見渡す限りの氷の世界。空は淡いホライズンブルー。地平線近く、滲む太陽。
屋敷野 梢は真っ白な息を吐いて、相棒の
如月 庚の腕を掴んだ。
「わあ……見てください如月君。見渡す限り白です! 氷です! 北極です!」
「……マジかよ」
――何が起こっているか説明しよう。
あれは、
『月に喚ばれし悪魔の群』襲撃事件からしばらく経った暑い夏の日のこと。
千年茨の遺跡に挑んだ少年少女たちは、蝉の輪唱もかしましい真夏の落神神社に呼び出されていた。
呼び出したのは、白猫のらっかみ・
ミラである。
「みなさん聞いてください。北極がいま《時の特異点》になっています」
《時の特異点》とは、世界の未来を左右する、時間的場所的ポイントのことだ。ミラの能力<かみさまフューチャー>は、未来を予知し、この時の特異点を発見することができるのだった。
先にミラから話を聞いていたというR&R Agencyのボス・
坂内 梨香が、ネット記事をプリントアウトした資料を皆に配る。
――
北極の湖に沈む謎の女性!?
そんなタイトルがついている。
記事には写真が二枚添えられていた。
一枚目は真っ白な景色の中に、ほぼ真円の水色の湖が映っている。
湖の中央部分が赤く囲まれており、二枚目の写真はその部分を拡大で映した写真だ。
長い黒髪を扇のように広げた女性が、湖の中に横たわっているように見える。
それを見た梢は思わず首を傾げた。
「四十九院先生?」
そう。写真に写るその女性は、
四十九院 鸞にとてもよく似ていたのだ。
「ここ数日オカルト系サイトでちょっとだけ話題になってたの。
北極ルートを飛行する飛行機が偶然撮影したらしくて、
ネット上では大昔に生贄にされた女性のミイラじゃないかとか、
コールドスリープ中のエイリアンじゃないかとか言われていたけれど、
あまりに四十九院鸞先生に似すぎでしょう?
丁度、ミラから北極の話が出て、関係あるはず、ってピンときたわ。
この写真をミラに見せたら、案の定、こここそ《時の特異点》だって言ってね」
「私も、未来のすべてが分かるわけではありません。
ただ、北極の湖と
四十九院 鸞さまの姿が重なるようなイメージが見えます。
それから、赤い小函を持ったみなさんが」
ミラは何処か遠くを見つめるように青い瞳を瞬かせた。
「鸞さまとみなさまが《時の特異点》を訪れることで未来が変わります。
絶神に対して、打てる手が変わってくる……私に分かるのはそれだけなのですが……。
私は、テオさまやののこさまやみなさんを、未来を、守りたいのです」
ミラの言葉に梨香は肩を竦める。
「乗りかかった船ってやつね。幸い
R&R Agencyは『オカルト調査会社』。
ミラからの調査依頼、仕事として引き受けたのよ。
それと、この人も呼んだわ」
「どうして北極の湖に私に似た女性が横たわっているのかしらぁ? 気になりますわぁ」
真夏にも関わらず黒ずくめの
四十九院 鸞が姿を現す。
「私、自分のことをもっと知りたいと思ってますのよぉ? 私って
クローネとやらの生まれ変わりらしいですけど、これっぽっちも、自分だという実感がないんですもの。私が本当はどういう存在か。その謎が解けるかもしれないというなら、北極まで行くのもやぶさかではありませんわぁ」
「もちろんオレもいく」
かねてから行動をともにする
申 雨晨(ユチェン)も、胸の前で両手を合わせる。
「しかし……北極にはどうやって行く?」
庚が訊ねると、ミラは落神神社に戻ってきたご神体の零神像を尾で指した。
「あの像の力を借ります」
「前に中国に飛ばされたときと同じってことですね」
梢が言うと、ミラはこくと頷く。
梨香が、パンパンと手を打って解散を告げた。
「じゃあ、準備をして明日同じ時間にここに集合ね」
そんなわけで、一行は今、北極にいる。
「じゃ、行きましょかね」「……ああ」
それぞれが、氷の上に踏み出す。一歩を。
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
如月 庚さん、屋敷野 梢さん、ガイドにご登場いただきありがとうございます。
ご参加いただける場合は、ガイドの内容に囚われずご自由にアクションをおかけください。
<零神探訪>(ぜろかみ・たんぼう)シリーズ第4話。
このシリーズは、冒険やバトルや旅をしながら、
寝子暦ゼロ年の落神や伝説、零神の宝について調査するシリーズです。
今回は、ホワイトシナリオ、セカンドシーズン第2話
「月に喚ばれし悪魔の群と、とある落神の願い」(阿瀬春マスター)ともリンクして話が進みます。
こちらのおしらせにある
<ホワイトシナリオかんたんまとめ(関連シナリオ、ミラちゃん情報も含む)>も
ぜひご覧くださいませ。
ここまであらすじ(ホワイトシナリオ情報含む)
盗まれた零神像の行方を求め、神魂の影響(?)で中国へ飛ばされた一行。
紅燈火街、青の幽玄と冒険を重ね、零神像の左半身を入手したのち、
またまた神魂に飛ばされて今度はユチェンもいっしょに寝子島に戻ってきた。
寝子島では四十九院先生が片腕の黒衣の男に連れ去られる事件が起こる。
さまざまな調査の末、一行は鈴島にある緑の茨に包まれた『千年茨の遺跡』へ向かう。
絶神のもれいびであったクロードを倒し、零神像を取り戻して落神神社に戻した一行。
しかし、月に封印されていた絶神は力を取り戻しつつあり、
地球へ魔界の悪魔、魔物、モンスターなど危険な連中を送り込みはじめた。
◇第1話「<零神探訪>紅燈火街(レッドランタン・タウン)」
◇第2話「<零神探訪>青の幽玄(ブルー・アルカディア)」
◇第3話「<零神探訪>千年茨の遺跡(グリーン・ルインズ)」
◇第4話 このシナリオです。
概要
ミラの依頼により、北極へ向かうことになった一行。
ミラによると、北極が今『時の特異点』になっているそう。
北極の湖とそこに横たわる女性らしきものを調査することと、
ミラ&四十九院 鸞の護衛が、今回の任務である。
◇あなたの立場
R&Rエージェントの場合…アクション冒頭に【R&R】とお書きください。
一定の報酬が支払われます。
とくにアクションに書かなくても支給されたイヤホン型通信機器と、
エージェント間ホットラインで個別&グループで連絡を取り合えます。
そのほか………………………エージェントと連携をとってもよし、とらなくてもよし。
R&Rと対等な関係で協力しあうグループや個人。
今回からご参加の方…………R&Rの依頼で参加、噂を聞きつけて、巻き込まれて、など。
※このシリーズを通して、言葉は(神魂の影響で)だいたい通じます。
※このシリーズに参加していても、(神魂の影響で時空が歪んでいるので)
他のシナリオに問題なくご参加いただけます。
※R&R Agencyはシーサイドタウンにあるオカルト調査会社で、
超常現象に理解があるひと・もれいび・ほしびとさんたちを
エージェントとして雇って事件の調査・解決をしています。
より詳しい情報はこちら
冒険の舞台「北極」について
北極は、極寒の北の海に浮かぶ巨大な海氷です。
8月は夏で、日中の平均気温は0度~-10度ほどで北海道の冬程度です。
この時期は、1日のほとんどの時間が昼でほぼ白夜です。
突如出現した円い湖は、北極点から少し外れたところにあります。
みなさんは、目標地点から約1キロのところに転移しました。
目標地点は目視できます。
ごつごつした場所もあるので、徒歩で目的地まで行きます。
しかし夏の北極の氷上は冬より危険です。
海氷が薄くなっている箇所があり、割れたり動いたりすることもあるからです。
しかも、こちらの動きを察知した絶神が魔物を送り込んできました。
魔物たちに追われながらの危険な行軍となります。
魔物を退け、湖にたどり着き、必要な情報を入手できるかどうかは皆さん次第です。
<敵情報>
白熊悪魔ポウラス……体長約2メートル。白熊によく似た魔物。
人語を介し、シルクハットを被り、二足歩行するが、
四足で獣のように走ることもできる。走る速度は時速40キロほど。
ユーモアのある性格だが、任務重視。
巨体とスピードをを生かした体当たりや手足の鋭い爪で切り裂くのが得意。
雪魔狼(ホワイト・ウルフ)……白い狼によく似た魔物。
5匹の群れで、群れのリーダー以外は人語を介さない。
リーダーは気難しく絶神に忠実。
基本的に群れで行動し、チームワークよく襲い掛かってくる。
白い氷の上では目立ちにくい。
※魔物が現れることはプレイヤー情報ですが
何度も死線を潜り抜けてきたみなさんですから、
どうせ一筋縄ではいかないだろうといろいろと準備していくでしょう。
自分たちが赤いポイントに転移してきてまもなく、魔物たちも現れます。
アクションについて
行動を以下のA~Cから1つ選んでアクション冒頭にお書きください。
【A】白熊悪魔ポウラスと対峙する
【B】雪魔狼(ホワイト・ウルフ)と対峙する
【C】その他
準備などの前後の行動もどうぞお書きください。
<服装>
要防寒対策です。
ソリと防寒具、通信機はR&Rでも用意します。
特にアクションで指定がなかった場合は、
エスキモーのような動物の毛皮で作られた防寒具姿で描写します。
<持ち物>
基本的には本人が持っていておかしくない持ち物・入手可能なもの。
これまでのシリーズで手に入れた武器・アイテムは使用可能です。
寝子島で、なにか入手しておいてもOKです。(マスタリングする場合もあります)
ただし、星幽塔産の武器は持ち込めません。
<動物>
今回、犬などの動物を一緒に連れていくことができます。
飼っているペットでも、ろっこんで呼び出した動物でも、
知り合いに頼み込んで借りたワンちゃんでも。犬ぞりしたい方はぜひ。
<ろっこん>
ユチェンや四十九院先生はひとですが、
ろっこんに理解を示しているため、
彼らがいることによって使用が制限されることはありません。
登場NPC・アイテム情報
坂内 梨香:R&R Agencyのボスで鈴島海賊の子孫。
鈴島海賊の玉手箱を持っていきます。
今回の仕事は調査なので、目的重視で、悪魔との戦いには参加しません。
リンコ・ヘミングウェイ:R&R Agencyの調査員。
梨香の相棒。今回は寝子島で留守番です。
ユチェン:
チャイナ服で、黒く長い三つ編みを後ろに垂らした、11才の少年。
ナイフの腕上達中。糸の付いた投げナイフも使えるようになりました。
魔物が現れたら、より強そうなポウラスに挑もうとします。
四十九院 鸞:
炎に飛び込んだクローネが再生した姿。クローネの頃の記憶はおぼろげで、自分と思えない状況。
黒ずくめの毛皮のコートでお化粧もばっちりお洒落をしていますが、北極に着いた途端、
「寒すぎる」「もう帰りたい」「動きたくない」「お腹空いた」とゴネまくります。
なだめすかして連れて行ってやってください。
ミラ:
みんなのナビゲーター役を買って出ます。
でも真っ白なので景色の中に紛れて「どこ行った!?」となりがちです。
【アイテム】鈴島海賊の玉手箱
美しい細工の赤い小函。
「玉手箱の中に入っているのは本当は『時』なんだよ」
「鈴島海賊の玉手箱は三人で開けるんだよ」(旧市街 花森妙おばあちゃん談)
それではご参加お待ちしております!