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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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職業体験に潜む罠
ここは、子供たちが主役になれる街、ニャゾニアンモール。
扉のドアノブ、電車の改札口にコンビニの棚の高さまで、全てが小さな子供でも使いやすいサイズに調整されており、働くことも遊ぶことも子供の目線を大切にしてデザインされている。
そんな街の造りと職業体験を売りにした子供向けアミューズメント施設で、初めて対象年齢を上げたイベントが企画された。
夢をもち、その一歩を迷うのは進路を考え始めた学生も同じ。様々な企業と提携して遊びながらも現場を体験できるように整ったニャゾニアンモールで、ぜひアルバイトより気軽に、けれども実際と近い環境で様々な職業体験をしてほしいという経営者側の企画だった。
今日は、企画初日ということで、開催に協力があった学校の関係者のみを招待している。
朝からの入場も落ち着き、人も疎らになった昼近い入り口付近。そこへ、女性ライダーが大型バイクを操り、轟音と共に乗りつけてきた。
「……ここね」
ヘルメットのシールドを上げる仕草は妖艶で、建物を見やる顔からは職業体験に来たという気配はない。
彼女は胸の谷間に押し込んでいたスマホを取り出し、手早くどこかへ連絡をとると、関係者入り口へと歩み進めた。
一般の入場者がまず訪れるのは、職業案内所。希望職種の相談をし、一日の体験種目数を決定したり、目標を設定するところだ。
施設の説明はもちろん、一ヶ所に人が集まりすぎないよう調整する受付業務も兼ねているため、職業体験を利用する者は必ず訪れる。
「では、いってらっしゃいませ」
参加者をにこやかな笑顔で見送ったのは、アケーチ・タッマーキ。
短期バイトであるものの、褒め上手なようで相手の希望を聞きつつ、上手くスケジュールの調整もこなしているようだ。……時折、彼が担当する参加者が身震いをするのは、彼の妄想好きな一面と関係するのだろうか？
明智は受け付けた書類の不備が無いか再度目を通し、また新しく受け付けるためにカウンターを整える。その仕事ぶりを見ていると、参加者の困惑した顔つきを見たスタッフも、彼に口出すことを躊躇ってしまう。
そのうちに、明智を咎めようとする者は誰もいなくなってしまった。
「お待たせいたしました。番号札、２７番の方はこちらにどうぞ」
「……あ、はいっ！」
思いの外たくさんの職種が体験できることを知った鴻上 彰尋は、場内マップをじっくり見ていたため、自分の受付番号を聞き逃してしまうところだった。
夢中になりすぎていたようで気恥ずかしい、けれど志望先を明確に絞りきれていない。受付業務を行う明智は、朝から何度もそのような学生を見てきたため、彼が自分の正面へ着席するまで微笑ましい気持ちで見守っていた。
が、着席したあとの彰尋は今までの学生と少々違っていた。
「今日の職業体験は、舞台役者の経験に役立ちそうな場所を希望しています」
「表現方法を舞台、に限定されるのですか？」
「そうだな……ヒーローショーとか作品のジャンルは問わないけど、形式は映像より舞台がいいかな」
彰尋の迷いのない言葉に、明智は暫し言葉を失った。
今まで、ふわふわと柔らかな光を纏わせる参加者は担当しても、ここまではっきりと磨かれた鏡面のように強く輝く夢を持つ参加者は担当してこなかった。
どこか迷いがあり、だからこそ体験したいという学生が多かったのに、中にはこんなにもしっかりと未来を見据えている学生もいるのか。
ここに自由になる紙と鉛筆があれば、どれほど彼を描いてみたかったことだろう。
「す、素晴らしい！ 大きな枠組みだけでなく、すでに目指す方向性がお決まりとは本当に素晴らしいですね！ それでしたら……」
簡単なパソコン操作で、明智は彰尋の希望に近い職種を絞り込んだ。
物創りをする上で、役立たないことは無い。けれど、着地点が決まっている彰尋になら、一日という短い期間で体験してほしいことは自ずと見えてくる。
「台本があるという形式では、通常の舞台の他、勿論ヒーローショーもございます。殺陣の練習もしていただけますね。もう一つオススメは、インプロでのストリートアクトでしょうか」
舞台が壇上であるか、日常を切り取った空間に作り上げてしまうかという差は大きい。
何度も同じシーンを演じて良い演出として編集される映像系と、客席と空気を共有して演目の細かな所が変わっていく舞台。演出が決まっている舞台と、設定以外はアドリブで動かしていくストリートアクトは、全て演じ方も楽しみ方も変わってくる。
提示された資料に目を通しながら悩む彰尋を、明智は今度こそ微笑ましく見守って――いたかったのだが。
数十分後、明智は地下の一室で妖艶な笑みを湛えることとなる。
扉のドアノブ、電車の改札口にコンビニの棚の高さまで、全てが小さな子供でも使いやすいサイズに調整されており、働くことも遊ぶことも子供の目線を大切にしてデザインされている。
そんな街の造りと職業体験を売りにした子供向けアミューズメント施設で、初めて対象年齢を上げたイベントが企画された。
夢をもち、その一歩を迷うのは進路を考え始めた学生も同じ。様々な企業と提携して遊びながらも現場を体験できるように整ったニャゾニアンモールで、ぜひアルバイトより気軽に、けれども実際と近い環境で様々な職業体験をしてほしいという経営者側の企画だった。
今日は、企画初日ということで、開催に協力があった学校の関係者のみを招待している。
朝からの入場も落ち着き、人も疎らになった昼近い入り口付近。そこへ、女性ライダーが大型バイクを操り、轟音と共に乗りつけてきた。
「……ここね」
ヘルメットのシールドを上げる仕草は妖艶で、建物を見やる顔からは職業体験に来たという気配はない。
彼女は胸の谷間に押し込んでいたスマホを取り出し、手早くどこかへ連絡をとると、関係者入り口へと歩み進めた。
一般の入場者がまず訪れるのは、職業案内所。希望職種の相談をし、一日の体験種目数を決定したり、目標を設定するところだ。
施設の説明はもちろん、一ヶ所に人が集まりすぎないよう調整する受付業務も兼ねているため、職業体験を利用する者は必ず訪れる。
「では、いってらっしゃいませ」
参加者をにこやかな笑顔で見送ったのは、アケーチ・タッマーキ。
短期バイトであるものの、褒め上手なようで相手の希望を聞きつつ、上手くスケジュールの調整もこなしているようだ。……時折、彼が担当する参加者が身震いをするのは、彼の妄想好きな一面と関係するのだろうか？
明智は受け付けた書類の不備が無いか再度目を通し、また新しく受け付けるためにカウンターを整える。その仕事ぶりを見ていると、参加者の困惑した顔つきを見たスタッフも、彼に口出すことを躊躇ってしまう。
そのうちに、明智を咎めようとする者は誰もいなくなってしまった。
「お待たせいたしました。番号札、２７番の方はこちらにどうぞ」
「……あ、はいっ！」
思いの外たくさんの職種が体験できることを知った鴻上 彰尋は、場内マップをじっくり見ていたため、自分の受付番号を聞き逃してしまうところだった。
夢中になりすぎていたようで気恥ずかしい、けれど志望先を明確に絞りきれていない。受付業務を行う明智は、朝から何度もそのような学生を見てきたため、彼が自分の正面へ着席するまで微笑ましい気持ちで見守っていた。
が、着席したあとの彰尋は今までの学生と少々違っていた。
「今日の職業体験は、舞台役者の経験に役立ちそうな場所を希望しています」
「表現方法を舞台、に限定されるのですか？」
「そうだな……ヒーローショーとか作品のジャンルは問わないけど、形式は映像より舞台がいいかな」
彰尋の迷いのない言葉に、明智は暫し言葉を失った。
今まで、ふわふわと柔らかな光を纏わせる参加者は担当しても、ここまではっきりと磨かれた鏡面のように強く輝く夢を持つ参加者は担当してこなかった。
どこか迷いがあり、だからこそ体験したいという学生が多かったのに、中にはこんなにもしっかりと未来を見据えている学生もいるのか。
ここに自由になる紙と鉛筆があれば、どれほど彼を描いてみたかったことだろう。
「す、素晴らしい！ 大きな枠組みだけでなく、すでに目指す方向性がお決まりとは本当に素晴らしいですね！ それでしたら……」
簡単なパソコン操作で、明智は彰尋の希望に近い職種を絞り込んだ。
物創りをする上で、役立たないことは無い。けれど、着地点が決まっている彰尋になら、一日という短い期間で体験してほしいことは自ずと見えてくる。
「台本があるという形式では、通常の舞台の他、勿論ヒーローショーもございます。殺陣の練習もしていただけますね。もう一つオススメは、インプロでのストリートアクトでしょうか」
舞台が壇上であるか、日常を切り取った空間に作り上げてしまうかという差は大きい。
何度も同じシーンを演じて良い演出として編集される映像系と、客席と空気を共有して演目の細かな所が変わっていく舞台。演出が決まっている舞台と、設定以外はアドリブで動かしていくストリートアクトは、全て演じ方も楽しみ方も変わってくる。
提示された資料に目を通しながら悩む彰尋を、明智は今度こそ微笑ましく見守って――いたかったのだが。
数十分後、明智は地下の一室で妖艶な笑みを湛えることとなる。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年11月14日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年11月21日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年11月21日 11時00分
