ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

「お腹空いた……」
　落合はアイスを食べながら炎天下の真っ青な空を眺めていた。
　入道雲が天高く伸びあがり、自分の食べているアイスクリームのように見えてきた。
　サキリもアイスに舌鼓を打つ。
「暑かったのでアイスが一際美味しいよ。あ、お疲れさまです」
　同じバニラアイスを食べていた落合と目が合い、サキリは何気なく声を開けてみた。
「お疲れさま。君、寝子高生か。ののこと同じ学年ってところかな。ねぇ、あれ見て。なんだか、あの雲がアイスに思えてきて、お腹が空いたわ……」
「ああ、確かに。あんなに大きいアイスがあったら食べてみたいですね」
「でもお腹壊しそうよね。それに体が冷えてむしろ風邪引きそう」
　思わず苦笑いをしてしまう２人。
「でも、冷え過ぎるくらいでちょうどいいかもしれません。こうも暑いと猫よりも人間が熱中症で参ってしまいそうで」
「そうよね。この気温は殺人的よね……。私はしばらくここで休むわ」
「僕はエネルギーを補給したら、もうひと頑張り行ってきます。あと少しでギネス記録更新らしいですよ」
「おお、頑張れ少年」
　落合はサキリを分かれて、日陰で今度はそうめんをすすり出した。
「もうすっかり夏だわー」
　日本の夏を堪能しまくっていた。

　災害レベルの炎暑は、猫だけではなく人間たちの気力を奪う。
　真境名は会場を２往復しただけでダウン。
　タイムアップ間近を迎えていた。
「ほんっと暑い……。もうここで猫と戯れながらスイカ食べてよう……」
　猫たちも暑さで参っているのか、仮設テントのイートインスペースの影に集まってくる。
　必然と真境名の周りは猫だらけ。
「ああ、ここは天国ね……！」
　猫パラダイスに囲まれ、真境名は本来の目的を忘れていた。
　そして、本来の目的を忘れた男がもう１人いた。

「加速、完了！　これで15匹目！」
　割と頑張っていた御剣だが、ふと、寝子島神社付近から寝子温泉へ続くロープウェイを眺めた瞬間、彼の頭の中に天啓がおりてきた。
　ＹＯＵ！　このまま温泉で汗、流しちゃなよ！
　そうと決まったら御剣の行動は早かった。
　彼は寝子島最速の男。即決即断だった。
「よし、もう会場へ引き返す時間はないな！　猫を連れて温泉へいこう！」
　足湯くらいだったら一緒に入れるだろう、と思ってそのままロープウェイへ乗車。
「あー、ギネスの証書ってあとからでも発行してもらえるのかな……？」
　まあ、いっか、と御剣は三毛猫を抱えながら一路、寝子温泉へ向かうのだった。
　なお、小山内や桜庭などの親しい者に連絡を入れてなかったため、行方不明になった御剣のスマートフォンへの着信が凄いことになったのはまた別の話。

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