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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
夜闇にあかく、ほおずき市
勝三郎は、数十年以上前に商店街に店を構えていた、寿司好きなら名前を知らない人はいない程の腕を持った寿司職人だった。
何でも自分で出来ると思っていた。その為、店の跡を継がせる事等全く考えずに、同じ道を目指すと言った息子に怒鳴りつけてこき使いながらも、ろくに技量を教えることもしないままに、一人で店を切り盛りしていたのだと。
『だがよぉ……失敗しちまった。俺が、こいつとの散歩中に交通事故で死んじまって……。
息子がそれでも俺に罵られながら店を継ぐべきか、やめて逃げ出すかをうだうだ悩んでいるのを知ってやがったのに、その問題に何の手も触れねぇで勝手に死んじまって……。
それが心掛かりでよぉ……同じように迷ってるやつを見ると放っておけなくてよ。夜な夜な、悩んでいるやつにどうしてもカツを入れてやりたくて仕方がなかったんでぇ……』
しんみりとした空気が場に落ちた。自分の店がどうなったのかも、間違って愛犬のポチまで死後に連れてきてしまったこと、そして息子のこと。
全て、分からないまま、置いてきてしまったと。
「おじいちゃん、寿司職人さんアルかー」
意気消沈しきってしまった勝三郎の沈黙を破ったのは畑中 華菜子だった。
「おじいちゃんのお寿司食べてみたかったアルナ。
今はおじいちゃんのお店は？」
『住魚、ってぇ名前だが……こんな死に方したんじゃ流石に潰れて──』
「え──住魚って、まだあるじゃない。あの物凄い老舗の寿司屋さん」
瞬城 真魚が驚いた様子で、思い至ったその店について口にする。
『な──そいつぁ本当かっ！？』
「あ、私も知ってますー。
子供の頃に連れて行ってもらったことがありましてー。
『回らないお寿司は高いのだ』と、強く思わせていただいた場所ですー。永くご家族で継いでおられる伝統のお店だと」
薄野 五月も合わせて、その店に関する思い出と知っていることを語って聞かせる。
『──っ。
あるのか……まだ、俺の店が残ってやがるのか……
──畜生っ、嬉しいのに涙が出てくらぁ……！』
勝三郎が片腕で両目を押さえる。幽霊でも確かに涙はそこにあった。
「お店あるアルね！ それなら食べに行ってみたいアルヨ。もちろん三人で！」
「ま、うん……寿司……
高校生には厳しいけど、気が向けば、ね」
「ふっふ。良いですねー
私も三人でお寿司を食べに行きたいですねー。今でしたら、少し貯金をすれば払えない額ではないですしー」
主に金額がネックとなり三人三様の表情を浮かべつつも、それでもその心は同じ。
それに深く感じ入った勝三郎は、ついに声を上げて男泣きをし始めた。
「悩める人や踏ん切りのつかない人、ねぇ…それで自分が彷徨ってちゃ世話無いでしょ。
……私も奔放な幼馴染二人には悩まされてるけど」
今がまさにその状態だ。そう困ったように笑った真魚の様子を目に、勝三郎はその涙を誤魔化すように『ああ、ああ』と頷きながら腕で顔を擦り拭った。
『ああ、畜生っ。今日、ほおずきが破れて本当に良かった……
ずっと心残りだったことが解消されやがった……これで心置きなくあの世へ行けるってもんだ』
顔を上げた勝三郎は、涙が止まらないまま。それでも、この上なく嬉しそうな笑顔を見せた。
「ポチ！ 可愛いアル！ ポチー！ よしよしアル。
──ポチも一緒アルか？」
問い掛けられたポチが、勝三郎の言葉に側にいた華菜子から離れて、飼い主の足元へと、やはりふさふさの尻尾を振りながら戻っていった。きっとそういう事なのだろう。
『──嬢ちゃん達。すっかり世話になっちまったな。ありがとうよ』
……最後にそう告げて、勝三郎とポチは光に呑まれるように、偶然近くにあった五月の手にある、竹ひごに飾られたほおずきの中へと消えていった──
「……ふぅ、これで一件落着ね。大分ばたばたしちゃったけれども」
真魚が大きく背伸びをする。
「はいー、後はこの竹ひごを狐面の方におかえしするだけですねー」
五月は、この手にあるほおずきが、その心を不思議と温かくしてくれる光を帯びているのを感じていた。
それに仄かに安心しながら、丁寧に竹ひごを持ち直す。
「あ！ お寿司もいいアルども、ほおずきラーメン食べ損ねたアル！ このままだと売り切れてしまうアル！」
「想像する味を考えれば、売れ残っている気がするけれども……」
「ふっふ。それでは、竹ひごを返した後に急いで食べに行きましょうー！『ほおずきラーメン！！』」
こうして三人は、心から人を救えた証である一つの竹ひごを大切に持ちながら、再び華やかで眩しいほおずき市へと戻って行くことにした。
煌々とした灯りの中、まだ終わらない祭りの楽しみは溢れんばかり──
何でも自分で出来ると思っていた。その為、店の跡を継がせる事等全く考えずに、同じ道を目指すと言った息子に怒鳴りつけてこき使いながらも、ろくに技量を教えることもしないままに、一人で店を切り盛りしていたのだと。
『だがよぉ……失敗しちまった。俺が、こいつとの散歩中に交通事故で死んじまって……。
息子がそれでも俺に罵られながら店を継ぐべきか、やめて逃げ出すかをうだうだ悩んでいるのを知ってやがったのに、その問題に何の手も触れねぇで勝手に死んじまって……。
それが心掛かりでよぉ……同じように迷ってるやつを見ると放っておけなくてよ。夜な夜な、悩んでいるやつにどうしてもカツを入れてやりたくて仕方がなかったんでぇ……』
しんみりとした空気が場に落ちた。自分の店がどうなったのかも、間違って愛犬のポチまで死後に連れてきてしまったこと、そして息子のこと。
全て、分からないまま、置いてきてしまったと。
「おじいちゃん、寿司職人さんアルかー」
意気消沈しきってしまった勝三郎の沈黙を破ったのは畑中 華菜子だった。
「おじいちゃんのお寿司食べてみたかったアルナ。
今はおじいちゃんのお店は？」
『住魚、ってぇ名前だが……こんな死に方したんじゃ流石に潰れて──』
「え──住魚って、まだあるじゃない。あの物凄い老舗の寿司屋さん」
瞬城 真魚が驚いた様子で、思い至ったその店について口にする。
『な──そいつぁ本当かっ！？』
「あ、私も知ってますー。
子供の頃に連れて行ってもらったことがありましてー。
『回らないお寿司は高いのだ』と、強く思わせていただいた場所ですー。永くご家族で継いでおられる伝統のお店だと」
薄野 五月も合わせて、その店に関する思い出と知っていることを語って聞かせる。
『──っ。
あるのか……まだ、俺の店が残ってやがるのか……
──畜生っ、嬉しいのに涙が出てくらぁ……！』
勝三郎が片腕で両目を押さえる。幽霊でも確かに涙はそこにあった。
「お店あるアルね！ それなら食べに行ってみたいアルヨ。もちろん三人で！」
「ま、うん……寿司……
高校生には厳しいけど、気が向けば、ね」
「ふっふ。良いですねー
私も三人でお寿司を食べに行きたいですねー。今でしたら、少し貯金をすれば払えない額ではないですしー」
主に金額がネックとなり三人三様の表情を浮かべつつも、それでもその心は同じ。
それに深く感じ入った勝三郎は、ついに声を上げて男泣きをし始めた。
「悩める人や踏ん切りのつかない人、ねぇ…それで自分が彷徨ってちゃ世話無いでしょ。
……私も奔放な幼馴染二人には悩まされてるけど」
今がまさにその状態だ。そう困ったように笑った真魚の様子を目に、勝三郎はその涙を誤魔化すように『ああ、ああ』と頷きながら腕で顔を擦り拭った。
『ああ、畜生っ。今日、ほおずきが破れて本当に良かった……
ずっと心残りだったことが解消されやがった……これで心置きなくあの世へ行けるってもんだ』
顔を上げた勝三郎は、涙が止まらないまま。それでも、この上なく嬉しそうな笑顔を見せた。
「ポチ！ 可愛いアル！ ポチー！ よしよしアル。
──ポチも一緒アルか？」
問い掛けられたポチが、勝三郎の言葉に側にいた華菜子から離れて、飼い主の足元へと、やはりふさふさの尻尾を振りながら戻っていった。きっとそういう事なのだろう。
『──嬢ちゃん達。すっかり世話になっちまったな。ありがとうよ』
……最後にそう告げて、勝三郎とポチは光に呑まれるように、偶然近くにあった五月の手にある、竹ひごに飾られたほおずきの中へと消えていった──
「……ふぅ、これで一件落着ね。大分ばたばたしちゃったけれども」
真魚が大きく背伸びをする。
「はいー、後はこの竹ひごを狐面の方におかえしするだけですねー」
五月は、この手にあるほおずきが、その心を不思議と温かくしてくれる光を帯びているのを感じていた。
それに仄かに安心しながら、丁寧に竹ひごを持ち直す。
「あ！ お寿司もいいアルども、ほおずきラーメン食べ損ねたアル！ このままだと売り切れてしまうアル！」
「想像する味を考えれば、売れ残っている気がするけれども……」
「ふっふ。それでは、竹ひごを返した後に急いで食べに行きましょうー！『ほおずきラーメン！！』」
こうして三人は、心から人を救えた証である一つの竹ひごを大切に持ちながら、再び華やかで眩しいほおずき市へと戻って行くことにした。
煌々とした灯りの中、まだ終わらない祭りの楽しみは溢れんばかり──
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年02月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年03月02日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年03月02日 11時00分
