緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

「君は、どうする？」
　その問いかけに没は小さい体をのびのび動かし、ウツボカズラに近づき、自分のろっこんが使えるか試してみる、と表現してみる。それで何がしたいのか解った天野は没に頷き、彼はちょこちょこと走っていった。
天野もまたリストバンドに隠していた鉄針を、手首のスナップを効かせて指の間に移動させる。そして空いた手には鎌。刀と庚が囚われた乙女３人を救出したのを見計らい、ウツボカズラの方へと駆けていく。襲いかかる蔦を鎌と鉄針で凌ぎ、その間を没が突っ走る。
「少しでも、寮から離そう。ドラム缶風呂の奥に女子風呂建設用に空きスペースがあった筈だから、そこがいい」
「任せるさね！」
　天野の言葉に頷いた没が、懐に潜り込み捕虫器へと触れようとする。しかし、すかさず蔓が没を襲い、ぺーいと跳ね飛ばしてしまった。
「うわぁっ！」
　囮がいるかな、と考えていた解理が没を受け止める。没は彼女に礼を述べると少し考えながらウツボカズラの周りをぐるぐる。ちょこまかと蔓を避けつつ、そつなく囮になっていた。
「大丈夫……みたいだね」
　天野もまた、どうにかすり抜けてもう一度鉄針を投げる。こうして自分に意識を向けることで誘導しよう、と思ったのだ。それに解理も続く。
「消化液と蔦は怖いが、距離をとっておけば大丈夫だろうな」
　そう言いながら彼女が跳ねると、襲いかかる消化液。それを辛うじて避けるも、白衣の裾が音を立てて溶ける。その強さに冷たい汗が額に浮かぶ。
（スパッツと中のタンクトップさえ無事なら問題ない！）
　彼女は不敵に笑い、ちょこんとかけた眼鏡を正した。そしてゴムが最長で５ｍは伸びるUボールを投げ、ぶち当てる事で気を引いたり、ちょこまかと周りを走ったりしはじめた。

「お、遅くなった」
「にゃふっ！　軍師様をお連れしたのだ！」
　ちょうどいいタイミングで修と真央が到着した。それに気づいた月乃達は彼らの元に集う。修は少し肩で息をしていたが、真央と共に塩と石鹸を入れた袋を幾つか取り出すと要点だけすぱっ、と言う。
「打撃であいつを弱らせ、これを捕虫器に入れてくれ。うまくいけば弱らせる事が出来るはずだ」
　普通の草なら５分で枯れると手早く説明し、協力を仰けば皆頷いてくれる。マウルは少し考えて修に２、３何か言うと猫鳴館の屋根へと登った。修は材料を紙袋に入れて『塩玉』と命名した物をもう少し作り始める。
「パターングリーン。現時刻をもって当該有害植物をカズランと認定呼称する。……なんてね？」
　そんな事を呟いたのは真央と途中で合流した天馬ひびき。彼女もまた修の発案に賛成し、まずは雑草を相手にする事にした。そこで倉庫へと行こうとしたのだが、運良く落ちている鎌を拾い、早速草刈りに精を出す。
「それなら、私はこっちね！　二人共、少し休んでて！」
　月乃は疲れを見せている刀と庚に下がるように言うと、斧を手にウツボカズラへと迫った。飴を口にしている間発動する彼女のろっこん『一粒入魂！』のおかげで身体能力は向上している為、そつなく蔓を避けて強力な一撃を見舞う。また、月乃を庇うようにクロウディアも立ち回り、囮となった面々の危機もカバーする。白い装甲はタングステンでできている。それ故に少し消化液を浴びても大丈夫だろう。そう思ったクロウディアは率先して前へ出る。そこへ博美もまた駆けてきた。
「避難もあらかた終わったし、俺も加勢するよ！」
「恩に着る！」
　博美は駆け出し、ウツボカズラへ向かってジャンプ。ろっこん『トンビの飛翔』で肘打ちをかまし、蔦が襲いかかってくる前に離れる。揺れた拍子に溢れた消化液が少し掠め、制服の裾が溶けたがまだ大丈夫だ。それに、絶妙なタイミングでクロウディアが間に入り鉈で蔦を切り落とした。
　囮組が誘おうとしている場所を、天野が指し示せば後から加わったメンバーもウツボカズラを挟むようにして畑に戻らぬよう、ドラム缶風呂の方へ行くように仕向ける。