富士山登ろう！　夏の林間学校！｜リアクション

富士山登ろう！　夏の林間学校！

【富士山登ろう！（８）】

　夕飯をお腹いっぱい食べたなら、お休みタイム。食べてすぐ寝たら……なんて言いますけれど、なにしろハードな富士登山のさなかですから、みんな疲れ切っているのです。ヘトヘトなのです。
（さすがに疲れたわね）
　まだ時間は早いものの、椎井莉鳥も睡魔に襲われ、横になろうと……したところで。
「良く寝てるなぁ」
「よっぽど疲れてたのねぇ」
　山小屋の仮眠所にはベッドなんて気の利いたものは無くて、みんなで雑魚寝です。
　早くも寝入っているみんなに遠慮してか、抑えた声で笑ったのは、七夜あおいと数人の生徒たち。
　その微笑ましそうな笑みの下には、八神修と、音海なぎさの寝顔がありました。
「修くんが勉強もしないで寝ちゃうなんて、珍しい」
「見てみて、音海くんマジ美少女！　これニャンスタに上げちゃおっか？」
「うん。かわいそうだからそれはやめとこ」
　なんて、わいわいきゃあきゃあ。
（元気ね……）
　そんな様子を眺めていたら、莉鳥も思わず、目元がゆるんでしまいました。

「だーっ、疲れた！」
「れんちゃん大丈夫～？　キツかったんじゃない？」
　美味しいカレーを堪能して気がゆるんだのか、ついついため息をついた高梨煉に、志波武道が心配そうな声をかけました。
　心配をかけ通しでしたけれど、体力のない煉もどうにか、ここまでたどり着くことができました。それもひとえに、支えてくれる友人たちのおかげでありましょう。
「なんとか大丈夫。明日からしばらく筋肉痛だろうけどな……」
「あはは、それはまー仕方ないＮＥ☆」
　頼りになる友だちの存在に、感謝です。明日もきっとこの調子で、頑張れるはず！
「ところで、正也は？　ずいぶん静かだけど」
「あれ。きりの～ん？　もう寝ちゃった？」
　気づくと桐野正也はお隣で、すぴすぴ寝息を立てておりました。
　それだけではありません。
「あ、フキダシ」
「ろっこん発動したまま寝オチしちゃったんだなー」
　すっかり夢の中な正也の頭の上にはぷかぷかと、マンガみたいなフキダシが浮いています。
『なんだかんだで、ふたりといっしょが一番楽しいなー！』
『俺らももう三年だし、この先のこと考えたら、ちょっと寂しいけど……』
『ずっとこうやって、ふたりといられたらいいなー……』
　ぷかぷか、ぷかり。すぴすぴすぴ。
　武道と煉は思わず顔を見合わせて、くすり。
（ほんとは、こういう雑魚寝って苦手なんだけど……）
　実は周りに人がいると、あまり寝付けないという武道。案の定、まだあまり眠くはないのですけれど。
（なんだか今夜は、良く寝られそうだ♪）

　しんと静まる山小屋の夜は更けていきました。
　明日はいよいよ、ご来光目指してラストスパート！
　それまでぐっすり、おやすみなさい。