カメラは止めない！　パンツは脱がすな！｜リアクション

カメラは止めない！　パンツは脱がすな！

　羽生碧南は乙女ゲームを買うためなら何だってやるのだ。
　激辛料理だって食べるし、ゾンビ映画にも出演する。
　全ては、顔がいい尊い乙女ゲーム新作をプレイするため！
「即金の魅力に抗えなかった……！！」
　映画の内容を知ってからでは時すでに遅し。

「我、乙女ゲーのためならあえて血塗られた修羅の道を行く」
　その表情はどこか精悍だ。
　更にほんわかしている見た目とは裏腹に、スポーツをしていて背が高く引き締まった体躯なので、監督から「大立ち回りしてくれ」と指示された。
「暴れていいんですね。わかりました！」
　羽生、ここでバスケ由来の『戦う女』スイッチがＯＮ！
　こうして、またひとり、ゾンビスレイヤーが誕生しようとしていた。

　ボブこと北条冬華は訝しんだ。
「通報すべきでは？」
　この映画の内容、完全に18禁作品じゃないだろうか？
　レンタルビデオ店ならば、カーテンの奥に区切られたブースでないと販売・レンタル出来ないようなものではないか、と。
「……この映画撮影、Ｂ級映画どころか噂に聞くＺ級映画。何でもアリアリのジゴクめいたムービーですね」
　言語野が次第に麻痺してきている北条は、咄嗟に閃いた。
「マナイタ・オン・ザ・カープ！　ここは流れに逆らわず、脱がされてモブに徹した方が傷が浅い……！？」
　それは天啓だった。そう、逆らって悪目立ちするから駄目なのだ。
　恐らく、周囲の知人……というか知人ばっかりで驚くけど、彼らは何かしらの抵抗をするだろう。
　それが映画にどう影響するかは未知数だ。
　最悪、映画が全ておじゃんになってしまうかもしれない。
　だったら、自身は大人しくパンツを剥ぎ取らてて下半身すっぽんぽんで適当にゾンビとして徘徊していれば一番楽だし目立たない！
　恥は一瞬、幸い、服も軽装だ。

　ショートパンツではなく、ミニスカートにしたのは正解だった。
「ショートパンツだったら、丸ごとすっぽんぽんだったわ……」
　まぁ、パンツごとずりおろされて、そのまま丸出し少女として徘徊しないといけなくなるからね。
「こうなったら、徹底的にモブになってやるわよ……！」
　北条は別のベクトルで意気込みを見せることになりそうだ。