夜、三夜湖の畔にて～１０００年に一度開く扉～｜リアクション

夜、三夜湖の畔にて～１０００年に一度開く扉～

●月明かりの下の宴（１）

　いつの間にか、三夜湖の湖面は、硝子を張ったようになっていた。
　湖の下にはオーロラのような光が、湖の上には柔らかな月明かりが踊る。
　睦に用意させた色んな種類のお酒やジュース、沢山の果物などを綺麗に並べて、
「さあ、皆さん、どうぞ」
　と、御巫時子は、翼獣達をにこやかにもてなした。
　これは何？　どんな味がするんだろう？　とばかりに、翼獣達は飲み物・食べ物に興味津々。
（皆さん、どれが気に入るでしょうか？）
　なんて考えていたら、ちょん、と、翼獣の鼻先が時子の背を突いた。
「あら？　どうしました？」
　尋ねれば、翼獣のきらきらとした眼差しは、赤ワインの瓶に注がれている。
　その意を察して、時子はにっこりとした。
「赤ワインが気になりますか……？　飲みやすいよう、器に移しますね……」
　器を睦に準備させたのも、時子のアイデアだ。
　時子が器に注いだ赤を、翼獣は嬉しそうにぺしゃぺしゃと飲む。
「時子殿、ありがとうございます。お陰で、御使いの皆さんも喜んでくださっているみたいで……」
　こちらもせっせと器に翼獣達が望む飲み物を注ぎながら、睦。
　時子の奮闘を目に、ヨタカさんが楽しげに上空を舞う中、
「おー、宴会って感じだねぃ」
　と、翼獣ムクを伴った呉井陽太も、ひょこりと賑わいの場に顔を出す。
　楢木春彦も、翼獣リブとその子供達と一緒にやってきて、
「色々揃ってんなぁ。睦、サンキュー。御巫に、仙藤先輩も」
　水を向けられて、仙藤紫は淡く口元を和らげた。
　笑みに笑みを返したあとで、翼獣達へと向き直る春彦。
「リブ達、食いたいモンなんかあっか？」
　問えば、ムクが、陽太の服の裾を、そっと口に咥えて引いた。
　そんなムクの目を見て、陽太は「うん、そうだねぃ♪」とムクの頭をさわさわと撫でる。
「この間、たくさんお菓子を食べてたもんねぃ。オレも、ムク達と一緒に、いっぱいお菓子食べたいなぁ」
「な、睦。パッキーとかスナック菓子とかも出せるか？」
「は、はい、お任せください！　人間の文化には、僕、結構詳しいんです！」
　春彦の声に応じて、睦はえいやっとばかりに所望された菓子類をどんどん呼び出した。
　その間、時子や紫達は翼獣達の相手で大忙しだ。
　器の準備を手伝いながら、紫は、ちらと翼獣モモとその子供達の方を見遣った。
　子供達に先に食べ物を譲る様子が、何とも微笑ましい。
（この間会った時は、まだ幼い感じがしていたけれど……）
　母親になったことで、流石に少し大人っぽくなったような……と思っていたら、
「……あ、」
　そんな紫の視線の先で、モモは、じゃれついてきた子供達ときゃっきゃと遊び出してしまった。
（大人っぽく……なった、のかしら？）
　そこのところはちょっぴり謎だが、モモと子供達の戯れる姿は、