富士山登ろう！　夏の林間学校！｜リアクション

富士山登ろう！　夏の林間学校！

【観光しよう……ぜ？（３）】

　さあ、登るぞ！　気合十分、響タルトは眼前にそびえる富士山の頂を見上げて、決意を新たにします。
「富士登山なんてめったにない機会だし、頑張ろうね！」
　くるりと振り返ったところには、後輩のマーガレット・ライカーがなにやら、神妙な顔でたたずんでおります。
「？　どしたの、マガレちゃん？　大丈夫だよー、ゆっくり歩けば誰でも登れるからって黒崎先生も言ってたし。ほら見てよ、あそこ、まだちょっとだけ雪が残ってる！　白い頂目指して、僕たちも……」
「先輩。タルト先輩。白い頂も結構ですが」
　めったにない機会にちょっぴり興奮気味なタルトを制して、マーガレットは鞄からなにかを取り出し、掲げて見せました。
「白いのは富士山だけじゃないんですよ」
「白い……原稿用紙？」
　夏と言えば？　原稿と言えば……？
　へにゃりと下がったタルトの眉が徐々に上向き、目は見開かれて、ついに彼女は気付くのでした。
「ネコミケだ！！」
「そうですタルト先輩、夏のネコミケが間近だというのに見てくださいよこの白い原稿を！！　純白！！　まさに純白！！」
「やばいじゃん！」
「やばいです！！」
　つまるところマーガレットは、タルトにネコミケの原稿手伝って♪　出来上がるまでホテルでがっつり缶詰めね♪　とおっしゃっているというわけなのです。
「えっ……で、でも富士山登ることになってるし。原稿なんて描いてたら、先生に怒られちゃうよ？」
「大丈夫、抜かりはありません」
　と言ってずばばばば！　と再び取り出したのは、忍野八海。河口浅間神社。青木ヶ原樹海！？　ともかく富士周辺の観光地の景観を収めた写真の数々です。
「富士登山から観光ルートへの切り替えは認められています。私たちはこれから、これらの観光スポットを巡ります」
「……巡ったことにするんだね……？」
「画像編集って便利ですよね」
　観光地の風光明媚なお写真にふたりの姿を合成すれば、あら不思議。アリバイ大成立！
　そしてふたりはホテルにこもり、この林間学校の間にまっさらな原稿を完成にまで持っていくというスンポーです。
「マガレちゃん……最初から僕を缶詰にするつもりだったんだね？」
　ばっちり登山をするつもりだったタルトは、がっくり……なんてことも、案外なかったりしました。
「ふう。まあ事情は分かったよ。ネコミケは落とせないし、やるっきゃないね！」
「さすがタルト先輩、話が早くて助かります」
　けろりと言ったマーガレット、最初からこうなるのが分かっていたのでしょう。
　ともかく、予定変更！　ぐぐっと拳を握ったタルトは、マーガレットへ言ったのでした。
「それじゃあ、原稿頑張ろう！　まずは！」
「まずは？」
「腹が減っては戦ができないよね、山梨名物ほうとう食べようか♪　あ、デザートは巨峰ソフトクリームね！」
「……おごりますよ、タルト先輩」
　ふたりの熱い夏が始まる……！！