職業体験に潜む罠｜リアクション

職業体験に潜む罠

　情報を追っていると、アクセサリーショップに予告状が届いたことがわかった武道は、一人でアクセサリーショップへとやってきた。
　共に行動していた心はといえば、隙きあらば逃げ出してやろうと思っていたらしく、体の良い理由で抜け出すことに成功したようだ。

「それでは水上さん、当時のお話を――っ!?」

　メモ帳を手に、いざ聞き込みという段階で、けたたましくなる無線。
　突然の音にびっくりした志波は、あたりを見回してから音の発生源が自分からだと気づき、照れくさそうに無線機を取った。

『こちら玖珂。近隣にいましたら応答をどうぞ』
「こちら志波。どうぞ」
『予告状と思しき不審物の情報有り。今から美容室に向かいます』
「了解。こちらはアクセサリーショップを調査中。応援には後で駆けつけます」

　無線を切り、改めて桜から情報を聞き出した志波は、情報をまとめた。
　予告状は、生徒には見えない年代の男性に手渡されたこと。
　ルディが予告状に対して吠えていたこと。
　中身は誤って確認してしまったが、上司と確認するように言われたこと。
　怪盗団が狙っているのは王の証なので、ルディの王冠が一番疑わしいこと。

「店内に、他に王冠はないんですか？」
「小さなチャームはあるけど、ルディのほど大きくも立派でもないわ」
「保管庫の中も？」
「演目に使うアクセサリーが、このファイルにまとめられているそうだけど……そもそも王子様ならともかく、王様が出てくる演目があまり無くて」
「確かに、王冠は無さそうだけど……舞台のチームに連絡はとりましたか？」
「王冠は、ルディの物しか無いそうよ。念のために、警察からも確認してもらえますか？」

　情報は集まったが、まだ正解はわからない。今の段階では、怪盗の確保にはルディの王冠を警護する他はなさそうだ。
　これは、他の現場に応援に行ってる場合じゃないかもしれないなと武道が思った時、彼は名案を思いついた。

「そうだ、いっそ王冠を俺が預かっておくとか……！」
「志波君が怪盗じゃないって証明できるのならね」
「それを言ったら、水上さんだってそうだろ？」
「もう……。こういうとき、物語なら警察犬が正体を見破ったりするのに」

　騒ぎが起こり、ルディはペットホテルの遊び場でゆったりしている。このままでは舞台の中止も止む終えないが――ルディには、まだ活躍の場が残っている。
　予告状に対して吠えていたなら、捜査協力をお願いできるかもしれない。

「水上さん、もう一度確認するけど……ルディが吠えていたのは誰かに対してじゃなくて、予告状に対してで間違いないよね？」
「そうよ。封筒は真っ白だったし、他に特徴があるとすれば、嫌がる匂いがしたとしか……」
「それだ！　ルディが反応する何かがあったなら、犯人を追えるかもしれない！　本部に頼んで、ルディを捜査に加えてもらおう！」

　志波が本部へ連絡をとると、ルディは琳子と組んで怪盗団の捜索へ出ることになった。
　志波はもうしばらく、犯人と接触したと思われる桜の証言を聞きながら、ペットホテルとアクセサリーショップを調査することになったが、その様子はどこか生き生きとしていた。