夜、三夜湖の畔にて～１０００年に一度開く扉～｜リアクション

夜、三夜湖の畔にて～１０００年に一度開く扉～

●月明かりの下の宴（２）

　お菓子を出し終えた睦は、今度は、恵御納夏朝と柳内みこと、そして翼獣御夜の元へ。
　湖の上も、今は、幻想的に煌めく宴会場だ。
「睦君、おにぎりにお団子、ジュースもありがとう！」
　夏朝の言葉に、「えへへ、お安い御用です」と、睦は小さくはにかんだ。
「えっと、翼獣さん用の食べ物は……」
「あ、御使いの皆さんは、何でも食べられるとお三夜さまが！」
「そうなんだ。じゃあ、お団子一緒に食べられるね、御夜ちゃん」
　言って、夏朝は御夜を優しくもふもふもふ。
　御夜が嬉しそうに喉を鳴らすのを、みことはそわそわと見守っている。
　湖の上にこうして座っているのも夢のようだし、
（翼獣……す、素敵ですわね……）
　と、みことはすっかり、翼獣の虜になっていた。
（私も、皆さんのように、何とか触れたりはできないものでしょうか……）
　なんて、ジュースをくぴくぴとしながら画策していたら、
「！」
　いつの間にか、いかにも天真爛漫な雰囲気の翼獣が、じりじりとみことの傍らに迫っていた。
（わ、私の方から近づいていくつもりでしたのに……！）
　何はともあれ、ここはアイコンタクト！
　じっと相手の瞳を見つめれば、その目は、「それ、美味しい？」とわくわくと訴えている。
「その……飲みますか？」
　尋ねれば、目に見えてぱああと輝く翼獣の表情。
　ジュースを分けてやれば、じきに、「ありがとう！」とばかりに翼獣は顔を上げる。
　その頭に、みことはそっと手を伸ばした。
　――ふわん。
　何とも言えない触り心地に、みことの胸はきゅ～～～ん！　と高鳴る。
（なめらか！　なんて滑らかな手触り！！）
　それでいてふわふわとした柔らかさもあって……ああ、何たる至福！
　緊張は、あっという間にとろんと溶けてしまった。
「あの……お菓子も、一緒に食べませんか？」
　みことの目的は、もうすっかり、『翼獣との触れ合い』にすり替わってしまっている。
　くるる、くるる！　と、翼獣も嬉しげに、みことにあたたかな頭を擦り寄せてきた。
　みことと翼獣の触れ合いを目に、睦もほっとしたみたいに相好を崩している。
「皆さんのお陰で、御使いの皆さんもとっても楽しそうです！」
　細められた目は、どこか猫の目を思わせて、だから夏朝は、
「そういえば、睦君、お三夜さまの眷属見習いなんだよね？」
　と、御夜をもふもふしながら、睦へと問いを投げた。
「ええ！　そして今夜、見習いを卒業……したい、です」
「うん、応援してるね。それで、あの……」
「はい？」
「……猫さん、だったりする？」
「はい、そうですよ？　ほら！」
　言って、睦は、ぽわん！　と、あっという間に子猫の姿に変身！
　銀色子猫を前に、夏朝の胸はきゅんっとときめく。
（子猫さん、可愛い……撫でたい……！）
　うずうずとしていたら、「……触りますか？」と睦が言う。
「！　うん！」
　早速、睦（子猫ver）を膝の上に抱いて、幸せを噛み締める夏朝。
（あとで、このことも一閃さんに報告しよう）
　胸をほこほことあたためながら、夏朝はそんなことを考えた。