緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

　猫鳴館・大部屋。先ほど実際に飲まれた真辺伸幸は巨大ウツボカズラの事を報告しようとそこを訪れていた。
「どうしたんだ？」
　猫鳴館の自治会員である奈良橋博美が珍しく慌てた様子の伸幸に声をかける。それで気づいたのか、自治会長の邪衣士も現れる。
「緊急事態か？」
「ぬん、菜園に巨大ウツボカズラで触手なのよ～。溶けるから気をつけてねぇ」
「……もしかしてあれ？」
　そう言ったのは窓を見た藤堂月乃。読書中だったらしい本が床に落ち、それを拾ったマウル・赤城・スティックや丁度お茶を飲んでいた美崎岬と伊賀解理、友人を訪ねてきたクロウディア・Wも驚きを隠せなかった。
「あら！　やっぱり原因は神魂なのかしら？　なんでもありね♪」
「それにしても大きいな」
　岬がうふふ、と笑う横で、マウルがため息をつく。一行が目にしたのは蔓を足がわりに荒ぶる巨大ウツボカズラの姿と、草刈りをする櫻、囚われた乙女３人と彼女らを助けようと奮闘する刀と庚の姿だった。
「大変そうだし、手伝うしかないな。……ってさっきより大きくなっていないか？」
　クロウディアが言うそばから溢れる消化液。上がる悲鳴、溶ける地面。それに戦慄しながらも博美は伸幸を見た。
「これが特徴……なのか？　他には何かあるのか？」
「何だか洋服が溶けるくらいリアル消化液だからねぇ。だんだん大きくなってる上に周りの草は触手モードだしー」
本当にびっくりよねぇ、とぬんぬん答える彼が「自分も食べられた」と言ったそばから蔓を伸ばしていくウツボカズラ。それに対抗し庚が青白いオーラを纏った右手を振るう。その様を見ながら解理がぽつり。
「しかし、本当にウ（略）ドンがいるとは思わなかった……」
「兎も角、猫鳴館に多少の被害が出るのは目を瞑ろう。但し、アレはなんとしても止めるぞ」
　自治会長である士の言葉に一同は頷き、それぞれ急いで準備を始める。
（一応、らっかみ関連の事を知らない『ひと』もくるかもしれない）
　そう睨んだ博美はねこったーに危惧した事を書き込む。そして、騒動に気づいた寮生に念のため部屋から出ないように、と注意したり、外にいた『ひと』の寮生を避難させたりした。
そして、伸幸は珍しく気合の入った顔で外に出、落ちていた鎌を手に現場へと舞い戻る。
「ぬん、アグレッシブ草刈り！」
　そう言うと、触手化する雑草めがけて鎌を振るいまくった。傍らではろっこんで具現化させた刀を振るう櫻が奮闘していた。次から次に伸びてくる雑草と戦ううちに、自然と２人の間に阿吽の呼吸が生まれつつあった。

「これでよし」
　台所へ向かった岬は、自分の松葉杖をみて頷く。彼はいつも使用している物ではなく金属の松葉杖を取ってくると引越しの時に使った紐で包丁を縛り付け即席の薙刀を作った。そしてもう一本は左足にくくりつけておく。
「ココの危機は、愛する人達の危機だもの。黙っていられないわ」
　と意気込む岬。彼が外へ出ようとすると、月乃もまた手にポーチを持って外に出る所だった。それには彼女のろっこんにとって重要なアイテムであるキャンディーが入っている。そうしながら、ふと月乃はねこったーを見た。
「後木さんが、ねこったーで色々発信してるわね。何でもお手伝いして欲しい事があるみたい」
「今、八神さんとこっちに向かっているみたいだな」
　ブーメランを手にしたマウルは一緒に行こう、と２人を誘う。岬は頷いたが月乃は倉庫に寄ってから行く、と答え、そこへ駆けていった。
　月乃が倉庫へ向かうと既にクロウディアがそこにいた。彼は鉈を２本取り出すと瞳を閉ざした。
（……よしっ）
　変身する、と強く念じるクロウディアの体が白い装甲に覆われる。頑丈な二足歩行ロボットに変身する彼のろっこん『ＭａｃｈｉｎｅＤｏｌｌ』が発動したのだ。
「先に行く。鎌とかは手前に寄せておいた。使うなら持っていけ」
「ありがとう。お互いに頑張りましょう！」
　月乃はクロウディアと拳を合わせると、共に外へと飛び出した。そして、月乃はそっと、キャンディーの包みを開けて口へと放り込んだ。