さんは潰しちゃダメなのよー」
　と、今度は伸幸が思い出したらしい。
　天野に向かってチョップを繰り出した。
　時間差ツッコミなんて、新しいのだ。しっかりと写真に収めてメモを取った。