緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

承：これからが僕らの戦闘だ！

（夜ならば、夜ならばこんなのに捕まらないのに……！）
　蔦に絡まれ、揺さぶられながら零葉は歯噛みしていた。あられもない姿を晒した事は彼女にとって、屈辱だったらしい。
「もう少しの辛抱だ！」
　庚が蔦を引き千切りながら迫る。が、ふと目が合う二人。そして気づく、零葉のショーツがちらりと見えた事に。
「っ！　ばっ、馬鹿！　エッチ！　見ないで助けてくださいぃ～！」
　同時に迫る蔓。吹っ飛ばされそうになるのをどうにか避けて庚は舌打ちする。
（今のは事故だろ！）
　運良く消化液が切れそうな蔓にかかり、嫌な音を立てて切れる。同時に落ちるのは凛。但し代償は大きかった。彼女の上着もボロボロで、これまたキュートなブラが穴から見えていた。これを直視してしまった刀はとりあえず目をそらして、凛に上着をかけてやる。
「うっはぁ！　セイシュン最こぅえっっぷ？！」
　一部始終をテンション高めに見ていた空音だが、蔓によって猫鳴館の壁に押し付けられる。そのまま消化液のたっぷり入った捕虫器へダイブしようとしていた。
「ってきゃーーっ？！　溺れる溺れる～！！」
　日頃の行いが悪いからなのか、彼女の衣服も相当ボロボロになっていた。
　因みに、裏庭菜園に面した猫鳴館の壁が一部凹んだ事を付け加えておこう。

（ん？　これはこれは……）
　ちょっと地下帝国に用事があり、赴いていた民谷鋭二だったが、彼は今、裏庭の物陰にいる。彼は安全圏と見定めたここで撮影をするつもりらしい。
　地下にいる時にねこったーで情報を見た鋭二はこのウツボカズラに興味を持ち、地上へと戻ってきた。そして見るなりぽつり。
「やっぱり、神魂の所為ですな」
　どうにか準備が出来たのか、次々にウツボカズラへと向かっていく寝子高生の姿をこっそーり目で追いながらくすくす笑う。彼自身は猫鳴館の寮生ではないので関係はないのだが、見ている分には面白そうだと思ったのだ。
（折角だし、この様子を撮影しておこう。何かに使えるかもしれないからな）
　そういって写真に収めたのは、消化液で衣服がボロボロになった凛と零葉、何故か頭から捕虫器につっこもうという体制になった空音、そんな彼女を引っこ抜く庚とどうにか蔦を払っている刀の姿等だった。

「よしっ！」
　掛け声と共に引っこ抜かれる空音。先に助け出された凛と零葉はとりあえず近くの物陰に隠れている。
「……これでコイツに集中できるか」
　刀の呟きに庚は頷く。とりあえず目を回している空音に関しては様子を見ていた士が「彼女たちの服はどうするか……」と考えながら引っ張っていったのだった。
（……もしもの時は、大雪か酸性雨でも降らせるか？　いやそれだと畑が危ない）
　介抱を女子に頼み、そうしながらも自分が出来る事を模索する士。ふと考えたのは強風を起こし、カマイタチを発生させて草を刈る事ができないか、という物だった。試しに深呼吸をし、指を３回鳴らしてみる。しかし、あたりをちょっと強い風が吹いただけでカマイタチは発生しなかった。
「無理だったか」
　少しがっかりした士だったが、気を取り直して出来る事を探していると、博美が彼を呼んでいた。どうやら避難誘導を手伝って欲しいらしい。士は一つ頷いて博美の方へと走っていった。

　少し離れていた間にも、騒動は大きくなっていた。そしてウツボカズラも少し大きくなった気がする。それに逆巻天野は内心でため息を吐いた。伸幸と櫻が必死に草を刈ってはいるが、まだまだ触手化した雑草はのびのび動いている。
「～♪　～♪」
　足元では小柄な神出鬼没がぴょこん、と楽しそうにしている。彼は天野に呼び出されここへ急行してきたのだが、ウツボカズラの動きが楽しいらしい。