緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

「さぁ、こっちよ！」
　岬が囮に合流し、松葉杖に結んだ包丁で蔦を払う。足に結びつけた包丁で雑草も刈り、あまり立ち回れないにしろ時間を稼ぐ。具現化した刀が消えた為蔦払いに専念していた櫻が岬の死角をカバーし、ひびきも素早く草を刈り取って足場の不安を無くしていく。真央が周りを走って蔦の気を引けば、合わせて月乃も斧をふるって応戦する。
　二人が勢いよく迫った蔦を払ったことで無防備となった捕虫器へ突撃する没。触れて念じる先は、ドラム缶風呂の近くにあるスペース。
「たぶん、いけるさね！」
　次の瞬間、ウツボカズラと没はドラム缶風呂の真後ろへと移動していた。どうやら、うまくいったらしい。囮をしていた者の一部は再びウツボカズラが裏庭菜園へと行かぬよう、封鎖するように動いた。そして天野は物陰に隠れ、魔法陣の準備を始めようとした。
　一方、修やひびきを始めとする数名は『塩玉』をウツボカズラへ投入しようとするが、蔦で払われてしまう。囮を相手に立ち回っていても、わかるらしい。しかし、ここで活躍したのは猫鳴館の屋根に登ったマウルだった。
　彼は気合と共にブーメランを投げる。そして絶妙なタイミングで修が『塩玉』を投げた。マウルが息を止めればブーメランから右腕が生え、『塩玉』を受け止め、流れるように捕虫器へと投げ入れた。
（よしっ）
　手応えを感じたマウルは内心で拳を握り、戻ってきたブーメランを受け取る。それを見たひびきもまた手を挙げ、今度は彼女が投げた『塩玉』を捕虫器目掛け投げ入れる。
「これはいい手だな……」
　修がぽつりとつぶやいて振り返ったその時……実に悪い顔をした骨削瓢と花風冴来が姿を現した。

「そろそろ頃合かねぃ？」
「参りましょうか、可愛い瓢」
　ウツボカズラや雑草に集中していた面々は、急に現れた２人に少し驚く。が、何だか嫌な予感がしてならなかった。
「……何を考えているかは知らんが、無茶はするなよ？」
　士が釘をさすも、瓢はけらけら笑いながら動きを止めたウツボカズラに歩み寄る。本当は地下帝国へと誘導したかったのだが、人が多かったのもあって実行できず、結局暴走してみる事にしたらしい。瓢が小さめのポリタンクを手に進めばクロウディアが前に立ちふさがる。
「！　何をするつもりだ」
「何って、爆発させるのよ。これでウツボカズラもお陀仏だわっ！」
　冴来がうふふ、と笑いながら言い放つ。そしてどこからともなくマッチを取り出した。
「子羊を盗んで絞首刑になるなら、親羊を盗んで絞首刑になる方がましなのよ！　派手にやらせてもらうわっ！」
　本当は彼女に厄災をもたらし続ける（らしい）与作像（雨宮校長に似ているらしい）も一緒に吹っ飛ばしたかったのだが、何故か見つからなかった。その為ウツボカズラだけとなったのは内心口惜しいものの、日頃の憂さを晴らす為にもやりたいらしい。
「多少の被害は目をつぶると言った。けれどそれは見過ごせん」
士も駆け寄るものの、冴来はマッチを高々と掲げてそれを交わす。クロウディアも瓢からポリタンクを奪おうとするが瓢はふらふら飄々とそれをかわしてウツボカズラへと突進する！
「瓢、これを！」
　冴来が士の隙をついてマッチを投げたとき、殺気を感じてウツボカズラが蔦をより激しく振り回し、近くにいた者をなぎ払う。転んでしまった岬を起こそうとしたひびきだが、２人とも蔦に囚われてしまった。マッチも飛ばされるも、冴来はまだまだ、というような顔で複数のマッチやライターを取り出して迫る。
「危ないわ！　下手したら猫鳴館が火事になってしまうわよ！」
　月乃が瓢の前に立ちふさがるも、瓢は負けじと押し返そうとする。
「危険だっていってもあっし、ネズミ騒動の時に館ふっ飛ばしてるしねぇ！　ここで消し炭にしちゃる、ウツボカズラ！」
　そう言う彼とポリタンクを奪おうとする月乃へとまとめて襲いかかる蔦。しかし、このタイミングをチャンスと捉えた岬は手を挙げ、修が頷く。
「パスよ、修ちゃん！」
「先輩……っ！」
　気が逸れたのが功を相した。修が投げた鞄もとい、『巨大塩玉』の紐はひびきがフォローして岬の手に収まり、召し上がれとばかりに捕虫器へと入れ込んだ。そして、勢いよく飛んでくるロケット花火。それに気を取られたのか、蔓は岬とひびきを解き放つ。そして――。

「穿て！」

　虚空を裂く圧縮された空気が捕虫器の１つを破壊する。そこに現れたのは……コートと三つ編みが特徴のテロリスト少年と、ロケット花火を武器として使う少年少女の姿だった。

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緑の進撃・猫鳴館の乱

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