シエスタ・フェスタ！｜リアクション

シエスタ・フェスタ！

●旧市街の片隅では

　真辺伸幸が自身の足の動きに合わせて跳ねる飛沫を眺めていると、逆巻天野が薄く笑みを浮かべた。
「きっと今頃、遊んでいる奴らがいるのだろうな。君みたいにさ」
　相変わらず涼しげで、意地悪な笑顔だった。
　それを嫌だと思うことはないのだけれど、人聞きが悪いなと思う。
「ぬ？」
　抗議の意味も込めて、さらに激しく足をばたつかせた。
「遊んでないのよ……っぃ！」
　プールの中で足でぐるぐるちゃぷちゃぷしてただけー。
　そう続けようとしたが、天野の方が動きが早かった。
　分厚い参考書で思い切り叩かれた頭を抑えながら、伸幸は唇をツンと尖らせた。
「……防御する前に頭ーはたかれたけれどー」
「遊んでるからだよ」
「だから、遊んでたんじゃないってばー」
　楽しく言い合っていると今日も木刀を携え、御剣刀がやってくる。
「なんだ逆巻と真辺か。相変わらず仲がいいな」
　そういう刀は相変わらず目つきが悪い。
「なんだムッツリか。相変わらず目つきがいやらしいね」
　さらりと天野は挨拶を返し、刀がすかさず言い返――
「むっつりいう……ぐ！」
　そうとして、コケる。
　なにもないところで転ぶなんて珍しい。
「……じゃあな」
　よほどバツが悪いのか、刀はスタスタと去っていった。
「勉強しようか？」
……もうちょっとくらいお話していってくれればよかったのにと伸幸は思う。