７月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

７月の☆ハッピーバースデー

●７月７日　～続・あおいのＢｉｒｔｈｄａｙ～

『綾花ちゃんへ　校門で待ってます　あおい』

「いけない、急がないと」
　ＮＹＡＩＮの履歴に目を留めた綾辻綾花は、急ぎ足で図書室の席を立った。
　借りた本を鞄にしまう綾花の手つきは、ラッピングした包みを傷つけないよう、いつもよりも慎重だ。
　連絡をくれたあおいへ送るプレゼントである。

『待ってて、今行くから！　綾花』

　片手で返信を済ませ、急いで寝子高の校門へと駆けていく。
（あおいちゃん、プレゼント気に入ってくれるかな）
　不安と期待の入り混じった気持ちで、綾花は校門でツインテールを揺らして手を振るあおいと合流した。

　放課後の部活に勤しむ生徒たちの声に、セミの鳴き声が混じり始めた７月７日。
　綾花は今日、１７歳の誕生日を迎えたあおいのお祝いをする約束なのだ。

　―

　駅前のケーキ屋に着いたのは、それから程なくの事だった。
　洒落た雰囲気の静かな窓際の席で、誕生日のお祝いが始まった。
「あおいちゃん、誕生おめでとう」
「ありがとう、綾花ちゃん」

　注文したケーキセットはどれも美味しかった。
　洗練された味に舌鼓を打ちながら、綾花とあおいは世間話で盛り上がった。
　学校のこと、最近あったこと……もっぱら盛り上がったのはテレビドラマの話題だ。
「ねえ、あおいちゃん。１７歳の目標、なにかある？」
「うーん……料理が上手になりたいかな！」
　ケーキをぱくりと頬張って、あおいは朗らかに笑う。

（去年の今頃は、何をしてたっけ）
　話に花を咲かせる綾花はケーキをつつきながら、ふとそんなことを考える。
　花火をして、星の付いたリボンとブレスレットのセットをプレゼントして――。
（そうだ、プレゼント。お話が楽しくって、すっかり忘れてた）

　綾花は少し改まった顔で、ラッピングされたプレゼントを取り出した。
「はいあおいちゃん、プレゼント。開けてみて！」
「私に？　ありがとう！」
　顔を輝かせるあおいに、綾花は少しドキドキした。
　色んな店を回って悩んだ末に決めた一品、はたしてあおいは気に入ってくれるだろうか。

「うわあ……！」
　あおいは綾花の贈り物に、言葉も忘れて見入った。
　オレンジ系とピンク系の口紅である。
　パッケージには猫のシルエット、リップには肉球が描かれているお洒落な品物だ。
（ぬいぐるみと悩んだけど１７歳はちょっと大人な感じがするから。喜んでもらえると良いな）

　１７歳は少女から大人になりゆく年齢だ。
　きっとこれから、つける機会も増えてくるだろう。
　口紅をつけた友達の姿を想像し、綾花は柔らかく微笑むのだった。