カメラは止めない！　パンツは脱がすな！｜リアクション

カメラは止めない！　パンツは脱がすな！

　明らかに、モブとは違う雰囲気を纏った演者が現場入りしてきた。

　吉住志桜里である。めっちゃカッコイイ。
「監督、着替え終わりました。……本気ですか？　『たまたまパニックの現場に居合わせた謎のジャパニーズファイターガール的なモブ』役ってなんなんですか、それモブなんですかほんとに？」
　主演クラスじゃないんかーい！？
　もはや世界設定もＺ指定らしい。
　肩に担ぐ金棒と篭手メリケンは、硬質ラバーで出来た特殊仕様。
「銃やナイフも、硬質ラバーだから怪我しない。実際安全だよ」
「初めて知りました。これから映画を見る目が変わりそう……」
　そんな映画豆知識に触れたところで、吉住は監督の指示を仰ぐのだが……。
「シオリちゃんのセンスでよろしく！」
　つまり、ノープラン、完全アドリブで暴れて来いってことだった。
「あ、下着は大人っぽい黒のレースでよろしく！」
「そこは指定するんですね！？　演技も指導してほしかったなぁ～！！」
　遠い目で監督にツッコミを入れるも、監督は笑っているだけ。
　人柄はいいのだろうけども、思考回路が壊滅的に常人のそれと逸脱しているのがこの監督であった。

　その頃、副監督はミッシェル・ナイスゲイに対してキレていた。
「いや、お前呼んでねーから帰れ！」
「イヤ～ン！　立派な『女性』のエキストラよ～！」
「うるせぇ、股間の汚ねぇソーセージ削ぎ落して警察に突き出すぞ」
　ミッシェル、セクハラ目的でここにやってきたことが前節で判明したので追い返されていた。
　だって、このオカマ、欲望駄々洩れなんだもの。
「ノーパンのイケメンに襲われるなんて……いやーん！　アタシ、困っちゃう！　というか、ポルノ映画なんだし、いいじゃなぁ～い？」
「だから！　最初からセクハラ目的じゃねよ、ホラーだからっ！！　本当に削ぐぞコノヤロー、あ゛ぁ゛！？」
「そんなこと言わないでぇ～ん？　オラァアッ！！」
　ミッシェル、副監督を男子トイレへ突き飛ばすと、個室へ押し込んで自分の中へ。
　そして鍵を掛けた。
「お・は・は・し、しましょ、ウフッ！」
「ぎゃあああああああああああ！？　ん゛き゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛！」
　これ以降、副監督が撮影現場に現れることはなかった。