ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

　御剣、あれだけ意気込んでいた割には作戦はシンプル。
「俺は煮干しだけでいく……」
　確固たる決意を胸に、散歩気分で寝子島駅から参道商店街を通って寝子島神社へ、そこから九夜山登って寝子温泉へ向かうルートを歩いてゆく。
「そういえば、寝子島漁港で煮干しを探していた時に、俺が食べる用に買った奴……」
　ごそごそと袋から取り出したのは、アジの一夜干し。
「これ、焼いたら美味そうだよな。って、なんか猫が寄ってきたな……？」
　アジの一夜干しの匂いを察知したのだろうか、猫たちが爛々と目を輝かせて御剣を物陰から窺っているではないか。
「む、ちょっとこれはやれない。煮干しで手を打たないか？」
　近くに寄ってきた猫に差し出した煮干しは、すぐさま猫の口の中に納まってしまう。
　御剣は煮干しで餌付けをしているうちに、後ろを追われるようになっていた。
「なんだ？　そんなに煮干しが欲しいのか？　まぁ、都合がいいから一旦会場へ戻ろう。俺のアジの一夜干しはやれないが、猫屋敷の爺さんが色々と用意していたな。想像していたら俺も腹が減ってきた……」
　腹ペコの猫たちは、腹ペコの御剣と共に会場へ向かう。
　そこで猫たちは猫缶や干物に舌鼓を打ち、御剣もキンキンに冷えた食べ物で英気を養う。
「アイスうまーい！　スイカやそうめんも美味い、やっぱり暑い時にはこれだよな！！」

　さて、吸引力の変わらないただ唯一の動物懐かれ体質である八神。
　彼は寝子島神社にいた。
「いつもありがとうございます。猫たちも喜んでますよ」
　彼は地域の老人会の代表と雑談をしていた。
　なんと、八神はボランティア活動の一環として、猫のために小屋を設置、開放し、定期的に清掃を行ってきていたのだ。
　もちろん、老人会の方々や、神社の神主などの協力者の甲斐あっての事であるが、八神もその活動の一員として日々励んできている。
「その活動の結果、今回のようなイベントで役立つとは、世の中、何があるか分かりません」
　八神は笑顔で老人会の会長と話を終えると、寮の使用人と共に猫たちをケージに入れて運搬を始める。
　ここだけで、30匹前後の猫たちを保護することが出来た。
　まさに今までの活動が実を結んだ結果と言えよう。
「随時、会場へピストン輸送をしてくれ。俺もあとから会場へ向かうよ」
「かしこまりました、八神様」
　冷房完備の車両に乗せられた猫たちは、きっと快適に会場入りが出来るだろう。
「ほら、仲間たちのところへ一緒に行こう」
　八神は臆病な子猫たちに、優しく玩具で警戒心を解いてゆく。
　及び腰で近付く子猫を優しく撫でて安心させてあげれば、他の子猫たちも八神に次第に心を開いてくれたようだ。
「こら、そこは登るところじゃないぞ？」
　気が付けば、いつものように猫まみれになる八神。
　八神 in 猫団子。
　彼の動物好かれ体質の面目躍如であった。