灼熱！　激辛！　真夏の我慢大会！｜リアクション

灼熱！　激辛！　真夏の我慢大会！

　敗者ルームを目の当たりにした御剣は、すぐにこの場を立って敗者ルームに飛び込みたかった。
「え、食べないと棄権できない？　マジか……」
　スタッフにＮＧを出され、やむなくひと口だけでも食べようと試みる御剣。
「うわー、マジでヤバいよこれ。汁が煮えたぎってるよ……！　この暑さだしこれは食べたら効きそうだわ。俺は無理だわー」
　だが、食べないとリタイヤできないのならば、頑張って箸を口に持ってゆくしかない。
「とりあえずちょっと食べてみるか」
　激辛とはいえ、これは食べ物だ。命までは取られないだろう、と御剣はうどん１本だけをすすった。
「無理無理、死ぬ死ぬ！！」
　大量の水と共に御剣はうどんを飲み干した。
「ああ！？　胃がカッカする！！　もういいよね！？」
　堪らずスタッフに棄権を言い渡し、猛ダッシュで敗者ルームへ直行！　その道中で服を脱ぎ去り、敗者ルームのドアを開け放つと、そのままパンツ１枚でプールの中へダイブ！！
「気合いとか根性とかを発揮する場面かも知れなかったけど、剣の戦いとかでもないし、エッチなご褒美もないしそこまでの場面じゃなかったのでリタイア！　罰ゲーム言ってすいませんでした！　ここはパラダイスでした！！　いやー、気持ちいいわ最高だわ！　どう考えても賞金と海の幸以上の価値あるでしょ！　ありがとうございます！　うは～、最高！　勘違いで参加した時はどうかと思ったが参加して良かったわ、リッカルド町長最高！　ありがとうございます！」
　ダメ人間となった御剣が心の中の台詞を吐露するたびに、挑戦者への心のダメージが蓄積されてゆくのであった。

　挑戦者の中に殺人鬼がいた。
　真夏にホッケーマスク。分厚いツナギに何故かチェーンソウ。時々、唸り声を上げながら、会場へ向けてチェーンソウを振り回すパフォーマンスを行う謎の人物がそこにいた。
　彼の名は『通りすがりのチェーンソー』さん。何故か激辛カレー鍋焼きうどんを食べずに、持参してきた大玉スイカをチェーンソウで切断し始めだした。
　もしかして、あまり食べたくないのかな……？
「……スイカ、食ウカ？」
　切ったスイカを泣き出す子供たちに配布すると、席に戻って割り箸を綺麗に割った。
「ふぅ、やりたいことはやったので、そろそろ食べよう。いただきます」
　普通に食べるんか～いっ！
　殺人鬼さん、マスクを器用にずらして、うどんをすすり始めた。
「ああ、辛いね……！　顔の汗が止まらないや。冷却パッドをホッケーマスクの裏面に貼ってあるけど焼け石に水だ。全身が燃えるように熱い……！」
　そして、どうにか１杯完食したところでリタイア宣言。
「みんな、お先に失礼するよ」
　ホッケーマスクを外したチェーンソウさんの素顔はサキリであった。
　正体を明かしたサキリは、挑戦者たちの視線があまり自分に向いていないことを不思議がっていた。
「あれ？　なんかみんな、リアクション薄くない……？」
　だって、最初から存在感凄かったし、背格好とか白い髪とか見えてたし、寝子高生ならサキリ君の性癖を理解している友人もいるし、つまり推して知るべしな状態だった。
　サキリは腑に落ちないといった表情で敗者ルームへ移動すると、メイドさんから濃厚なバニラアイスを受け取り、ひと匙味わった。
「うん！　甘い物は別腹で入るね。みんなー？　こっちは快適だよー、早く来た方がいいよ。無理して体を壊さないようにね？」
　こうして、サキリまで脱落し、残り13人。
　まだまだ脱落者は増えそうな勢いである。