カメラはキレイどころを求めて、主要キャストのひとりである城山 水樹を捉えた。
　寝子島出身、現役マタ大学生で、コスメブランド「Sonora」イメージガールも務めるモデルの城山が、木天蓼大学映画研究部Ｂ級班の出演依頼を受けた瞬間、監督は「出演者が豪華になった！」と小躍りしたという。
　そんな城山に振られたのは、ゾンビ事件の謎に挑む女子大生役。
（不思議とホラー映画には縁があるのよね）
　後輩で女子高生役の落合 まゆらと朝野 未沙を伴って、ゾンビから身を隠しながら忍び込んだ研究室。
　ウィルス開発者のノートを見つけた城山のセリフで「謎の企業ハムブレラが開発した謎のウィルスによって感染していく」ということがざっくり説明される。
　それを聞いた朝野が素人っぽい演技で、覚えてきたセリフを話す。
「そうか、わかったわ！　ゾンビたちはノーパンであるが故に、パンツを欲して徘徊するのね！」
　監督もエキストラたちも観客たちも忘れがちだが、そういう設定だ。
「きゃあああ、先輩！　ゾンビが！」
　振り返って叫ぶ落合の演技。
　ゾンビ集団がドアを蹴破って研究室になだれ込んでくる。
　机の間を回り込んだり棚を倒したりして抵抗するが、部屋の出口はゾンビだらけのドアひとつ。
　三人に逃げ場はない！
（……明らかにこっちに群がってくる輩が多いのは気のせい？　ていうか明らかにこっち狙ってんだろ！）
　城山は内心で毒吐く。
　そりゃあそうだ、ゾンビ役のそこいらの男たちにプライベートで城山ほどの美女を押し倒す機会があろうか！
　断言しよう。ない！
（捕まるわけにはいかない。乱暴に押し倒されたら肌に傷がついて仕事に支障をきたしちゃうじゃない！）
　城山は椅子やら謎の薬品瓶やら手当たり次第に投げつけたり、ほかのゾンビを盾にしたりしながら、ゾンビの襲撃を逃げまくる。さらに机の上に飛び乗っては、ゾンビに踵落とし。監督が用意した城山の見せ場のアクションシーンだが、カメラの位置から察するにパンチラお色気シーンでもある。
　そこに、
「い、いやあああああ！」
　絹を裂くような落合の悲鳴。
　窓際に追い詰められた落合が、ゾンビに組み敷かれている。
　落合は本気で怯えていた。
（ゾンビの中の人が『女に餓えまくり』感濃厚すぎだよおお！！！　ヤバいって！！）
　落合を組み敷くゾンビの荒い息が耳元にかかる。
　あっちもガチだが、こっちもガチだ。
「やめてったら！　離れて！　厭、イヤアアアァァ――――！！！」
　壮絶に暴れまくりわめきまくり泣きまくりながら抵抗する。
　演技もへったくれもない！
　しかし、蹴っても叩いても、ゾンビの手は止まることはない。
「助けて！」
　落合は、朝野に懇願するように腕を伸ばした。
　彼女がその手を掴んで助けてくれる……そう期待していたのだが。
「わくわく（はぁと）！！」
　助ける気一切なし！　それどころか朝野は涎を垂らし、落合の姿態を堪能していた！！
「嘘～～っ！！」
　味方に見放されたショックは大きく、落合は何が何だか分からないうちに、制服の下に履いていたパステルピンクのパンティを脱がされてしまった！

　ズタボロになり、呆然とする落合は、カメラが城山の方を追う隙にスタッフに引きずられ室外へ。手早くゾンビのメイクを施される。
「え……あたし、いったい何をすれば……」
「監督からの指示です。『ノーパンで暴れろ』」
「はぁ」
　無茶振りもいい加減にしろと言いたくなる。
　が、カメラは回り続けている。
　落合は開き直った。
「あとは知らん！」
　大暴れしてやる！　ターゲットはもちろん、自分を見捨てた朝野だ！

　落合は、ゾンビの群れの中に埋もれる朝野の赤毛に近づいていった。
（ん？）
　ゾンビの合間から視界に入った謎の触手。
（タコかなんかいる？）
　その直後。
「ひゃっ！」
　なにかにお尻を触られた！
　ゾンビなのに！
「あんっ！」
　胸まで！
　犯人を捜せば……それは、女子制服の両袖から繋がる朝野の手だ！！！

「むふふっ！　ゾンビだって女の子。エクスタシー、感じたいよねっ？」
　自分から近づいておさわりしにくるなんて、なんて破廉恥！
　じゃなくて！
「イケナイ子ね！　おしおきよ！」
　落合は朝野を押し倒し、乱暴に淡いピンクの可愛いリボン付きパンティをはぎ取った！
　はぎ取られた朝野はといえば、心の底から嬉しそうな笑み。
　舌なめずりし、
（これでゾンビ側として思う存分女の子を襲えるね♪）
　と、カメラの範囲外でゾンビメイクしたうえ、『作り物でっす！』と言い張って、ろっこんを発動！　【あなたの後ろに這い寄る触手】で両手を触手化して撮影に舞い戻る。

　生き残っているのは城山ひとり。何とか逃げてはいるものの、幾度か押し倒されたり引きずられたりした際に服が破け、白い肌もお臍も露出してしまっている。ウェーブの掛かった長い髪は乱れ、汗と埃まみれ……それがかえってセクシーでもある。
　寸止めに次ぐ寸止めで、パンツだけは死守し研究室のドアへ向かった城山。
　そこに、ついさきほどまで仲間であった二人の後輩が立ちはだかる。
「まゆらちゃん、未沙ちゃん……そんな……」
　ツインテール美少女ゾンビとなった落合と、触手ゾンビ化し悪魔的に赤い幾本ものを触手うねらせる朝野。
　いよいよ絶体絶命の危機だ！
「センパアああいい……諦めてくださあああいいい」
「いっしょに気持ちよくなりましょうぅぅ？？」
　ゾンビ風に語尾を伸ばす二人。
　回れ右するが、後方にはすぐ、変態男子ゾンビたちが迫ってきている。
　前門の虎後門の狼とはこのことか……！
（男子にやられるか、女子にやられるか、選べって！？　決まってるじゃない！）
　城山は、まゆらの手と未沙の触手に囚われることを選んだ！！
「むっふふ～～」
　朝野は背後から足元へ触手を伸ばして足を絡め取り、身動きできないようにすると、邪魔なショートパンツを脱がしてしまう。整ったかたちの臀部に繋がる、大人っぽいレースのパンティが露わになる。
（パンティを奪う時に他の場所もまさぐるのはお約束）
　朝野の触手は遠慮がない。
「ちょ、そこは、ちが……ああ……！　最悪……！」
　城山、陥落の瞬間であった。