緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

起：『寮裏のウツボカズラ可愛い』『でも３０分後には危ない』

　――私は、時折『学生支援部』の一員として草むしりの手伝いを定期的にしている。
　　　今日もまた真面目に草むしりをしていた私は、背後から迫る巨大ウツボカズラに気づかなかった。
　　　目覚めた時、私の服は消化液によって……。

（証言：哀坂零葉）

「はわわっ？！　夢が叶った……の？」
　そんな事を呟いたのは先程までかなりディープな内容の漫画原稿を書いていた桃原空音。猫鳴館で缶詰になり机に向かって１２時間、息抜きにと思って外に出、植物たちに水を上げていたのだが……そこで遭遇していた。
（確かに触手になるといいな～、とかおもってたけれど！　ホントになるなんて！！）
　きらきらきら～ん♪　と目を輝かせる空音だったが、次に目に入ったのは……蔓に巻き付かれてある意味きわどい状態になっている女の子２人の姿だった。
（リアル触手万歳！　丁度いいモデルがいるぅ♪）
　何か琴線に触れたらしい空音は、思わず携帯で写メをとり始めた。
「そんな事しないで助けてください！！」
　そう叫んだのは裏庭菜園の草むしりを手伝いに来ていた筈の哀坂零葉。彼女は消化液で衣服が部分的に溶かされ、胸の下半分が見えているわ、下手したら愛らしいショーツが見えそうで見えないという具合にボロボロだわ、とある意味悲惨な状態だった。
（こ、このままではお嫁に行けなくなってしまうっ！）
　必死に隠そうとするも、上手い具合に蔦が絡まって重要な部分を隠している。それでも手で隠そうとするあたり、乙女な零葉であった。
「ま、また神魂が宿っちゃったのかな～？」
　そう言ったのはパッツンと切った前髪が特徴の雨寺凛。彼女はちょっと前に猫鳴館で竹が異常発生（？）した際、助けてくれた人へのお礼も兼ねてクッキーを焼いてきたのだがこれにとっ捕まっていた。
「逃げようとしたんだけど雑草に足を取られちゃったんだよね～……ってそ、そこはだめぇ～っ！？」
　苦笑していた凛だったが、蔓が更に締め付けてきて思わず声を上げる。これまた複雑に絡んでいるようでくっきりと胸の膨らみが強調されていた。その割に息苦しくないという絶妙な具合である。そして消化液の被害に遭っていたのか、靴や靴下が溶けて素足がさらされていた。
「やぁっ！　このままじゃお嫁に行けなくなっちゃうよぉ～」
　ドロドロと気持ち悪い感触が足にまとわりついて凛は半泣き状態になっていた。
　男たちが見たら思わず見入るような２人の姿に、薄い本の中身みたい！　と空音のテンションは上がっていく。それでいいのか空音、後ろ後ろ！！　と突っ込む者も存在しない。
「おお、おおお～！　これは撮るしかないでしょ！！」
　うひょ～、とはしゃぎまくっていた空音だったが、足が動きにくくなっている事に気づく。よく見ると、雑草が伸びて彼女の足に絡みついていた。
「えっ？」
　消化液とか欲しい！　とか頭の中がいっぱいで自分もまた被害に遭うとか、考えていなかったらしい。哀れ空音、蔓に巻かれてなんだかコブラツイストみたいな感じで宙ぶらりんになってしまった。６月の青空に、少女の悲鳴はこだまする。

　裏庭菜園の水撒きを手伝おうと来ていた後木真央はひょこっ、と物陰から例のウツボカズラを見た。そして即、携帯電話を開き、「愉快な食人植物なのだ♪」とか「ハイパーうつぼかずらんと命名して、早速ねこったーにＵＰなのだ！」とか「うわっ、雑草まであらぶってるのだ！」と写メを取ってねこったーに流す。そして、更に携帯電話を操作し、アドレス帳を開く。
（こんな時は軍師様を呼ぶのだ！　いつか食べられるだろう天野ちゃんのスイカの為に！）
　ドキドキしながら電話をかければ、１コールで相手は出てくれた。彼は不思議そうに問いかける。

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