月に喚ばれし悪魔の群と、とある落神の願い｜リアクション

月に喚ばれし悪魔の群と、とある落神の願い

「ありましたにゃー！」
　ちりんちりんと可憐に鳴る金色のベルを咥えて駆ける輝夜の傍を走り、ミーツェが明るい声を上げる。飽きもせず死体ごっこを続ける蝙蝠のもとに駆け寄る。
「はいです、にゃ？」
「ちょっと待ってー」
　躊躇なくベルを蝙蝠に渡そうとする輝夜を、由貴奈がひょいと抱き上げた。声を上げるミーツェも一緒にもふもふ抱き上げる。
「にゃにゃ？！」
「『彼のお方』とか『忌まわしき女神』とかって言ってたよねぇ？　あれってテオとミラのこと？」
　輝夜とミーツェを優しく抱き止めながらも、言葉はのんびりとした響きを帯びながらも、由貴奈の眼差しは厳しい。
「そんな言い草をするきみって、一体何者なの？　どこから来たの？」
　金色蝙蝠は億劫そうに起き上がった。
「ボクは魔界から来た悪魔ですよー。来た、というか、あの方に命じられてあの女神がいるこの島を滅茶苦茶に、……」
　そこまで言って、悪魔は一度口を閉ざした。毛を逆立てるミーツェと静かな瞳の由貴奈を見て息を吐く。
「ボクはやる気ないですけどね。ちなみにあの方はあの方です。キミたちは絶神って呼んでるって聞いたけど、ご存知ないです？　千三百年くらい前にこの島に女神ののこと一緒にこの島に落ちて来てたんですけど」
　手を伸ばす蝙蝠に由貴奈は輝夜から受け取ったベルを渡した。
「……お名前、何て言いますにゃ？」
　先に自分の名を告げたミーツェに問われ、蝙蝠はベルをちりちり鳴らして飛び上がりながら不思議そうに瞬いた。
「ファフ、とでも」
　ちりん、とベルの音だけ残し魔界に帰還する金色悪魔に、ミーツェは手を振った。
(……混沌も破壊も撒き散らさない蝙蝠さんで良かった、ですにゃ？)
　少なくとも、今回は。