ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

【イベント当日：検診と記録】

　どんどんと猫たちが連れてこられ、仮設テントでは獣医とスタッフが対応に追われていた。
「これだけたくさんの猫を見るのも滅多にないかもね……」
　三折部は肉球にインクを塗って、手早く台紙にぺたり。
「小山内さん、よろしくね」
　そう三折部に促された小山内は、優しく肉球をふき取ってあげた。
（皆どんどん連れて来るね。どの猫ちゃんもやっぱりかわいいなぁ）
「小山内さん、手が止まってますよ？」
『ごめんなさい』
　猫の可愛さに一瞬、小山内の意識はトリップしそうであった。
（っと見とれてる場合じゃないや）
　猫を抱きかかえ、肉球にインクを塗ってペタリ。
　そしてまた抱きかかえて拭き取って、獣医さんへ手渡す。
　思っていた以上に重労働だ。
　猫たちも暴れるし、手早くしないと後ろもつかえてしまう。
（わっ、暴れないで？　おとなしくしててねー）
　それでも、２０頭目あたりからは慣れてきて、作業もスムーズに。
（肉球フニフニだなぁ）
　肉球ふにふに。
　小山内はその感触に心がときめく。
（柔らかい……！　かわいい……！）
　ふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにんふにふにふに。
「ぶみゃう！！」
　猫いい加減にしろよと怒ったので、すぐに作業に戻る。
（あ、ごめんごめん。はい、これ、お礼の煮干しだよー）
「みゃうん……」
　仕方ねぇな……、とツンデレ気味に幼いだ差し出した煮干しをくわえる猫。
　その仕草に、彼女はとても癒されていた。
「あれ？　その猫ちゃんはもうスタンプしたわよね？　そっちは？」
　三折部が辺りをキョロキョロ。
　数をこなすにつれ、猫たちは周囲にたむろする。
　するとスタンプを押した猫とそうでない猫の区別が付きづらくなっていた。
『みおりべさん　しっぽをみて』
『あかくしるしをつけたよ』
　小山内が筆談と指差しで猫の尻尾に注目するように助言。
　三折部が注視すると、なるほど、確かに赤いインクが尻尾に付着している。
「小山内さん、ファインプレイよ！」
『どういたしまして』
「そうじゃな、スタンプと検診が終わったコたちは、こっちでおやつを食べようか？」
　スタッフとして働いている猫屋敷、自身のろっこんで猫たちに声を掛けると、すぐに尻尾が赤く染まった猫たちがぞろぞろと彼の後をついて離れていった。
「猫屋敷さん、すごいですね。本当に猫と話しているみたい」
　非もれいびには『ただの猫好きの変わったお爺ちゃん』にしか見えないであろう。
（あれもろっこんなのかなぁ？）
　小山内は何気なく察しながら、記録更新のために作業に勤しむ。
　三折部は作業はボランティアに一旦任せて休憩しようとしたその矢先、獣医から声がかかる。
「えっ？　猫が脱走した？　そっちは暴れる猫を抑えてほしい？　えっ、こんなにハードだなんて聞いてないわよ……！？」
　ガンバレ、地方公務員。
　休日出勤をこなした先には、冷たい食べ物が待っているぞ！