緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

「後木、何があったんだ？」
「修ちゃん！　修ちゃんの頭脳１人前プリーズなのだ。猫鳴館がウツボカズラで大ピンチなのだ。流石に傷つくのは超ヤバいのだ」
　真央の説明を聞き、八神修は詳しい事情を求める。その上で彼は直ぐに閃いたので、こう彼女に言った。
「強力な除草剤を用意する。だから、その間に下草を刈り取って接近可能にしておいてほしい。それと……悪い、後木。猫鳴館から次の物を持ってきてくれないか？」
　的確に指示をする修に、真央は真剣な目で頷く。そして通話を終えると彼女は猫鳴館の台所へと急行してはありったけの紙袋と塩を持っていく。そうしながらも、彼女は草刈り部隊を要求する書き込みも行った。そして倉庫から石鹸と猫車を持ち出すと「体育科舐めんなしっ」と気合十分な顔で学校へ向かう！
　一方、学校にいた修も家庭科室やら化学準備室やらから塩やら塩化ナトリウムやら、功績標本の岩塩やらの他、トイレ等から石鹸を集めて猫鳴館へと向かうのだった。因みに、全部弁償するつもりである。

　所変わって猫鳴館の倉庫。薄暗い中、２人の寮生がねこったーを見ていた。
「人を溶かすほどの威力、素晴らしいじゃないかい♪　是非とも欲しいねぇ～」
「うーん、消化液が欲しいのだけれどもいい案が見つからないわね」
　ひょうひょうとした雰囲気の少年、骨削瓢と不敵な笑みを曇らせる花風冴来はふと、振り返る。丁度そこに暖房用の灯油が入ったポリタンクが目に入った。
「うふふ、手に入らないならば爆発すればいいのよ」
　いや、どこをどうしたらそこへ行き着くのか兎も角、彼女はポリタンクがいくつあるのか確認した上で「使える」と呟く。傍らの瓢は顎を撫でつつそれらを見やる。
「爆発させるのは最後の手段だねぃ。先ずは捕らえて地下帝国まで連れて行ってみるよぃ」
　どっちにしろ、瓢も最終的にはこのウツボカズラを派手に処分しようと考えていた。猫鳴館がどうなろうと、２人は知った事じゃないらしい。
２人はにやり、と笑うと早速それから灯油を拝借する事にした。

　そしてその頃。軽い鍛錬を終えた楪櫻はシャワーを借りようと猫鳴館を訪れていた。……が、遭遇したウツボカズラに怪訝そうな顔になる。
「やれやれ、竹で大騒ぎしたかと思えば今度は食虫植物か」
　なんの騒ぎだろう、と思って顔を出してみれば……と内心でため息を付いたその時。彼女の目に映ったのは見覚えのある後輩が囚われている姿だった。
「また神魂の仕業か……？」
　櫻が振り返ると、目つきが鋭い少年がいた。九夜山で調査をしていた御剣刀はたまたま近くを通りかかり、このウツボカズラを見てしまったのだ。櫻と刀はこの危機的状況を前に、自分達ができる事をすぐさま模索し、動き出す。櫻は足元の雑草も活性化されて触手化している事に気づき、除草から始めようと念じる。そうする事で彼女のろっこん『姫鶴一文字』は発動し、日本刀が具現化される。制限時間は１０分間だが、その間にできることをしよう、と櫻は気合と共に雑草を刈り始めた。
「そっちは任せる！」
　刀は櫻の声に頷き、蔓に囚われた人を助けようと走り出す。同時に目撃したのはウツボカズラに向かう如月庚の姿だった。彼もまた囚われた人の救出から始めようとしていたのだ。目撃した際、思わず「映画かこりゃ……」と頭を抱えたくなったのはここだけの話だ。
「……ったく、しょうがねぇな」
「如月、助太刀する」
　庚はすっ、と額の傷を指でなぞる。と、右手が青白く輝き始めた。彼のろっこん『蒼穹』はこうする事で右手に神魂のエネルギーを宿し、拳を強化する事ができるのだ。今回の場合はその応用で蔓を毟っていく。刀は庚に襲いかかる蔦を木刀で弾き返し、救出の妨げになるのを防いた。

このページにイラストを設定する