緑の進撃・猫鳴館の乱｜リアクション

緑の進撃・猫鳴館の乱

結：頑張ったあとのひと時に

　ウツボカズラが小さな光を吐き出した頃、猫鳴館を訪れる者達がいた。恵御納夏朝と瓜山メイである。彼女たちの楽しそうな話し声に気づいた神野美野梨は笑顔で２人を出迎える。
　いつもに比べて少し静かだな、と思った夏朝は不思議そうな顔で美野梨に問いかける。
「あれ？　えっと…その、差し入れに来たんだけど……どうしたの？」
「ちょっと裏庭菜園の草刈りをしていて……」
　彼女がそう答えたそばから、喧騒が聞こえてくる。「後片付けもやるよー」と元気に声を上げたのは博美だろうか、と思いながら２人にお茶を勧め、内心でほっ、と安堵の息をつく美野梨。
「裏庭菜園？　よかったら後で案内してくれませんか？」
　メイにそう言うと、夏朝も興味を持ったのか目を輝かせる。あのウツボカズラに関してはもう大丈夫だろう、と踏んだ美野梨は、後からでも案内しよう、と思うのだった。
「今日は、駄菓子を持ってきました。足りるといいのですが」
「僕も、色々、作ってきたよ」
　夏朝がリュックからお重を見せる。３人はそれらを食堂に持って行き、いつでも食べられるように準備を整えた。

　ウツボカズラは多くの『塩玉』を入れられたのにも関わらず枯れてはいなかった。焼けた痕が痛々しいが、普通の植物としては生きているようだった。
「よかったわぁ♪　可愛がってあげるわね～」
　岬が嬉しそうに拾い上げ、天野が倉庫から持ってきた植木鉢に移植する。修は自分の知っている限りの範囲でだがウツボカズラの育成法を伝える。
「少し元気がなさそうだけど、じきに回復するか？」
「そうねぇ、剪定はちょっと必要よね」
　美咲紀は葉っぱをつんつんと指で撫でながら言い、挿し木の元をもらっていいか、と問う。それに岬と天野は頷いた。
　このウツボカズラの保護者（？）として名乗り上げた天野と岬は、とりあえず共に世話をするという事で話がまとまりつつあった。
　博美と士の声に応じ、皆で後片付けを行う。その中で、伸幸は小さな破片を拾い上げる。
「ぬん？　これは何？」
　その声に反応した鋭二は、次の瞬間真っ白になった。それは彼が探したSDカードだったのである。凛達の艶姿を撮影した後容量が一杯になってしまったので新しい物と変えたのだが、落ちた上誰かに踏まれたらしい。がっくりと膝をつく彼を、元の姿に戻ったクロウディアがぽん、と慰めるように肩を叩いた。
（まぁ、無事だった訳だし……）
　と、解理が後片付けをしつつ自分の姿を見る。白衣の裾が少し溶けた程度で損傷は抑えられ、良かったな、と思う。

「あ、先生こんにちは～」
「こんにちは、ひびきさん。相当頑張っていたんですねぇ」
　後片付けも終えた頃。ひびきが窓から顔を出せば、メイはくすくす笑いながら応じる。そして食堂では駄菓子やら夏朝特製のおにぎりや卵焼きの詰まったお弁当が広げられている。草刈りを頑張っていた皆と一緒に食べようと準備していたのだ。
　ウツボカズラとの戦闘で空腹になっていた面々は取り敢えず着替えるなり体をきれいにするなりなどした後、みんなで食堂に入って堪能する事に。ろっこんの使用で疲労していた刀を初めとする複数のもれいび達はメイと夏朝に感謝しながら、わいわい言いつつ食べている。
（喜んでもらえて、よかった）
　笑顔で食べる様子に、夏朝は小さく笑う。しかし、足りなさそうな雰囲気もあり、庚は裏庭菜園から材料をもらう許可を得て何か作る事にした。
そんな中、凛は櫻と月乃の元にやってきていた。
「あの、この間は竹から助けてくれて、ありがとう！」
　元々この２人にお礼をする為にやって来た凛は、辛うじて守る事ができたクッキーを手渡す。これに驚いた月乃と櫻だったが、よろこんで受け取った。凛が作ったクッキーはとても優しい味がしたという。

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