＜零神探訪＞白の獄（ホワイト・プリズン）｜リアクション

＜零神探訪＞白の獄（ホワイト・プリズン）

●雪魔狼戦・６～白夜に立ち上る煙

　カーキー隊の全員がブルーとレッドの死骸の周りに集まって来た。
　魔物で、もちろん敵ではあるが、敬意を感じる相手であった。
　一行は二体の死骸を、仲間が沈んだクレバスに沈めた。
　そのままにしておいたら、いつか他の人間が死骸を見つけて驚かないとも限らないし、群れの仲間と一緒の方が魔物と言えども嬉しいだろうと思ったからだ。

　カーキー隊がブルーとレッドとの死闘を繰り広げている間に、ゴンザレス隊はかなり先へと進み、豆粒のようになっていた。
「俺たちも後を追おう」
　修はもっていた発煙筒で、「こちらは大丈夫だ」と合図を送る。
　一筋、天へと立ち上る煙はまるで、雪魔狼たちの魂を弔う狼煙のようでもあった。

　真はユチェンに抱き着いて言った。
「あぁ怖かったわぁユチェンさん慰めてぇ」
「怖かった、なんて、ウソだろ？　真さん、強いもの」
　見透かされてる。
　真は舌を出して笑い、抱き着く腕にさらに力を籠める。
「もう、せっかく甘えてんねんから抱きしめかえしてくれてもええんやで」
「真さん、オレで、あったまってるだけでしょ？」
　揶揄われている、と赤くなるユチェンだったが、真は半分本気だった。
「だってユチェンさん、これが終わったらおらんなる可能性もあるやんな。帰るんやろあの子のとこ」
「そ、それは……」
　そのつもりだ、と、ユチェンの黒い瞳が揺れる。
　強くなりたいのは、好きな女の子を守りたいから。
　だからユチェンは、この冒険が終わったら住んでいた街に帰るつもりでいる。
「さみしぃわぁ」
　真は甘えた声で言った。
　ユチェンは「まだ、もっと、強くなりたい、から、いるよ」としどろもどろに言った。

　ユチェンの肩越しに北極の白っぽい空を見上げ、真は思う。

（せやけど……こうやって強なったユチェンさんはあの子をどう救うつもりなんやろなぁ。スッゴい近くで見てみたいわぁ）

　時刻はそろそろ夕方と言ってもいいはずだが、空は真昼のように明るい。
　白夜だ。